2,最悪な対面
初連載です。
なんとなく自分が好きな設定をお話にしてみました。
あまり上手ではない自己満の作品ですが、暖かく見守っていただければ幸いです。
「お前、今日も悪夢にうなされていたのか?」
この国の中央に聳え立つ立派な城の大きい部屋の中央に小さなテーブル。このテーブルにはハルトと簡素な和装の服を着た青い髪を綺麗にまとめた女性、女王が向かい合い、談笑をしながら食事を行っている。女王はハルトを心配し、眉間に皺をよせながら手が届く距離にいるハルトに食事の手を止めて男勝りな口調で話しかける。
「・・・別に・・・もう慣れたよ。いつものことだし、天李が心配なんてする必要ない」
ハルトは自分を気遣い、心配するように見下ろしてくる天李の気づかいに居心地悪そうに目を逸らす。ハルトは悪夢にうなされている間誰にもその姿を見られてはいない。ハルトが眠っている間は誰も、女王の天李ですらハルトの部屋に入ることはない。それでもハルトがうめき声をあげていたことを知っていたのは部屋の前にいる護衛の報告を受けたからだろう。一年前のあの日、ハルトが天李に拾われて以来、天李はハルトを気遣い、安心して過ごすことのできる環境を提供してくれた。ハルトは一年以上前の記憶がない。それでもハルトはこの環境下で安心して過ごすことができている。それは間違いなく天李のおかげだ。記憶を失った身元の保証もできないハルトを詮索することもなくそっと匿ってくれた天李。ハルトはそんな天李の優しさに感謝している。だからこそ、毎晩のようにみるあの現実であろう悪夢について天李にだけは話すことはできない。優しい天李はハルトを守ろうと無理をしてしまうだろうから。自分の複雑で絡み合う因縁や罪に天李は巻き込みたくなかった。
「お前はいつも同じことを。心配くらいさせてくれ。お前くらいなんだ。こうして私と食卓を囲んでくれるのは。」
ハルトの否定する言葉に天李は困ったようにため息を吐くと優しく笑う。天李は慈愛に満ちた目でハルトを見るとグラスで水を一杯飲み、そっとグラスをテーブルに戻した。ハルトはそんな天李の言葉や視線が嬉しくも少しむず痒く感じ顔を赤らめ視線を逸らす。
「そういえば、聞いたぞ天李。今日は他国から使者が来るんだろ?珍しいな、天李が他国の使者を受け入れるのは」
ハルトは天李の優しさと愛情がむず痒く感じ、話をそらすためにも先ほど城の衛兵たちが話していた話を持ち出した。この国は鎖国国家であり、他国からの干渉も支配を受け付けない独立した小さな国家だ。それ故に他国との交流を好まない天李が他国の使者の相手にして受け入れるということは本当に珍しいことであった。
「まあ、私もこれでも一国の王だからな。嫌でも多少は外交というものを受け入れなければなこんな弱小国ではやっていけまい。ましてや相手は世界でもトップ、五本の指に入る大国だ。」
ハルトの言葉に天李は疲れたというように大きくため息を吐き仕方ないとばかりに豪快に笑う。ハルトは豪快に笑う天李の顔に一瞬の陰りができたことに気付きながらも口に出すことはなく、静かに料理を口に運んだ。
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「お目通り叶いましたこと、感謝致します。天陽国、女王陛下。」
「よく来た。ロアドクレイの使者よ。遥々こんな遠い辺境の地までご苦労であったな。妾はそなたらに一生会いたくなかったぞ。さて、要件を簡潔に述べろ、こんな小国まで大国様が何用だ?」
