11,助っ人
「お前が、この落ちこぼれの助っ人だと!?」
ジンはアリスをあざ笑い、ボロボロの姿で天李を守る仕草を崩すことのないハルトを見下ろした。
「そうですね。」
だが、アリスもジンの嘲笑に臆することなく、笑って返事をする。
「笑わせるなあ!なあ、お前は落ちこぼれのわりに、人をたぶらかす才能だけは一流みたいだなあ~?」
アリスにジンは軽く舌打ちをすると、気絶している天李を力強く抱きしめるハルトを見下ろし嘲笑する。ハルトは嘲笑を向けるジンに一目見るともう一度、天李を背後へと隠し守る体制を構えるとジンを見上げた。
「耳を貸さないで、ハルトさん。たくさんの人があなたを助けたいと手を伸ばすのは、あなたが誰かを守るために賢明に戦っているから。まっすぐなあなたの姿勢に心が引かれるから。だから、あなたは強いんです。だから私はあなたの力になりたいんです。あなたはこの二人を相手にこの国の民全員を守りきった。あなたは彼らがどんな手を使ってきても決して逃げず、戦った。だからこの勝負、誰がなんと言おうが、諦めることなく、全員を守り抜いたあなたの勝ちです!」
ハルトを馬鹿にするように笑うジンに対してアリスは一瞥もせず、背中を向けた。アリスははっきりと自分の意見を述べ、ハルトに手を伸ばす。勝ち、第三者から見ればこの勝負は間違いなくハルトの負けであるというだろう。それだけハルトはこれ以上動けないほどボロボロで、ジンや女には余裕がある。だが、それでもアリスはこの国の民を守り切ったハルトを鼓舞する。アリスは武力者だ。武力者の言葉なんて信じる必要も、心が揺れる必要も全くない。だが、ハルトは武力者であるアリスの言葉が、涙が自然と流れてくるほど嬉しかった。
「言ってくれるじゃねえか?俺様がこんな落ちこぼれに負けただって?ふぜけんじゃねえぞ!!」
『爆殺』
ジンは、無防備に背中を向け、ハルトに手を差し伸べるアリスに対し勝ち誇った笑み浮かべ、無防備な背中に攻撃を仕掛けた。強大な炎がアリスに向けられる。だが、ジンの向けた炎はアリスに届くまでに突如現れた謎の強大な蔦によって振り払われた。
「くそが!次々と邪魔が現れやがる!次はどこのどいつだ!?」
ジンが攻撃を邪魔されるのは今度で何度目であろう。すべてがうまくいかないこの状況にジンは苛立ち、舌打ちをして大きな声で怒なりつけた。
「喚くな。俺だ」
突如現れた人影はロアドクレイの使者、ノブであった。ノブは鳥類の姿をした自身の精霊の背に乗ったまま、怒鳴り散らすジンを静かに見下ろす。
『森牙』
ノブはジンと少女に向かって右手を伸ばす。ノブが呪文を唱えると辺りの植物全体が牙となり、ジンと少女を襲った。ジンと少女はノブの攻撃に気付くと後退し、背後へと移動する。だがそれは、ノブ自身も読んでいた。
『樹穿』
背後へと移動した瞬間、巨大な樹木の蔓が少女とジンを狙い、穿つ。ジンと少女は体制を上手に取ることができずにはるか後方に吹き飛ばされた。
「すごい・・・」
吹き飛ばされた二人は相当な実力者である。特に少女の方は得体のしれないほどの実力を持っている。それにも関わらず、ノブの攻撃は不意打ちであるとはいえ、奴らを同時に遥か彼方へと吹き飛ばした。
「強いでしょう?ノブさんは。実践慣れしてますからね」
感嘆するハルトにアリスは相手の行動を先読みして攻撃をしかけるノブを誇らしそうに笑いながら自慢する。
「飛ばしすぎだ、アリス。だが、間に合ったようで何よりだ。」
ノブは自慢げに笑うアリスに対して呆れるように大きく息を吐きアリスの頭を軽く叩く。そして傷だらけになったハルトと天李を見ると、息があることに安心し、もう一度安堵のため息を吐く。
「ハルト、お前も頑張ったな。治療してやる。女王も一緒にな」
ノブは精霊から降りると動くことも話すこともできないハルトとアリスのもとへと近づいた。
『祈蔦樹』
