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47話

 石造りの建物が連なるカフェの店の前で、街灯と店の灯りに照らされながら、二人の少女が会話をする。片方はケーニギンクローネ女学院の有名人、シシー・リーフェンシュタール。人通りはまだまばらにあることと、私服に身を包んでいるため、目立ちはしない。二人だけの世界で会話をする。


「うーん、仲直りしちゃったところを見ると、少し失敗だったかね。いい感じだと思ったんだけど」


 もう片方の少女は、少し残念そうに、自転車で駆け抜けていった彼女達の、その背中を見送った。仲良く二人乗り。一応違法だけど、そんなことはどうでもいい。

 

 その少女の軽い口調に、苦虫を噛み潰したような表情のシシーは、吐き捨てるように言い放つ。


「……見るに耐えないね」


 夜のベルリンの気温は四度。吐く息は白く、肌を突き刺すような寒さだが、苛立つシシーの言葉は、さらにその温度を下回るかのように冷たい。


 しかし、その言葉の刃も、少女には通じない。するり、と避けて平常に会話を続ける。


「ま、彼女達のおかげでだいたいわかった。安心しなよ」


 右手の人差し指を唇に当ておどけつつ、無表情なシシーの顔を上目遣いで覗き込む。

 

「……」


 目線も合わせず、シシーは無反応。二人が去っていった方角を見続け、心の中で「すまない」と謝罪する。何度も。


 自分ではなく、違う女を目で追いかけている。それに気づき、少女はギリッとシシーを睨みつける。


「次はあんたの番。その前に——」


 と、シシーの腕を取り、先ほどとは打って変わって、蕩けるような目つきになる。体を擦り付け、密着させる。


「今日も、ね?」


 それでもシシーは視線を合わせないが、振りほどくこともなく、自転車が去った方角とは逆に、コツコツと石畳の上を歩き出す。


「……」


 重なる二人の影は少しずつ、ベルリンの闇に消えて行く。

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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