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302話

 冷たく盤面を見下ろしながらドゥ・ファンは次の手を考える。やり慣れていないなら即、勝負が決まることもある。世界ランカーですら、凡ミスをすることはある。カスパロフですら、大会で七手でリザインしたこともある。ならばアマチュアであれば、という可能性に賭けたが、そうではないらしい。


「それなりに考えはあるか」


 手は破棄して新しい戦略。◆g6。もうすでに通常の流れからは切り離された。ここからは応用力と才能がぶつかる。誰も見たことのない領域へ拡大し、そして棋譜も残ることはない。この場限りの局面を打破する力が求められる。


 ◇ビショップg2。これで相手がビショップをh3に差し込んできても対応できるように。着々とシシーは相手の手を潰しながら、自身の攻撃の準備を進める。


「普段と違うチェス。頭の使う部分がいつもと違う気がするね。これはこれで面白い。もっと大会でも開いてくれたらいいのに」


 駒の初期位置を変えただけで、今までの研究が全て水の泡になりそうな焦燥感。どんな進み方をするのか。未知の体験が始まる。


「お前、フィッシャーランダムは初めてか?」


 なんとなく、ドゥ・ファンは聞いてみたくなった。プロとして稼いでいてもやったことがない人もいる。アマチュアであればさらに少ないだろう。名前すら知らない場合も。


 思い返してみるシシーだが、師であるマスターと変則ルールで何種類かやったことがあった。そのうちのひとつがフィッシャーランダム。


「誰もやりたがらないだろう、相手がいないのであればやらない。コンピューターで検討した程度だ」


 血液の通わない相手はなんでか燃えない。時折、人間には到底思い付かないであろう手を指すのは興味深いが、研究したり、誰でもいいからという時以外は携帯で対局することはなくなった。


 その考え方。ドゥ・ファンにもわからなくはない。むしろ。


「同感だ」


 ◆ナイトf6。常に駒のサポートをしながら、じっくりと展開していく。シシー・リーフェンシュタール。ほとんどやったことないにしては、おそらく筋はいいのだろう。基本のルールに縛られず、だからといって全て捨てるでもなく。重要なところを見極めている。


 フィッシャーランダムと呼ばれるこのルール。初期位置はランダムではあるが、若干の決まりごとは存在する。白のキングはルークに挟まれた位置になければならない。ビショップは色違いに置かなければならない。黒は対称にする。という点。

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