大きな部屋に荘厳な飾りつけがされている豪勢な部屋。そんな場所にロアドクレイの使者、茶色の長い髪を靡かせるアリスと短い赤髪の髪を靡かせるノブは通された。天李が豪華な椅子に腰かけ尊大な態度で嫌味を隠すことなく見下ろす中、使者の二人は天李に対し、膝をつけ傅き、敬意を示す姿勢を取る。片方だけが払い、敬意を無下にする行為。この状況は外交問題に発展するほどの問題行動であった。一小国が使者とはいえども大国に対して敬意を払わず、見下しているとみられてもおかしくない行為。外交内政で他国からも一目置かれるほどの敏腕な手腕を誇り、他国の要人からも高い評価を受ける天李が見せる態度として明らかに異質なものであった。この国は小国でありながらも王家を中心に武力者を拒絶し能力者だけで国を為している能力者主義国。大国の使者であるアリスとノブも、能力者主義国であるこの国が自分たちの国を好意的に受け取っていないことは理解していた。だが、ここまで露わな嫌悪感を向けられることは想定していなかった。ノブとアリスは想定外の憎悪に先の交渉を思いやられたが、天李に対する姿勢を崩すことはなく跪き、礼を欠かさない。
「そう邪険に扱わないでいただきたい、天李女王。我々は貴国と友好的な関係を築くために参った所存です。我々はあなた方王家の方々に伝わる特異な力に一目置いているつもりです。あなたがその力でこの天陽国を守り抜いたその手腕は世界でも多くの者が一目置いています。我々の望みは争いや差別のない世界をつくること。そのためにもあなた方のお力を是非」
ノブは跪きながら天李を見上げ敬意を表し、懇願する。ノブはこの世界でも5本の指に入るトップの組織の代表としてこの国にきている。ノブの行動はノブの在籍する国の意志も同じことである。この天李に向けた敬意は大国の誇りと尊厳を失われない程度の小国への最大級の敬意の払い方であった。だがそれでも天李の表情はノブとアリスのまっすぐな瞳を見ても変わることはなかった。
「そなたらの言葉は我らに対する要請ではない。大国から小国に対する圧力は対等な協力関係などにはなりえない。使者よ、それは脅しではないのか?建前などいらん。いつだって大国はその力で小国を力でねじ伏せ踏みつけてきた。妾はもうそなたら大国のことを信用することはない。特にそこにいる女のような武力者と手を組む大国などとはな。大した挑発行為だ。それとも大国故の自信か?この能力者主義国に武力者を連れて参るとは。妾はそなたらが嫌いだ。即刻この国から立ち去ってくれないか。」
天李は使者の二人の言葉を全く受け入れることも聞き耳を持つこともなかった。呆れるようにため息を吐くと跪き敬意を払うアリスとノブを軽蔑した目で睨みつけノブの言葉を断ち切った。
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天李が外交を行っている間、ハルトは外交の間に行くことはない。ハルトは天李に拾われたくさんの知識を与えられてきた。ハルトは天李が何を思い、政治、経済、帝王学、マナーなどのたくさんの高等知識を天李は記憶を失ったハルトに与え、実践的な学びを受けさせたかは分からかった。だが、天李は唯一ハルトに他国との交流だけは実践的な学びを与えることがなかった。そのためハルトは天李が外交を行っている間、静かに自分の部屋で時間を潰していた。だが、ハルトは今朝の天李の曇った表情が忘れられず落ち着かない心を満たすため、珍しく城の中を徘徊していた。
「まさかこの国にロアドクレイの人間が来るなんてね」
ハルトが城の中を徘徊していると衛兵やメイドたちが今回の天李の外交の相手である国の話をしていた。
「菊。今日の天李の外交の相手のロアドクレイってどんなやつらなんだ?」
ハルトはメイドたちが話していた話が耳に入りその疑問を解消するべくメイドたちに声をかける。ハルトは天李にたくさんの知識と実践的な学びを教えてもらった。だが、ハルトは他国についての知識は全く教えてもらうことがなかった。恐らく天李はハルトに他国に対しての情報を与えることを避けていたのだろう。ハルトは天李が望まない知識を得ることについて罪悪感を感じながらも朝の天李の表情が忘れることができず、菊に尋ねる。
「ハルト様!?そうですね、どう説明しましょうか。国家というものは能力者か武力者、どちらかの派閥をもっているのです。陛下が治めているこの天陽国が、能力者だけが共存している能力者主義国であるように。能力者と武力者、二つの種族は分かり合うことができません。だからこそ、国はそれぞれ能力者国家と武力者国家に分かれて形成されます。ですが、今回この国に来た国は変わった物好きのようでして、能力者と武力者、二つの種族の垣根を超えた共存主義派閥の国家なんです。・・・てハルトさま!?」
