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オーリィと黄金の林檎 ~蛇の娘と蝙蝠の母・「麗しき蛙売り」外伝~  作者: おどぅ~ん


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終章 ~大樹の下に~(1)

「ねぇ、本当にお願いよ!」

 りんご園に向かう道すがら。「クロエ」に代わったオーリィは、テツジと「カズマ」にくどくどと念を押す。

「『わたし』のことは、あの方には内緒にしてちょうだい、後生だから!」


 テツジがベンを食事に招いたあの夜。オーリィが語った大樹にまつわる物語は、彼の関心を大いに掻き立てた。そしてベンも言ったのである。

「ま、まだ、園に行ったことが、ない?テツ、それは、もったいない。あ、会ってみると、いい。婆ァ様も、シモーヌも、この村の名士。二人を知らない、それはモグリ……大樹も見せてもらえば、いい」

 きっとためになる、と。りんご園は確かに一種の女の園だが、男子禁制というわけではない、収穫時期など忙しい時は男も沢山助っ人として駆り出されるのだから、と。

「そう、オーリィ、君が案内してやったら、いい」

 ベンはそう言って穏やかにニコと笑う。そうすれば二人も喜ぶ、言葉には出さなかったが、彼の思いはオーリィにも伝わってきた。

 彼女自身は、といえば。よだか婆ァはともかく、シモーヌと話すのはいつも気が進まない。確かに、出会った当時のあの牙をむくような憎しみはすっかり影をひそめた。今では、園での作業のあれこれについて教えを仰いだり相談をしたり、日常の普通の付き合いは当たり前に出来るようになっている。

 さりながら。シモーヌに母の面影を重ねてしまうのは今でも変わらなかった。だから彼女と話す時のオーリィは、口調も態度もぎこちない。そして、愛娘の面影を自分に写しているシモーヌに、冷たい、つれない態度になってしまうのを、今のオーリィはむしろ申し訳なく思っている。

(だからこそ、ベンさん、あなたはそうおっしゃるのですわね……)

 大樹の件をきっかけに、ベンはその後もりんご園にしばしば顔を出すようになっていた。蘇ったとはいえ、大樹はあの虫たちとの長年の争いで深く傷ついている。いずれ命の終わりを迎える時は来る、次の世代を残すために、と。ベンは大樹の枝を挿し木で殖やし、新たな苗木を育てている。そして園のりんごと大樹の交配による、品種改良の研究。よだか婆ァ曰く、彼は今でも園の「大先生さま」なのだ。

 だから最近のオーリィとシモーヌの間柄を、今なお続く二人の間の埋めがたい溝を、傍で見知ってわかっている。

(あの方と仲良くなれるきっかけにしなさいと、そうおっしゃるのね……)

 ベンの思いやりにほだされたオーリィは、あの晩、テツジをりんご園に招待することを約して別れたのであった。


 数日後、ある水の日の昼下がり。その日の蛙売りを終えたオーリィは、市場の出口でテツジと落ち合うと、共にりんご園に足を向けたのだが。

 わずかに十数歩も進んだところで、彼女は急に足を止め、テツジに切なげな顔付きで向き直った。

「あの、テツジさん、『お姉さま』があなたにお願いしたいことがお有りだと……」

「……?『クロエさん』、こんな所でどうされました、何か?」

「ああ『カズマ』、テツジも一緒ね。お願い、頼みがあるのよ、大事な!」

 オーリィの『姉』。それはオーリィの一人芝居に他ならない。自らの内に潜む激しい情動を、かつて彼女は忌み嫌い、消し去ろうと何度も試みた。だがそれは叶わず、それ故に己そのものをオーリィはひどく卑下し続けてきた。

 それではいけない。その激情もまたかけがえのない自分の一部。否定ではなく受け入れ共存すべき。テツジは悩み苦しむオーリィにそう説いて、彼女のかつての名を借りてその感情に『クロエ』と言う仮の名を与えたのだ。