ノブはポケットの中から小さな豆を出すと、その豆を半分に割り、空中から下に落とし目を瞑り合掌する。ノブが呪文を唱えると緑色の結晶が現れ、豆から蔦が伸びてくる。その蔦はハルトと天李を包みこんだ。暖かくハルトと天李を包む蔦。ハルトはこの蔦が自分と天李の傷をいやしていることに気付いた。
傷ついていた器官や身体が回復していく。痛みが引いていく。ハルトは目を覚ました天李と視線を合わせ、ノブとアリスの行動に衝撃を受け、大きく目を見開く。
「・・・なんで・・・俺たちを助けた・・・?」
ハルトは自身を助けた恩人であるノブとアリスに警戒心を緩めることなく、睨みつける。ハルトはノブとアリスに対して敵意を向けた。殺気を向けた。天李もこの二人に対して不躾な行為をしたのを知っている。それにも関わらず、この二人は恨んでもおかしくないハルトと天李を助けた。理解のできない二人の行動にハルトは警戒心を緩めることができない。
〈・・・なんで・・・なんで・・・お前が・・・〉
〈君が能力者・・・僕が武力者だったから・・・〉
思い出せない記憶の中でその言葉が何度頭を過っただろうか。思い出せない記憶の中で、どれだけ、記憶もない武力者を憎んだことだろうか。信じていいはずがない。一度全てを失ったハルトや天李にとって、善意という都合のいい言葉は簡単に信じられるはずがなかった。人を信じることがたまらなく、二人にとっては恐ろしいのだ。
「私の気持ちは先ほど言った通りです。あなたが大切に思うものを、私も守りたいと思ったから。あなたの優しく、強い姿勢に私も力になりたい。そう思ったんです。」
ハルトの言葉にアリスが一歩前に来て、自分の答えをはっきりと述べる。アリスは知っている。ハルトが自分を憎む気持ちは、種族を憎む気持ちはアリスも痛い程よくわかっている。アリスも昔は種族に対して憎しみを抱いていたから。信じることはとても怖い。信じて裏切られるくらいであれば、最初から憎み、拒絶する方が傷つかないで済む。だが、それではいけないとアリスはもう知っている。アリスは拒絶するハルトに対して変わらない笑みを向け続ける。
「ふざけるな!!!そんなはずはない!!お前は武力者だ!能力者の俺を助ける理由も義理もない!!!ただの偽善だ!!!」
何度あの言葉がよぎったことだろう。欠けた記憶は彼女を見るたびに、ハルトは何度思い出したことだろう。このアリスの偽善には、何度もノイズが走り、頭が痛くなっていく。心が彼女を否定している。本当は分かっている。能力者の中にもジンのような人間がいるように、種族で善悪を決めることは間違っていると。だが、分かっていてもかけた記憶がハルトの想いを否定する。ハルトは目に涙を浮かべながらアリスを否定する言葉を必死に探し続ける。
「でも、あなたは先の一件で、武力者であることを皆に知られないように、私を助けてくれた。先ほども恨んでいるはずの私やノブさんにまで、守るため結界を張ってくれていた。あなたは何度も何度も嫌いな私を助けてくれた。私はそのあなたの憎み切れない種族関係ない優しさに惹かれたんです。優しいあなたの力になりたい。そう思えたんです」
アリスは大きな声を上げ、否定をするハルトの手をそっと握り、座り込むハルトに視線を合わせる。
「うるさい!俺は別にお前を助けてない!俺はお前に優しくしたつもりはない!」
ハルトは大きな声でアリスの言葉を否定するとアリスの手を振り払い、そっぽを向く。もう、嫌だ。アリスの存在はハルトの中のノイズのかかった記憶をかき乱す。ハルトはあの悪夢を思い出したくないのだ。幸せに、ここで暮らしていたいだけなのだ。なのに、彼女の言葉はハルトの心に平静を与えてはくれない。記憶の奥を思い起こさせ、刺激する。ハルトは脳内の中にノイズがかかりながらも何度も過るもう一つの言葉を否定しながら、アリスの言葉を遮るように目を力強く閉じ、ふさぎ込む。
「そうだとしても、私は嬉しかった。だからあなたは私にとって優しい人です。あなたは私にとって、この国のみんなとって太陽のような、強くて優しい英雄、そう思えたのです。」
〈じゃあ、ハルは私たちにとって英雄ね!〉
