プロローグ
小学生の時に下書きしてた物を、供養したくて書きました<(`・ω・´)楽しんで頂ければ幸いです<(`・ω・´)
桜の絨毯に、血の雨が降った。
バートリ・エルジェーベトと同じ思考な訳では無いが、血の雨を浴びる彼女は、とてもとても美しく、可憐だった。
日暮れまでまだ時間のある、夕方の事だった。
床に転がる、少女だった物からの手紙で、ここに呼出された。今、少女だった物は血に塗れ…簡単に言えば、死体となって転がっていた。
犯人は、恐らく…いや、確実に、帯刀している彼女だろう。可憐な彼女は、血濡れた着物の裾をピタピタと揺らし、私を振り返って見つめた。
彼女は、次は君だとでも言わんばかりの瞳を私に向けて、妖艶な笑みを浮かべた。
…だから、私は…。
殺られる前に殺る主義なので、先手を打った。
――――――――――
「…なぁんでこうなりますかねぇ…」
妖艶な笑みを引き攣らせながら、彼女はワイヤーでぐるぐるに固定されていた。彼女と出会ったのが5分前。現在は現在。5分の間に何が合ったのかは、察して頂こう。
ワイヤーで固定された彼女は、血塗れの地面に膝をつき、私を見上げている。
稀に散った桜が、血の糊で彼女の服に貼り付いた。彼女はワイヤーで縛られても、何処か、この世の者とは思えない危うさを感じさせる。
「…貴方、名前は?」
「…なぁんで突然自分を縛ってきた相手に名乗らなきゃなんですかねぇ…。先に名乗ってはどうですかぁ〜?」
「…。」
無言の私に、何か圧を感じたのだろう。暫く2人の間に無言が流れたが、渋々といった様子で、彼女が口を開いた。
「…名前なんて大層な物、持ち歩いてないですよぉ〜。私は、まだ、名無しの死神です」
やはり、この世の者では無かった。しかも、死神ときた。…しかも名無し。
名無しの神は珍しくない。そこら中にいる訳では無いが、一生出会えない程レアでもない。だから、少し、いたずら心が湧いた。
「そう。…じゃぁ、貴方の名前は…おりがみさん。おりがみで作れそうな顔してるから」
「どんな悪口ですか、それ…」
おりがみのように、繊細に見えたから、という言葉は飲み込んだ。
相変わらず妖艶な笑みを浮かべる彼女には、余裕が見受けられる。普通の死神にとって、ただのワイヤーで縛られただけの状況は、束縛されていないに等しいらしい。
おりがみさんは、笑みをより深くして、私に語り掛けた。
「…私は一応、名無しって名乗りましたよぉ〜。貴方も名乗ってはいかがですかぁ〜?」
おりがみさんからのそんな言葉に、私はニッコリと笑った。片目を包帯で隠した私の笑みは、何処か胡散臭く見えたのだろう。おりがみさんが、怪訝そうな顔をした。
「…閻 陽炎だよ」
「…ああ、神殺しの一族ですか。どおりで、私を縛れる訳です。厄介ですねぇ…」
怪訝そうな顔をもっと歪めて、心から厄介だと表してくれた。その様子が面白おかしくて、私はクスクス笑ってしまう。
名乗りをあげた途端に、おりがみさんは、厄介そうにワイヤーを解こうとして…諦めた。解けないと分かったらしい。…実はこのワイヤー、一寸特殊なのだ。
「…これから私を消滅させて、終りですかぁ〜?はぁ、私もついていないですねぇ…」
「…別に、消滅させないよ?」
「…じゃぁなんですかぁ?式神にでもするつもりですかぁ?」
「…うん、それも良いかもね。でも…」
もっと良い方法があるよ。私と組まない?
そう言うと、おりがみさんは途轍もなく嫌そうな顔をした。