 その時から。テツジの前では、オーリィはあたかも二重人格者のように振る舞うようになった。『クロエ』は彼女の姉であり、彼女と同じ体の中で共に暮らしているのだと。そして時に応じてお互い入れ替わる……それはあくまで芝居なのだが、彼女の生まれ持った芸術家的センスと演じることへの情熱のゆえに、今ではもはや、どちらが本当の自分か彼女自身にもわからない程の域に達している。奇妙な方法。だが今のオーリィ(あるいはクロエ)はそうすることで心の平安を得ているのだ。

 ただし、オーリィがクロエに変貌するのは、その方法を教えて信頼で結びついたテツジの前でのみ。あのケイミーやコナマですら知らない姿。その信頼に応えるべく、テツジもまた、クロエの前では特別な仮の名を名乗る。それが『カズマ』。クロエとなったオーリィは、彼の拙い演技を、カズマの登場を子供のように喜ぶのが常。

 だがこの時は。オーリィの中から現れたクロエの顔色には、ただならぬ焦りの色。

「ええ、カズマです。一体なんです?何でも言って下されば……」

「いいこと?これから『妹』があなた達にシモーヌ様を紹介するけれど、あの方に『わたし』がここにいることは決して言わないでね!」

 カズマは小首を傾げた。

「……?それはもちろん。あなたの存在は、あなたのお許しがない限り、決して誰にも明かさない。『僕達』は以前あなたにそうお約束しました。大丈夫、忘れてはおりませんよ」

 なぜ今更わざわざそんなことを、と。カズマの言葉の響きから彼の疑念を耳聡く感知したクロエは、慌ててたたみかける。

「あの方は……シモーヌ様は特別なの!あの方は、もとの世界のご自分の娘のクロエさんを愛していらっしゃる。深くね、とっても深く!それで、オーリィがその娘さんに似ているものだから、シモーヌ様は今では妹をとても可愛がって下さっている。

 ……先にわたしが、あの方にあんなにひどい事をしたのに!」

 なるほど。カズマすなわちテツジには腑に落ちた。今の彼女の中では、かつてシモーヌに逆らい、あやうく殺しかけたのは姉であるクロエであり、現在りんご園の末弟子として愛されているのはオーリィの方、そういう『筋立て』になっているのだ。

「『クロエ』という名前が、本当はわたしの名前だったなんてあの方に知れたら!

 そうよ、あの方の娘さんはとっても可憐で純な娘だったそうじゃない、それが!

 わたしみたいな、こんなあばずれの莫連女と同じ名前だって知れたら!

 ……シモーヌ様が悲しむわ。がっかりさせてしまう。妹も、またうとまれてしまうかも知れないじゃない?それは駄目、絶対に駄目なの、わかるでしょう?!」

(クロエさん、今でもやはり、あなたはそうやって盾になる、オーリィさんを守っていらっしゃる)

 自分のアドバイスは正しかったのだろうか?オーリィという一人の人間が、人間として必然的に持ってしまう『悪徳』や『不浄』を、クロエは全て自分に引き受け、身を隠す。人の世の表に現れるのは、彼女の理想の無垢なる自我、すなわちオーリィ。

 不自然だ。だが、テツジと出会った時の彼女はもっと歪んでいた。自分の悪徳を、情熱のほとばしりを全て完全に消し去ろうと、不可能にもがいていた。

(たとえそんなことが出来たとしても、それでは『共倒れ』がオチだ。どちらの心も死んでしまう。だからあの時俺は言った。『消えようと考えるな、むしろ隠れて生きる方を選べ』と。だが……)