アリスの言葉にハルトは反応し、アリスに目を見開きじっと見つめる。懐かしく、そしてとても愛おしい少女の言葉が頭を過る。
〈何があっても、何が起きても私たちとの未来を諦めないんでしょ?弱虫の英雄さん!》
声高な透き通った美しい声。晴天の空に、髪に銀色の髪が靡く。この少女が誰であるのか、ハルトは思い出すことはできない。ただ一つ分かるのはとても愛おしい存在であるということだけ。
《あぁ!たとえ何が起きたって地獄の果てまでだって、お前たちを探し出してやつ!俺たちの未来を掴み取ってやる!俺はお前らの英雄だからな!》
約束した。自分がそんな存在になれると、彼らを救うことができると信じていた。
《あははは!じゃあ、期待しているよ、君が掴み取る未来をね。僕たち3人が未来永劫ずっと一緒に過ごせる未来をハルが掴み取ってくれることをね。君は僕たちにとっての太陽。僕たちがどんな地獄にいたって、照らして、救い出してくれるんだろ?》
顔も思い出すことができない金髪の髪を靡かせる少年もハルトの言葉に嬉しそうに笑い、からかうようにハルトを見下ろし手を伸ばす。
《あら!弱虫のハルに私たちを助けるなんてできるのかしら!私たちの方が100倍強いのに~?》
少年の言葉に少女も嬉しそうに笑いながらも、恥ずかしさを隠すようにハルトを振り向き、冗談をいうように軽く笑う。
《うるせ!見てろよ!何があっても絶対にお前らを救い出してやるからな!》
誓った。何があっても、例え死んでも必ず見つけ出し、救い出すと。一緒に過ごせる3人の未来を諦めないと。
《・・・ごめんね・・・私にはできなかった・・・ハル、あの日の言葉覚えてる?リオをお願い・・・暗闇から救い出してあげて。私たちの英雄》
少女が泣いている。何よりも大切にしていた誓いをハルトはようやく、アリスの言葉で思い出した。思い出すことを拒絶していた悲しい記憶の中で、忘れてはいけない大切な記憶があることを、思い出した。顔も思い出せない一人の少女と少年の人影。ハルトは、何よりも大切な彼らのために、すべてをかけて救い出すと、英雄になると誓った。どこにいても、例えどんな困難があろうと彼らを諦めることはしないと、そう誓ったのだ。ハルトは思い出した記憶の副作用により、頭痛がする頭を抱えながらじっとアリスをみつめていた。このアリスという女は出会ったその瞬間から、ハルトの中の何かを刺激し続ける、なぜ、この女といたらハルトの記憶の奥の感情がざわめくのかそれはハルトにも理解することができない。だが、この女の存在はハルトに大切なことから逃げることは許さないと訴え続けている。そんな気がした。
「ハルト・・・」
天李は頭を抱えながらもアリスを静かに見続けているハルトを静かに見つめていた。
「ハルト、あいつらはお前の知り合いか?」
アリスを見つめながらも再度目を逸らすハルトにノブが問いかける。ノブはジンと対面したのはあのわずか一瞬の間である。だが、ジンがハルトに異常な執着を見せていたのはあの一瞬でノブにも十分に理解できる。
「・・・いや。俺はあの男には会ったことがない・・・はずだ・・・」
ノブの問いにハルトは小さく悩むように答えた。
「あの男には?とは・・・はず?」
曖昧な回答に濁すハルトにノブとアリスはハルトを見る。
「記憶がないんだ・・・この国にくる・・・天李に出会った以前の記憶のほとんどが・・・でも、あいつらは俺のことを知っていて、あのジンという男は俺を恨んでいた。だけど俺にはその理由だって何も思い出せない」
ハルトはこの国にくるまでの記憶はわずかな欠片ほどの記憶しか残っていない。だが、彼らは何故かハルトを知っていて、襲ってきた。その理由は分からない。だが、あのジンという男がハルトに対して異常なほどの憎悪を向けていることは分かる。ジンと一緒にいたあの少女の存在はひっかかるが、あのジンに対してハルトは何も思い出せない。
