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落ちこぼれヒーローの英雄譚  作者: 吉見里香
一章,動き出す歯車
13/19

12,少女とアリス

あの光景を思い出す。愛おしい3人で交わした誓いを。彼らを救うと、守ると覚悟したあの時の誓い。

「ハルトさん、あと30秒で彼らは到着します。私はもう一人の女性の方を主に対処する予定ですが、できるだけハルトさんをサポートするつもりです。彼らはとても強い。加えてこちらは2分間という制限時間付き。ですが、勝ちますよ?絶対に。」

アリスはハルトを一目見ると優しく微笑み、拳を握った手をハルトに向ける。ハルトはアリスの拳を手前に出す仕草に驚きはしたものの、躊躇うことなくハルトに拳を突き合せた。

〈俺はな~、能力者と武力者が共存できる時代が来るって、そう、信じてるんだ。だからお前にも、もちろんあいつにもそんな時代を信じてほしい。だから、俺がもしもその夢を叶えることができなかったら、ハル。お前に、託してもいいか?〉

アリスと出会い、ハルトは何度閉ざされた過去の記憶のパーツを思い出したことだろう。ハルトはようやく何度も頭を過りそうになるたびにかき消し、否定していた記憶と向き合うことができた。記憶の奥でこんな言葉を自分にかけてくれた存在がいた。自分の持つ夢を、信じて自分に託してくれた人がいた。武力者は確かにハルトの大切なものを全て奪ったのかもしれない。でも、隣にいるアリスはそんな奴らと一緒ではなない。きっと、自分に夢を託してくれた人もそんな信じれる存在に出会えたからこそ、二つの種族が手を取り合えるそんな未来を望んだのだ。自分は過去にたくさんのものを失ったのだろう。だが、託されたもの、譲れない誓いがハルトにはまだやらなければいけないことがたくさん残っている。すべてやりきらなければならないのだ。それが、ハルトの目指した英雄だ。

「ハルトさん、来ます。」

「あぁ。分かってる」

ハルトが物思いの更けていた直後、アリスのはっきりとした声が脳裏に響いた。アリスもハルトも、戦闘態勢に入り集中力を上げたた直後であった。大きな力を持った二つの人影がハルトとアリスの目の前に到着した。

『譲渡』

ハルトはジンと少女が到着した瞬間、ハルトは片手の手のひらを直立に手を立てて呪文を唱える。ハルトは天守閣の術式を完全にノブに譲渡した。ノブに術式を譲渡した瞬間、強いノブが放ったマナが一気に移り変わり、この国全体に流れていくのをハルトは肌で感じた。

「やってくれたじないか~?おい、ハルト。どこにいるんだ~?あの生意気な男はよお?」

男は苛立ちながら首を鳴らし、ハイエナの精霊に乗り、遠方から苛立ちを隠すことなくやってきた。ハルトは確かに精霊を消滅させた。だが、精霊は不滅だ。精霊の契約者たる主が死なない限り、精霊は何度でも蘇る。プライドの高いジンにとって不意打ちとはいえ、遠方に吹き飛ばされたことはジンにとって許容できるものではなかった。

「さあな。どうでもいいだろ?よそ見すんなよ、俺とお前の勝負はついてない。やろうぜ、勝負。俺もお前にやられっぱなしでプライドめっちゃ傷ついてるんだ!第二ラウンドだ!」

ハルトだって先ほどからこのジンに打ちのめされ、侮辱され、プライドは十分傷ついている。負けてばかりいられない。それはハルトも同様だ。苛立ちを隠すこともないジンに対して、ハルトは一歩前に出て、自分が相手である人差し指を曲げ、挑発的に笑った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「邪魔、しないでもらえます?」

ハルトがジンと勝負をしている間、アリスはもう一人の少女と対面していた。少女は自分と向き合い戦闘態勢を崩さないアリスに向かって冷たい声と目でアリスを睨みつける。少女の顔はフードを被り、仮面をかぶっているため顔をみることはできない。だが吹き荒れる風によってフードが少女の頭から離れた瞬間、美しい茶色がかった灰色の髪を靡かせる少女の左首から仮面の中に向かって爛れた火傷の痕と傷をのぞかせた。少女は風で後ろに落ちたフードを深くかぶると苛立つ様子を隠すことなくアリスに殺気を向ける。ハルトはその一瞬に向けられた殺気を感じ取ると全身が震えるほどの鳥肌がたった。アリスがこれまでに一度も感じたことがないほどの凄まじい殺気、ハルトや天李の向けた殺気とは比べ物にならないほどの悍ましく強烈な殺気であった。

「すいませんがそうはいきません。ハルトさんは何かを変えるために戦っているんです。ハルトさんの邪魔をされると困ります」

アリスは少女の殺気に対し、恐怖を感じながらもその恐怖を少女に悟らせるこのなく、冷静に言葉を返す。少女は戦闘の体制も何もとっていない。隙だらけの体制のはずだ。だが、この少女からは隙が一切感じられなかった。