 オーリィの中のクロエという、その日陰の存在の切なさ。

 もう一歩外に出てみよ、素直な一人の自分に立ち返れ。いつかもう一度、そう彼女に説くべき時が来る。説かねばならない。カズマはそう胸に秘めつつ、今は。

 彼は答えた。

「わかりました。あなたのお名前は、シモーヌさんの前では決して口にいたしません。もう一度お約束しましょう、固く!」


「お待ちしていました。初めまして、テツジさん。ご来園の旨は、オーリィさんから伺っておりました。どうぞこちらへ……」

 そこは、テツジが話に聞いていたあの「集会室」。テツジとオーリィを招き入れたシモーヌは、上席と思われる椅子を二人に勧める。

「オーリィさん、お先にどうぞ。俺は時間がかかりますから」

 この村の戸口は、生まれ変わって巨人化したテツジにとってはどこも具合が悪い。小さいし、低すぎる。その部屋の入り口も、彼は巨体をねじ込むのに、跪き体をくねらせなければならなかった。シモーヌと先に部屋に入れたオーリィを待たせている。ほんのわずかの、間の抜けた気まずい時間。

 だがその間。戸口をくぐるテツジはその背筋にある戦慄を覚えていた。ようよう室内に這い込む、顔を上げれば一見無表情。それは彼持ち前のポーカーフェイス、だがしかし、果たして動揺は隠せているのか?当のテツジにはその自信がなかった。

(似ている。まさか、これほどとは……!)

 それは、オーリィの物語で何度も聞いたはずだった。しかし、こうして目の当たりにする現実のシモーヌのオーリィとの相似は、テツジの内心の予想を遥かに超えていた。

 本来ならば、シモーヌに相対して、客であるテツジと案内役のオーリィが並んで着座するのが普通であろう。だが戸口同様、この村のささやかな家具に対してテツジの体はいつも規格外。彼が着座すればテーブルの長辺を一人で占領してしまう。椅子も二つの尻たぶにひとつづつ必要、そうしなければ座面の面積も、おそらく支える強度も足りない。それゆえ今この時も、テツジの前にシモーヌとオーリィが並んで座っていた。戸口くぐりに悪戦苦闘するテツジの巨体を見て、シモーヌは早くも察し、先に室内に入ったオーリィを自分の隣に手招きしていたのだ。

 そう。テツジの前には今、見比べてみよとばかりに二人が居並んでいる。

(俺が先入観にとらわれているからか?いや、違う……)

 外見をさっと見る限りでは、実は二人は「よくある他人の空似」程度でしかない。

 そして人は誰しも、初対面の人間が知人に風貌が似ているなら、「違い」の方を強く意識するものではないだろうか?「この人とあの人は確かに似ている。でも、あそこが違う、ここも違う」と。そうやって顔を覚えようとするものではないだろうか?

 シモーヌとオーリィの違い。無論それはテツジにも次々とわかる。にも関わらず。見れば見るほど二人は似ているのだ。しぐさ、表情、言葉の響き、息遣い、それらが外見のちょっとした「ズレ」をことごとく打ち消していく。

(似ているのだ、『中身』が、背負ってきた生き様が……だから……!)

 魂の姿が外見ににじみ出るのだと。テツジはそう結論づけた。

 そしてその時。テツジの脳裏に宿ったもう一つの、大胆な推論。

(そうだ俺も……何度も人に言われたものだ……【親父】に似ている、と……)

 オーリィとシモーヌ。

 共に全く別の世界からここにやって来た人間、血の繋がりは無い。それは事実。

 だがしかし。

(並行世界……いくつもの異なった世界、だがそれは少しずつずれて重なり合っている。俺はそういうものだと聞いていた。長老からも。

 ……違う世界に、よく似た人間が、一人づついる……

 つまりよく似た家族が!母と娘が!もう一組【重なっていた】んだ!)

 二人はただの「他人の空似」ではない。まさしく【家族】であるがゆえの、【母娘】であるからこその相似なのではないか?だとしたら。

 それはテツジが知る、あの「山」の最も残酷な皮肉。

(あっちの世界から母を、こっちの世界から娘を、別々にさらって、ここで逢わせる!まさか?どちらの母娘にもあんな因縁があったと【知った】上で、なのか?!)