菊は突如現れたハルトに一瞬驚いた表情をしながらもハルトにロアドクレイについての説明を笑い話をするかのように楽しそうに語る。だが、長々とした説明が終わり、ハルトの反応を見ようとした菊はハルトがいなくなってしまったことに気付いた。
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ハルトは菊の説明を理解した瞬間、自然と走りだしてしまっていた。菊の話を認めたくなかった。菊の話していたロアドクレイという組織はハルトが毎晩みるあの悪夢に辿り着くものである。そんな悪夢への道に大切な存在である天李を巻き込ませることなんてできるわけがない。
《君が能力者で、僕が武力者だから。・・・ただ、それだけだ・・・》
毎晩夢に出てくるあの光景。あの悪夢の欠片が記憶のないハルトに能力者と武力者の共存はありえないと、ロアドクレイという組織の存在を否定していた。武力者を信じることはできない。武力者は自分の大切なものを奪う存在であると。ハルトの奥にある記憶が告げていた。許せなかった。過去も覚えていない何もなかった自分にこんなにも優しくしてくれたこの国に、天李に危害が及ぶことだけは絶対に許すことなどできなかった。心に空いた大きな空洞。一年たっても満たされることのできない虚無感。もう二度と、大切なものを失いたくない。壊されたくない。記憶を失いながらも無意識に湧き出てくるその気持ちはハルトが考えるよりも先に身体を動かした。
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「天李!無事か!?」
「ハルト!なぜこの部屋に!」
ハルトは勢いよく扉を開け、大きな声で叫びながら天李の元に急いで駆け付ける。天李はハルトが教えてもいない外交の間に驚き、目を大きく見開いた。ハルトは目を大きく見開く天李に駆け寄ると怪我もなく無事であることに安心したように小さく息を吐き、怒りのままに使者の前まで一直線に突き進み、女の胸倉を掴みかかる。
「・・・なんでお前みたいなやつがこの国にきた!?この国と天李に手を出してみろ!?俺が容赦しない。地獄の果てまで追いかけてお前を苦しめて殺してやる。とっとと消え失せろ!!」
ハルトはアリスのことを親の仇でも見るような強烈な殺意と憎悪で睨みつけ胸倉を掴みかかる。アリスは一瞬ハルトに向けられた突然の憎悪と殺意の強烈さにに目を大きく見開いたがすぐに冷静さを取り戻した。アリスは冷静にハルトの手を掴もうと胸倉を掴むハルトの手に触れ掴もうとする。ハルトはアリスに触れた手を反射的によけ、双方睨みつけ合いになり膠着状態になる。
「よせ、アリス。天李女王。我々はひとまずここで退散するとしましょう。我々の想像以上にあなた方の我々への憎しみは強烈なようだ。もう一度、互いに冷静になって場を設けて頂けると光栄です。」
ノブは大きくため息を吐くと膠着状態になったアリスに対して止めるように声をかける。アリスはノブの言葉に戦意を解き、跪く。ノブとアリスはもう一度跪き、天李に対して礼を尽くすと立ち上がり軽く礼をして天李とハルトに無防備に背中を見せる。
「こちらも、我が子が失礼した。我が国の土産は弾ませよう。祖国に持ち帰り皆にわけてやるといい。日持ちしない食材であるため即刻祖国に帰ることをお勧めする。ここは能力者の国。武力者を連れての観光は安全は保障できんぞ」
ノブの言葉に天李は話すことはないと椅子を立ち上がり見送ることもなく反対の扉からハルトと一緒に外交の間を後にした。ハルトはアリスが視界から見えなくなるまでであったことのないアリスを強烈な殺気で睨み続けた。
偉い人の礼とかルールとかよくわかりません。この世界はこんなもんと思っていただければ幸いです。なんとなく書いていきます。




