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333話

 蛇についてシシーが知っていること。たしか聖書だと、聡明な動物の代表例だった。他には再生、無限、永遠など、いいことばかり。そして。


「……なるほど、蛇か。臆病なのに自分を強く見せようとする。たしかに俺に似ている」


 非常に小胆であること。それは自分にとても当てはまる。強がっているだけ。でもそんな自分も嫌いではない。蛇か、いい表現だ。


 すんなりと話が通じることにメリッサは、少々キョトンとする。必死になって否定されるほうが可愛げがある。けども。


「へぇ、素直に受け入れるんだね。蛇を飼っている、というよりも臓器がその形を成しているようだ。いいね、ノれる感じ」


 どちらかというと、今すぐに脱皮して、本来の自分を曝け出してくれそうで。首元に噛みつかれる? それとも丸呑み? どちらでもいい。引きこもっていられるよりも、随分と魅力的だ。


 ここには二匹の毒の蜂が舞っている。でも今日は。この時、この対局だけは、シシーは当てはまらないでいい、とさえ。


「毒蜂の座はあなたに譲ろう。今の俺は毒蛇だ。それでいい」


 艶やかでしなやかで。そんな美しい存在に俺がなれるのかは知らないけど。たまには地を這って。這いつくばるのもいいこと。ルノルマンカードによると、蛇は『裏切り者』を意味する。それに聖書じゃ悪の象徴だ。なんだか。意味深じゃない?


 やっぱり。あのドゥ・ファンが勝ちを譲るだけの意義がこの子にはあった。自然とメリッサの笑みが溢れる。


「ふふっ。でもそうじゃないだろ? 毒蛇でもいいんだけどね。ところでねぇ、キミってさ——」


 噛みつかれたら嫌だ、怖いと言いながらも、蛇は幸運の象徴だからって財布に蛇柄を使ったりして、美味しいところだけ頂こうとする。そんな傲慢な人間てさ。美しいよね。


 イギリスのヴァイオリニスト、バート・アンブローズは言った。「勝つためにギャンブルをするのではない。次の日もギャンブルができるようにギャンブルをする」と。次? そんな甘い考えはさ。さっさと捨てて。『今』を生きようよ。

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