 この村で、「先住者」や「山」が忌まわしい存在として扱われていること。その時テツジは始めて、その理由が腹の底の底に落ちた。そして驚きに代わって彼は今度は、煮えたぎる怒りを顔色に表さないことに、全神経を集中しなければならなかった。


 いつもその人物は、都合のいい時に現れる。

「シモーヌ、邪魔するよ。フン、聞いてた通りだね、たいへんなデカブツだ!」

 テツジの背後の入口に現れた小さな姿。言わずと知れたよだか婆ァ、その人。

「ああ婆ァ様、二人とも今いらしたところです。こちらへどうぞ!」

 シモーヌはさっと立ち上がると、傍から別の椅子を取った。オーリィも立ち上がって自分の椅子を外にずらす。二人の間に婆ァのための新しい席が用意されると、足腰の達者な婆ァはとことことせわしなく駆け寄って、そこにちょこんと飛び乗る。婆ァの足は、椅子に座ると床に届かない。粗末な野良着に頬かむり、労働の汗と泥に汚れている。その姿は「村の最古老」なるいかめしい言葉の印象とは違う、鄙びた一老媼。相対すれば、その表情は見事なしかめっ面。初対面のはずのテツジの顔を臆面もなくギロギロと凝視する。だが、テツジが婆ァから感じたのは、無礼でも威圧でもなく、率直さ。

 そして気を静めようとしていたテツジにとって、彼女が登場したその珍妙な間が、雰囲気がなんともありがたかったのである。

「テツジさん、御存じと思いますが、こちらがりんご園の前園長、今は【相談役】のよだか婆ァ様……」

「テツジです」シモーヌの紹介を受けて、テツジは婆ァに頭を垂れて名乗った。

 すると。

「お前がオーリィが世話した新入りかい、ずいぶんと顔を出すのが遅かったね?

 いいかい、お前が村に来た時分、お前のためにね、あたし達園の者は、何日もオーリィを貸してやったんだ!もっと早く挨拶に来るもんだよ!ウスノロだねぇ!

 ……で?もう一遍名前を言って見な?お前、なんて名だい?」

(聞きしに勝るな……)会っていきなり怒鳴りつけられるとは。テツジは心中で苦笑した。だが不思議と、ちっとも悪い気がしない。

(たしかに愛嬌のある婆さんだ。年の功、いや、人徳というやつかな)

 そしてこれまた心中ニヤリと含み笑い。

(フフ、それにその質問は予習済みだ。婆さん、あんたが聞きたいのは……)

 けろりとした顔で彼は答える。

「テツジです。この村では、『穴掘り鬼の』テツ、そう名乗っています」

 婆ァの知りたがるのは、彼が背負った「獣の名前」。たちまち、彼の答えを聞いた婆ァの目が、大きく見開かれた。

「鬼?鬼とは大きく出たね。図体には見合ってるようだが、何故鬼なんだい?」

「婆ァ様、」シモーヌが微笑みながら割って入る。「こちらのそのお名前は、『ベン先生』がこの方につけて差し上げたのだそうですよ」

「何とな!大先生さまがかい?」

「ええ。……テツジさん、あなたのことは、私はバルクス監督から度々聞いておりました。新人ながら、東の荒地の開拓隊の、一番の働き頭ですとか。婆ァ様、今先生も荒地で働いていらっしゃるでしょう?そのご縁で」

「俺は、俺の中にいるこの獣が、何だかわからないんですよ」

 驚いた顔で、テツジとシモーヌを代わる代わる見返す婆ァ。首にバネが仕掛けられたオモチャのようなその様に、テツジは思わず口元に笑みを浮かべて。

「余程珍しい生き物なのか、俺も知らないし、誰に聞いてもわからない。名前の付け方に困りましてね。荒地でみんなに相談したんです。そうしたら、あれだこれだと寄ってたかって考えてくれて。最後にベンさんがこの名前を出してくれたんです。俺は、この名前が気に入りました」

