表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
308/335

308話

 時間は日付の変わる前。早朝に戻る。場所はシシーとサーシャの部屋、二段ベッドと机しかないようなシンプルさ。留学生用なので仕方ない。サーシャはどこかへ行った。


 その室内で、眠い目をこすりながら、グウェンドリンは対局前にやらなければいけないことがあった。


「ではこのカードをどうぞ。今夜日付変わって〇時。一五区のでかいビル、って言えばわかると思いますんで、お待ちしております。もしくは部屋も取ってありますので、休みたければそちらで」


 一枚のVIPカードを手渡す。どう考えても外出禁止の時間だけど、まぁそのあたりはなんとかなるでしょう。他にも同じようにどっか行ってる子もいっぱいいるし。そんなわけで、自分の役割の半分は終了。


 下のベッドに制服のまま寝そべりながら受け取ったシシーは、愛おしげに軽くカードにキスをする。


「なるほど。食事などもこのカードでできるわけか。住もうと思えば住めると」


 どうも大元はとんでもないお金持ちらしい。だいたい、お金を持ち過ぎるやつはロクなことを考えない。だがそれはむしろ望んだこと。リターンが大きいことはリスクも大きい。どっちも愛している。


 説明が省けたことは僥倖。まだ口も上手く回らないグウェンドリンからしたら、ありがたいことこの上ない。


「あー、まぁ、そういうことですねぇ。それから、まぁ賭けるものが賭けるものなので、なにかひとつだけ、欲しいものがあれば承ります。毎度、そういった特典も用意されていますので。参加賞、的な」


 それでモチベーションが上がるなら安いもの、ということらしい。次回以降も参加してくれるように。金持ちは太っ腹だ。私にもなにかくれてもいいんですけどねぇ。


「なんでも、ね」


 不敵な笑みで考えを巡らせるシシー。色々ある。ビールを樽で、師であるマスターにプレゼントでもするか。


 あ、と補足を思い出したグウェンドリンは追加で伝える。


「別に物じゃなくても大丈夫です。例えばドイツまでの帰りをプライベートジェット、とか。まぁ、常識の範囲内って感じですかね」


 自分の想像力じゃそれくらいしか思いつかないけど。プライベートジェット。常識かな、これ? 維持費でどれくらいするんだろう。あとで検索してみよう。


「常識か。俺の常識とキミの常識が乖離していても可能なのかい? 俺は欲張りだからね」


 悪いことを思いついた時の顔。シシーは勝つための策をずっと考えていた。もし可能であれば、一パーセントくらいは勝率が上がるかもしれない。


 嫌な予感はする。が、それがグウェンドリンの仕事。


「聞くだけは聞いてみます。ダメだったら諦めてください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