「ジン、特にジンといたもう一人の奴は相当の手練れだ。あいつは俺の不意打ちの攻撃に対しても何なく対処している。俺がやつを吹き飛ばすことができたのはやつがジンを庇ったからだ。対してお前はあの二人に対してボロボロの状態にまでさせられた。この国の全員に対して相当なマナを使い、そして今もそのまだ彼らのためにその力を使い続けている。お前も分かっているはずだ。その状態で、お前があの二人に勝つなんて100%ありえない。だから、俺たちが代わりに戦おうと思っている、それでもいいか?」
ノブは満身創痍状態であったハルトに対して視線を送る。ハルトはノブの能力により、傷は回復しているといえども、全国民に結界を張り続け、マナも大量に消費し、大量の疲労を蓄積している。こんな状態で、あのジンと少女と戦えるわけがない。だからこそ、ノブは提案ではなく確認のつもりで行った問いであった。だが、ハルトはそんなノブの言葉に即座に首を横にふった。
「いやだ。」
「なぜだ?」
迷うことなく即座に否定をするハルトにノブは鋭く睨みつけ追求した。
「多分、俺は変わらなきゃいけない。今のままじゃいけない。だって俺は英雄になると誓ったから!!!そのために、俺はあいつに勝たなきゃいけない。そう思うから!」
ハルトはノブの提案にはっきりと否定し、自分の気持ちを、想いを主張する。先ほどのアリスの言葉はハルトに懐かしい少女ともう一人の少年の姿の記憶を過らせた。顔も名前も思い出せない。ただ大切であったということだけが思い出せる彼らの存在。誰よりも大切で守りたいと思っていた存在がいたことを、ようやく思い出すことができた。ハルトは彼らを救い出さなければならない。彼らの英雄になるとハルトは何よりも大切な誓いをしたのだから。そのために、ハルトは変わらなければならないのだ。この腑抜けた自分を。そうでなけえれば何も守れない。英雄になんてなれるわけがない。彼らはきっとハルトを舞ってくれている。英雄の自分を。ジン程度の男に勝てないレベルで英雄になんてなれるわけがない。
「だが物理的に無理だ。お前は確かに常人よりも遥かにマナの許容量が多い。それは分かる。だが、この国の民全員を守りながら、あれほどの男に勝つことは不可能だ。お前にはこれまでの戦いの蓄積された疲労もある。あいつに勝つ前に先にお前が倒れる」
ハルトは今でもこの国の民全員に防御結界を施し続けている。あのジンという男は誰を巻き込んで攻撃してくるかも分からない。今、こうやって吹き飛ばされている間にも違うこの国の民を攻撃していることは防御結界を張っているハルトには伝わってくる。この国を巻き込んだ大きな攻撃をしてくる可能性も高い。そう考えるとハルトはこの国の全員の結界を解くことはできない。だが、そうしながらもジンという男に勝つことは難しい。それはハルトも理解していた。傷は治っていても身体の残る疲労の辛さはなによりハルトが一番理解している。だが、それでもやらなければならない。そうしばければハルトは大切な彼らを守る英雄になんてなれないから。ハルトはそれを理解していたからこそ、覚悟を決めた目でノブを見上げた。
「・・・分かったよ。じゃあハルト、お前は守天殻のマナの供給を解除しろ」
ノブはハルトの覚悟に大きくため息を吐き、ハルトに命令する。
「いや、それは」
ハルトがこの国の民全員にかけた守天殻は大量のマナを消費し続けなければならない。その供給を外せば、この国全員にかけた結界が解除されてしまう。ハルトにはボロボロになっても結界を解けない理由がある。絶対に誰も死なせることなく、守り通す。これだけはハルトが絶対に譲ることはできなかった。
「馬鹿!誰が術を全部解けなんていった!マナの供給源を俺が変わってやるって言ったんだ!俺には国民全員に守天殻なんて行為魔法を張るなんて複雑な魔法の発言は無理だ。だが、お前が作った術式にマナを供給し、持続することくらいは俺にもできる。」
