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80話

 あぁ、それか、とシシーは種明かしする。


「さっきの女。俺の名前を聞いた時の反応、そして名前を『イクス』と言った。そこでなんとなくわかった」


「……つまりは?」


 まさかそんなところで、と少年は冷や汗をかく。そして皮膚が粟立つ。それだけの情報でたどり着ける答えではない。


 そんなことを気にも留めず、シシーは続ける。


「……丸罰ゲームというのは、いくつか違う呼び方がある。ティック・タック・トゥ、ノーツ・アンド・クロスィーズ、三目並べ、モルピオン、そして『オー・アンド・エックス』」


「……」


 シシーの推理を、少年は黙りこくって聞く。徐々にだが、口角が上がるのを抑えきれない。目も見開いて、舌なめずりする。


「エックスとはつまり、ドイツ語読みで『イクス』。だからお前は『オー』だと思った。それだけだ。違ったら違ったでどうでもいい」


 以上、シシー・リーフェンシュタールの推理。とりあえず、室内を歩きながら喋ってみた、というところ。やってやった、解いてやった、という感情はない。彼女にとっては、夕焼けが出てるから明日晴れか、程度の想像にしか捉えていない。


「すごい!」


 パチパチ、と本心から少年は拍手を送る。まさかこんな面白い生物、いや、怪物と出会えるなんて。心が震える。危険なことは大好きだ。


「たしかに、当たったところでなんだってなるけど、すごいね! そんな気づかれ方するとは思わなかった」


 なにか景品でも用意しておけばよかったね、と少年はシシーに語りかける。


「そんなことはどうでもいい。やるのか? やらないのか?」


 ここに来た目的はチェス。なにやら妙な流れと雰囲気に、シシーは嫌気が差してきた。こいつと仲良くなるためにここに来たのではない。場に緊張をもたらす。


 ごめんごめん、と簡易的に少年は謝罪する。


「やるよ、やるやる。でもさ、いいの? せっかくの仕合前なのに、こうやってやっちゃって。なんかペナルティとかないのかな」


 ルールには禁止されていないが、明日の対局前に、前日その相手と勝負する。もし、『負けたほうは明日の対局を棄権する』というものを賭けてしまったら、どうなるのだろうか。


 だが、勝つためには、対戦相手の老人を衰弱させることも厭わないシシー。ルールなどどこ吹く風と、我が道を行く。


「知ったことか。なんでルールに則ってやらないといけない? それは向こうのルールだ。俺のルールじゃない」


 イスに腰掛け、黒と白のポーンを握り、それぞれ左右の手へ。先手と後手を決める方法として、片方のプレーヤーが駒を握り、もう片方のプレーヤーが一方の腕を指差す。そして選ばれた色のポーンで決まる、というもの。


「早く座れ。そして選べ」


 バランスの悪いイス、テーブル。だがどうでもいい。こいつさえ強ければ。弱いなら……死んでしまってもかまわない。

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