 婆ァが「獣の名前」にこだわるのは。

(この人は、いつも『覚悟』を問うているのだ)

 この村で如何に生きていくか、その覚悟を。

 それならば。

「俺は前の世界では軍人でした。軍人にも色々ありますが、俺の場合で言うなら。

 くだらない生き方でしたよ。何の意味もない戦いに命を捨てただけのね。

 だから俺はもう一度戦いたいんです。もっと歯ごたえのある敵と。

 それは、この村を取り囲む荒地です。

 俺は荒地で働いてわかりました。俺が掘った溝に水が流れて用水になる。俺がほじくった地面にその水が染みて、畑になる、これから麦が植えられて、緑に染まって、黄金色の穂が揺れる……そう考えただけで、今の俺は嬉しくて堪らない!

 東の開拓がひと段落したら、今度は鉄の採掘です。それも戦い甲斐がありそうだ。あの荒地から、ごっそり鉄を掘り出してやるんです。

 俺は、この村を豊かにするために!この腕が折れるまで!あの荒地を掘って掘って掘り返す!だから俺は『穴掘り鬼』なんです」

 一気呵成に答えた。それは正真正銘、一点の曇りもない、テツジの真情の吐露。

 むっつりとした婆ァ、しかしその嘴の端が、奇妙な形に歪む。

「そうかい……その言葉、忘れるんじゃないよ。大先生さまにいただいた名前、無駄にしたらあたしが承知しないからね!……オーリィ、」

 よだか婆ァはテツジに向けていた眼差しを、傍らのオーリィに移して言った。

「『お隣さん』。お前、いい仕事が出来たじゃないか。上出来だ。

 ……さてシモーヌ?今日はあたしゃ何をしたらいいんだい?」

 フイと今度はシモーヌに向かって、婆ァはそう問う。何やらウキウキした口調。

「そろそろ次の収穫が近いので。ライネさんの班に収穫カゴの手入れを任せることになっています。ですがあの班はお若い方が多くて。カゴの手入れは慣れていない方が沢山。初めに婆ァ様に入っていただいて、ご指導いただけたら、と思いまして」

「カゴの手入れかい!いいね、腕が鳴るよ。ライネの班だね?任せときなシモーヌ、あたしがキッチリみんなに教えてやるから。

 さぁこうしちゃいられない……後は頼むよ。その鬼に大樹を見せておやり」

 現れた時と同じように、婆ァは忙しなくその場を去ってゆく。

(【相談役】か、フフなるほど、上手い肩書だ……)

 そもそも、未経験者の多い班にわざわざカゴの手入れを任せたのは、新人の教育と婆ァの能力の有効活用のため。一石二鳥の策。

 世話焼きで経験豊富なよだか婆ァを新人の指導係にあて、ただし、どこで使うかは園長のシモーヌがその都度考え、婆ァに依頼する。よだか婆ァと共に働き、婆ァの顔を立てながら、あくまで園長としての主導権と責任はシモーヌが執る。これがシモーヌの考えた【運営方針】であり、恩師との新しい人間関係。

理に適っている。これがあの話に聞いた、シモーヌという人物の人間操縦の手腕かと感心しながら、その場を去る婆ァの背中を見送るテツジに。

「テツジさん、婆ァ様は大変ご機嫌でした。あなたをお気に入りになったようです。オーリィさん、よかったですね、お褒めをいただけて」

 穏やかに微笑みながら、シモーヌはそう言って。

「ではせっかくですから。大樹をご覧になって下さい。私がご案内しましょう」

 静かに席を立ち、二人を促しながら部屋を出ていった。

 テツジとオーリィはつかの間顔を見合わせ、慌ててシモーヌについて行く。

(妙なことになったな、あの人も一緒とは……)

(続)

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