「随分と彼にご執心なんですね、あなたも、私たちに攻撃を放ったあの人も。」

少女の隙を探し続けるアリスに少女は殺気を放ったまま不適に笑いアリスを見下ろす。

「そうですね、ハルトさんの一生懸命に頑張る姿と優しさに心惹かれまして。ハルトさんの手助けをしたい。そう思ったんです。」

アリスは少女に向かって夢見る乙女のように目を瞑り、ハルトのことを夢見心地のような表情で語りながら、少女を見る。そして、アリスの表情を見て苛立つ表情を見せた少女の隙を見て、左足で頭部を狙い、蹴り上げた。だが、アリスの不意打ちの攻撃は少女に通用しなかった。アリスの左足は少女の右手により、難なく掴み取られてしまった。予想していた通りであった。この少女の強さは本物であった。アリスと少女の睨み合いは続き、アリスは少女の手から強引に足を離すと少女と向き合い、互いに睨みをきかせた。

「あなたの目的はなんなんですか?ジンさんと違ってあなたの心のうちはよくよめない。確かにあなたも、ハルトさんを狙っているようですが、彼と違ってあなたはハルトさんに対して強引さも敵意もない。なのにあなたは、先ほどのノブさんの攻撃でもジンさんを助けた彼の仲間です。ですが、あなたは仲間のはずのジンさんに時々尋常でないほどの殺気を見せている。あなたの行動の真意を、いえ、あなた方の行動真意を教えていただけませんか?」

この少女はジンと違って謎だらけの存在であった。この少女は間違いなく、ジンよりも強いこの場にいる誰よりも異質な存在だ。だが、それでもこの少女はジンよりも強いにも関わらず、ジンに従い、ジンを助ける行動をとった。それにも関わらず、ジンに時々見せる強力な殺気。この少女の真意がどうしてもアリスには理解できなかった。そしてその圧倒的な強さを誇る彼女が狙うのはハルトである。彼女たちの会話から出てくる、あの方という人物。ハルトからの話で推測すると、おそらく彼女の行動理念はあの方と呼ぶ人物に従った意向に近いものだろう。だからこそ、アリスはハルトを守るためにも情報を彼女から集める必要があった。

「・・・気持ち悪い。本当に気持ち悪い種族ね。あなた達捨人は。勝てない相手だからと卑怯な手を使い攻撃をする。やっぱり、捨人と私たちでは相容れない存在。」

アリスの態度に少女は口調を崩し、殺気を強め淡々とアリスを睨みつけ、その存在を否定する。捨人。アリスは聞いたことのない言葉であった。捨てられた人という意味であり、能力者である彼女が指すそれは武力者のことであろう。

「すみません。無粋な真似をしたようです。」

アリスは冷たい瞳でアリスを睨みつける少女に冷静に謝罪をする。この少女の武力者に対する憎しみハルトや天李とは比較にならないほど、重く、強いものであると彼女の言葉と殺気で痛感する。この少女はアリスの攻撃を防ぐと確信していた。不意打ちへ対処できる力量が少女にあるとアリスは確信していたつもりであったが、それは彼女の神経を逆撫でしたようだ。

「私たちは別にあなた達の汚い闘いに期待なんてしていない。だけど一つ、あなた達に警告してあげる。この一件から手をひきなさい。私たちはこの国にも女王にも、傷つけるも、関与するつもりも無い。だからあなた達がこの一件に関わる必要も理由もないはず。」

少女は謝罪するアリスに対して興味がないように視線を逸らし、冷たい視線で睨みつける。

「この国と天李さんに・・・ですか・・・・残念ですが、それなら引くことはできませんね。こちらも約束があるので。ハルトさんを傷つけられるのは困ります」

アリスは少女の言葉に笑い、もう一度戦闘態勢に入る。この戦いに入る前にアリスは天李と約束した。ハルトを無事に連れ帰ると。ハルトを守ってほしいと、武力者を嫌っているはずの天李が武力者であるアリスに頭を深くさげたのだ。それがどれほどの屈辱と覚悟と思いか。それをアリスは知っている。だからこそ、ハルトをこの二人に渡すわけにはいかない。

「本気?あなたじゃ、私に勝てない。手を引きなさい。彼は私たちの大切な家族なの。あなた達が彼に手を出すことは許さない。あれは勝手にあいつが暴走しただけ。あいつは私たちが処罰をする。彼に処罰されると都合が悪いの」

この少女のいう彼とはハルトのことだろう。少女の口から告げられたのはハルトが彼女の家族であるという衝撃の事実。少女はジンと違いハルトに対して全くの敵意も悪意もない。それにも関わらず、静かなハルトへの執着はジン以上であることをアリスは察していた。彼女の言葉も嘘偽りはないだろう。アリスの言葉に少女は煽るように見下ろした。この少女の持つ力は別格だ。アリスは少女と向き合い、改めてこの少女の格別な力を理解させられる。だが、アリスはこの少女の何かに違和感を感じていた。

「残念ですが、あなたがハルトさんの家族でも、私はハルトさんの意志の方を尊重します。ハルトさんは今、思いを背負って戦っている。そんな人の思いを邪魔させるつもりはありません。それに、あなたは私があなたに勝てないと仰りましたが、それならばあなたは言葉で説得することなく、私を倒せばいい話。あなたが強いのは十分解っています。ですが、そんなあなたが今私と戦えない理由が、あなたにはあるのではないですか?」

立ちふさがることで焦りを見せ、イラつきを見せる少女にアリスは挑発するように少女を見下ろした。

「・・・アリスだったね、覚えたわ。私、あなたのこと、本当に大っ嫌い」

少女は挑発するアリスに向かってイラつく様子を隠すことなく、笑顔を向けた。

イカを一杯買うつもりが3杯買ってしまいました。思わぬ出費ですね

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