表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
322/335

322話

 あぁ、自分は罰を受けるために、こんな賭けを続けていたんだ、と。長い道のりだった。許せ、とは言わない。許してもらうためではないから。自分が自己満足を味わうためだけだから。


 すると、スピーカーになっていたグウェンドリンの携帯から、プロフェッサーと呼ばれる者の声。怒りでも悲しみでもなく。淡々と。


《わかった、受け入れよう。今までご苦労様。キミを失うのは痛手だが、感謝している》


 しかし所詮は使い捨て、と割り切った風でもない。労いの色も見せつつ。そこで音声は途切れた。


 ふぅ、とひと段落ついたドゥ・ファンは、今から自由の身、と気持ちの余裕を噛み締めつつ。この先の未来を憂いつつ。この場を作ってくれた、座り込んだ女性に感謝しつつ。


「……すまないな」


 そう、声をかけた。相手のプライドはズタズタかもしれない。が、それもまたいい。コイツのことは嫌いだから。


 一旦の状況はシシーにもようやく落とし込むことはできた。それを踏まえて視線を合わせる。


「……全く。あなたにいいところばかり取られた」


 なにを言われようと。たとえ対局ではルール上は勝とうと。完全に相手のほうが上だった。この締めかたも。カッコいいね。そんな称賛しか。


「それはすまない。もう会うこともないだろう。これもくれてやる。じゃあな」


 そしてシーウェンはルービックリベンジを手渡す。結局、対局中には完成しなかった。それどころかよりひどくなった気もする。普通のやつならそこそこできるのに。やはりケティはすごいな、なんてことを考えながら。


 リベンジ。その名前の通り、リベンジをしなければ。それがシシーにとって、この人物にできる唯一のお返しになる。


「会いに行くよ。どこでなにをする予定なのか教えてくれ。地球の裏側だろうと、必ず」


 面倒だな。嘘でも教えるか、と一瞬だけシーウェンは迷ったが、もうどうでもいいので今後のざっくりとした予定を暴露する。


「……中国に戻って中華屋でもやるさ。料理は好きなんでな。さっきの毒薬、死ぬものではないんだろう?」


 生きていれば。何度だってやり直せる。それでいい。結局、死ぬまでの覚悟は自分にはなかったということ。潮時だった。


 歪んだ表情でグウェンドリンは返答する。


「……えぇ、そう聞いています。それはご安心を。しばらくは体調不良などが続くかもしれませんが」


 個人差があるのでよくわからないけど。死ぬことだけはない、と聞いていた。が、それでも呼吸が荒くなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