ノブの提案に戸惑うハルトにノブは大きくため息を吐き、自分がハルトの代わりに自分がマナを供給する役割を名乗り出た。ハルトはその言葉に大きく目を見開き、アリスや天李もノブの言葉に驚きノブを見る。天守殻のマナの放出は尋常ではない。常人ならば10秒も持たない行為である。その術式を他者から譲り受けるとは正気の沙汰とは思えなかった。国民全員に天守閣ほどの高位魔法を発動させることは複雑で、たくさんの複雑な術式の作成と大量のマナの消費が必要となる。だが、他者から術式を譲渡されるという行為は他者の組んだ術式のすべてを読み解き、理解し、自分のマナとして放出しなければならない。他者の術式を引き継ぐことは自身で術式を発動させるよりも何倍も難易度があがる。だからこそ、ノブの提案はこの場にいる誰もが衝撃を受けた。
「その代わり、俺が術式をお前から受け取るのはあいつらがここについた瞬間だ、俺はお前ほどマナの許容量は大きくない。2分が限界だ。その間、俺は戦いにも参加もできない。お前とアリス、二人であいつらと決着をつけるんだ。お前がもう一人に対して決着をつけろ!その代わり、俺は何があっても全力でに分間の間はこの国にいる誰も傷つけさせない!できるか?ハルト。」
ノブはため息を吐き、これからの作戦をてきぱきと二人に指示を出していく。天李はハルトの結界術式を受け継ぎ、この国の全員を守ると宣言するノブをただ静かに見つめていた。
「ありがとう・・・ございます・・・」
このノブの宣言は簡単なことではない。ハルトもそのことは理解している。だからこそ、ハルトはノブの覚悟に口調が思わず変わっていた。ハルトは頭を深く下げ、一度ゆっくりと目を閉じて天李に視線を移す。
「厚かましいことは承知のうえでお願いします。天李のことも一緒に連れて行って守ってほしいんです。天李は俺が傷つく行為を嫌います。結界を張っても、さっきみたいに出てきて俺を守ろうとしてくれる。だから、お願いします!俺は天李が傷つく姿をみたくない」
ハルトはもう一度ノブに向かって深く頭を下げる。ハルトは分かっている。ハルトや天李の二人への態度は許されるものではない。この場に助けにきてくれただけでも奇跡である。だが、それでもハルトは厚かましくも譲れない願いをノブに懇願した。ハルトは天李が何をしてでもハルトを助けようと無理をすることを知っている。先ほども天李は結界を壊してでもハルトを守りに来てくれた。天李のハルトへの愛情も、気持ちも十分伝わっている。だけど、天李の先ほどハルトを守るために発動させた術が天李にどれほどの負担を与えるかハルトは気づいている。ハルトは同じくらい天李に傷ついてほしくないのだ。
「ハルト!私は!」
ハルトの頼みに天李は動揺し、一緒に戦うとハルトの懇願を否定しようとする。
「天李は俺にとって大切な恩人です!俺にとって天李は母親同然なんです。だから、俺は、天李が傷つくことは絶対にしてほしくない。必ず帰る!だから!俺が帰ってくるまで一緒に天李も守っていただけませんか?」
ハルトは深く頭を下げもう一度、懇願する。天李は記憶を失った自分を守り続けてくれた存在であり、すべての存在だった。そんな天李が傷つくなんてことハルトは到底耐えられるわけがない。天李を守るためならば、どんなことでも受け入れよう。ノブならば信用できる。ノブならば、大切な存在である天李を任せてもいいとそう思えた。ノブはそんなハルトの想いを静かに見つめるとしっかりと頷いた。
「わかった。女王は俺が必ず守り抜く。だからお前は全力でやつらを撃退しろ!」
「はい!」
ノブのはっきりとした返事にハルトもしっかりと返事をして、覚悟を決める。ノブは天李と一緒にそれぞれの精霊に乗り、上空の後方へと飛びたった。アリスとハルトは後方の上空へ飛び立った二人を見送るとこちらに迫ってきている強い殺気の気配を探知する。
「勝ちましょう!ハルトさん」
「あぁ!」
アリスはハルトに向け気合を入れるために自信満々の笑みでハルトを見る。ハルトはそんなアリスに迷うことなく、自信に満ちた笑顔でアリスに返事をした。
アラームが耳元にあるのに聞こえないのはなーぜでしょう?




