路傍の石と高嶺の花々 裏
こちらは双子視点の物語です
表とセットでお楽しみ下さい
産まれた時から私達は常に一緒で。
瓜二つな僕達は時に親すら間違える程で。
―それがどれだけ残酷な事か。
物心つく頃、自我の芽生え。
ようやく私達は自ら違いを作り出す事を知った。
初めに変えたのは僕だった。伸びてきた髪を束ねるだけの簡単なアプローチ。
それだけでも判別にはなったらしい。
―時々入れ替わっていたのには誰も気付かなかったのに。
小学校、中学校、高校の一学期。
どこまで行っても私達は双子でしかなかった。
双子の片割れ、結んでいない方。
入れ替わっても誰も気付かない。ただの一人も。
どこまで行っても僕達は双子でしかなかった。
双子の片割れ、結んでる方。
それがどれほど残酷な事かも知らずに。皆ホントそっくりと笑う。
―私/僕は独立した一個人。御剣風理だというのに。
そんな私達の物語が動き出す。
父さんの転勤と共に動き出す。
そんな僕達の物語が動き出す。
新たなる地で動き出す。
―人はこれを運命と呼ぶのだろう。
転校先でも私達は双子だった。双子でしかなかった。
身体目当ての猿、物珍しさに群がる豚。
クラスには有象無象しかいない。
転校先でも僕達は双子だった。双子でしかなかった。
自分だけ盛り上がる馬鹿、他人をネタとしか見ない阿呆。
クラスには有象無象しかいない。
―ただ一人を除いては。
彼は値踏みするような視線で私達を見る。
こちらには一歩も踏み込まずに。
彼はただ一人で僕達を見る。
誰と歩みを揃える事もなく。
―私達は初めて他人に興味を惹かれたんだ。
翌週の昼、私達は彼に仕掛けた。一縷の望みをかけて。
彼はとても面倒だという態度を隠しもせずに私達を指差す。
見るからに当てずっぽう、どう見ても適当。
それでも、他人が一度で正確に当ててきたのは僕達にとってとても大きい意味を持つ。
僕達の中で彼の重要度が上がった。
その日から私達はとにかく彼に問い続けた。
まぐれ当たりではないことを証明して欲しくて。
僕達は時間も場所も問わずに問い続けた。
そして彼はそれに応え続けた。
見るまでもないと言わんばかりに。
―だから私達は、彼の側にいる時だけは唯一無二の御剣風理としていられたんだ。
一度狙いを定めたら絶対に逃さないのが私の流儀。
なので休日に遊ぼうととにかくアプローチを仕掛けてみた。
あの手この手で避けようとしていたけれども。
一度狙いを定めたら絶対に手にするのが僕の流儀。
双子のコンビネーションで逃げ道を一つずつ潰していく。
周りの目?知ったことじゃない。
―万に一つの可能性を潰えさせるわけにはいかないのだから。
無事掴んだ休日の約束。私達は完全にお揃いのコーデで出掛ける。
駅前で時間を決めて待ち合わせ。
待つ時間も楽しい。声を掛けてくる脳味噌下半身さえいなければ。
無事掴んだ休日の約束。僕達は欠片程の違いもないコーデで出掛ける。
無粋な輩は物理で制圧。軽く関節を外してから周りに一言命じる。
人垣が割れた向こうに彼がいた。ああ、ここからは楽しい時間だ。
この状態で問いかけても彼は間違えなかった。つまり彼がいれば私は紛れもなく御剣風理なのだ。
自然と足取りは軽くなる。彼がずっと側にいてくれる、そんな未来を妄想するくらいには。
ついでに電話番号も獲得、これでまた一歩前進。
この状態で問いかけても彼は間違えなかった。つまり彼がいれば僕は間違いなく御剣炎理なのだ。
自然と顔は綻ぶ。彼とずっと先まで共に歩く、そう夢想するくらいには。
ついでにトークアプリをインストールさせてIDゲット。これでいつでも繋がる。
―この時に、双子でありながらたった一つを巡り争うライバルになったのだろう。
季節が巡ろうとも私達のスタンスは変わらない。彼をこの手に入れるまでは。
炎理が無精してリボンを結ばなくなったので呼び間違いが多発。
その度に彼に頼る。ああ間違い知らずの素敵な人だ。
季節が巡ろうとも僕達のスタンスは変わらない。彼を手中に納めるまでは。
彼にさえ気付いて貰えればいいと結ぶのを止めた。相変わらずアピールしてくる馬鹿は間違い続きだが。
その点彼は素晴らしい。間違い知らずの素敵な人だ。
―だからこそ双子であることを恨めしく思い始めたのだけれど。
そう思っていたら、彼から一つの提案があった。
「いちいち見分けんのも面倒だし結ぶのも嫌なら伊達メガネでも掛けたらどうだ?掛けるだけのお手軽識別アイテム、伊達ならそこまで値も張らねぇだろ」
私達は顔を見合わせて彼に問う。
返って来た答えはオブラートに包まれたものだけれども好みが含まれているのは感覚で分かる。
この機を逃す手は無いと炎理を見た。
僕達は顔を見合わせて彼に問う。
返って来た答えは美辞麗句で整えられたものだけれども好みが含まれているのは本能で分かる。
その日の放課後にお揃いの色違いを買った。
―翌日の彼は物凄く何かを言いたげな顔をしていたけれども、いつもより声がうわずっていた。
学生の本分は勉学である。なので期末に備えて勉強をするのは正当な行動だ。
たとえその場所が異性の部屋であっても。
故に彼の部屋に押し掛け勉強会をしても問題無いのだ。
少なくとも私達はそう思っている。
学生の本分は勉学である。なので期末に備えて勉強をするのは正当な行動だ。
たとえその場所が想い人の部屋であっても。
故に彼の部屋に押し掛け勉強会をしても問題無いのだ。
だが僕達以外はそうではないらしい。
―一人暮らしの異性の部屋に上がるとは何事だと、クラス単位で否定されてしまった。これが彼の策略だと気付いたのは少し後の事だ。
試験が終われば学生は自由である。
しかも控えるは各種イベント。でも二兎を追う者は一兎をも得ずと言う。
取り敢えず直近のクリスマスに的を絞って彼を誘う。私達はそう約束した。
試験が終われば学生は自由である。
しかも控えるは各種イベント。然りとて虻蜂取らずとも言う。
取り敢えず直近のクリスマスに的を絞って彼を誘う。僕達はそう約束した。
―だからこそ、絶好の好機に迅速に動けたのだろう。
私達がパーティーに誘う。
僕達は左右に別れて追い詰める。
そして彼は、致命的なミスを犯した。
「随分と熱心じゃないの。俺の事好き過ぎか?」
好機を逃すほど私に余裕は無い。
「今更気付いたの?そう、私達は君が好き」
後は左右零距離でトドメ。
「双子の包囲、逃げられると思わないでね?」
隙を見逃すほど僕に余裕は無い。
「今更気付いたの?でも誰にも渡さないし逃がさない」
後は左右零距離でトドメ。
「双子の包囲、逃げられると思わないでね?」
彼は青白い顔をして震えながら帰った。こちらの呼び掛けにも答えないし返事も虚ろだ。流石に追い詰め過ぎた?
そのまま逃げられたのでどうやら私達はやり過ぎたらしい。
彼は青白い顔をして鹿より速く帰った。こちらの呼び掛けにも答えないし返事も虚ろだ。流石に追い詰め過ぎたか?
きっちり逃げきられたのでどうやら僕達はやり過ぎたらしい。
―この無念晴らさでおくべきか。
あの後彼とまともな会話が成立しなかった。いつも上の空で返事すらしない。
お陰で電話もマトモに通じない。着信拒否されてないのがまだ温情?手を緩めるつもりは欠片も無いけれど。
あの後彼とまともな会話が成立しなかった。いつも上の空で返事すらしない。
お陰で未読トークが溜まる一方。ブロックされてないのがまだ温情?攻勢を諦めるつもりは欠片も無いけれど。
―だから私達は少々荒業に頼る事にした。
翌年初め、つまり元旦。
突き止めた彼の住所から行ける範囲の神社仏閣を検討協議。
恐らくの感で二ヵ所まで絞る。私は多分寺の方だと主張。意見が割れたのでじゃんけんで決めた。
翌年初め、つまり元旦。
突き止めた彼の住所から行ける範囲の神社仏閣を検討協議。
大体の範囲で二ヵ所まで絞る。僕は多分神社の方だと主張。意見が割れたのでじゃんけんで決めた。
―どちらにしろ、逢えるまでは張るつもりだったけれども。
とは言え早々に出会えたのでそのまま囲んで初詣。今年は良い年になりそう。
私はこの闘争の勝利を願った。
とは言え早々に出会えたのでそのまま囲んで初詣。彼の顔色が中々愉快。
僕は彼の唯一無二になれるのを願った。
―彼に何故居ると問われたら乙女の直感と全力はぐらかしした事には目を瞑って下さい神様仏様。
時は流れて二月。
世間はバレンタイン一色に染まり、コンビニも百貨店もどこもかしこもチョコまみれになった。
当然私は手作りのチョコを彼に渡す。
が、本命はこの手紙。口で言っても伝わらないのなら文字を直接叩き付けてやるという覚悟。
最もチョコを手抜きするつもりは無いけれど。
時は流れて二月。
世間はバレンタイン一色に染まり、CMも広告もどこもかしこもチョコまみれ。
当然僕は手作りのチョコを彼に渡す。
でも本命はこの手紙。口で言っても伝わらないのなら文字を直接叩き付けてやるという覚悟。
最もチョコを手抜きするつもりは無いけれど。
当日、私達は彼に会うなりチョコを渡した。そのまま彼からは少し距離を取る。
あくまで本命は手紙、その為なら少し程度の我慢は出来る。辛いけど。
どうか、私達の想いが伝わりますように。
当日、僕達は彼に会うなりチョコを渡した。そのまま彼からは少し距離を取る。
あくまで本命は手紙、その為なら少し程度の我慢は出来る。苦しいけど。
どうか、僕達の想いが伝わりますように。
―そして女神は、諦めなかった者に微笑む。
三月。期末も終わった頃に彼から呼ばれる。
放課後に屋上で待っていてほしいと。
胸が歓喜と恐怖、そして緊張で跳ねる。
今日、勝者と敗者が分かれる。
私は、炎理と顔を合わせて頷いた。
三月。期末も終わった頃に彼から呼ばれる。
そこで、答えを出すと。
心が歓喜と恐怖、そして緊張で跳ねる。
今日、勝者と敗者が分かれる。
僕は、風理と顔を合わせて頷いた。
―放課後の夕陽に照らされた彼はとても格好良くて、その顔は覚悟に決まっていて。
―同時に、罪悪感も噛み締めて。
―答えを決めた一人の男は、その名前を。たった一人の名を口にしたんだ。
結末は皆様のご想像にお任せします。
お粗末様でした。




