297話
我ながら上出来。あとはあなた達の出番、とグウェンドリンは場を仕切る。
「はい、じゃあギフトビーネさんが先手、ということでいいですかね。それではここで、負けたほうへのペナルティを発表します。今回はなんと……」
無駄に焦らす。さらに「なんと……」ともう一個追加。両者共にさっさと始めろと思っているようだが、少しくらい遊ばせてもらう。こうやって雰囲気を温めるのも仕事のうち。
「……」
「ふふっ」
各々、受け取り方が違う。怒りのボルテージが溜まる者、そしてそれすらもアトラクションとして楽しむ者。当然、前者がドゥ・ファン、後者がシシー。
充分に楽しんだところでグウェンドリンは発表。喜んでくれたらいいけど。
「受けるのは、お二人ではありません。あなた方は無事、ということです。よかったですね。元気に帰れます」
負けても傷ひとつ負うことなく。珍しいこと。
しかし両者は不快感と、それと期待感を見せる。
「なに?」
「へぇ」
いい反応。色々と仕込んだことがしっかりと効力を発揮する時。それがグウェンドリンの生きがいを感じる瞬間。
「まぁ、色々と調査しているわけですよ、こちら側も。なので罰ゲームはですね、お互いの知人にしていただきます」
「おい」
冷ややかにドゥ・ファンが制止する。主催者側の暴走。黙って許可するわけもなく。自分が受けるから、と引き受けていた。それなのに他に被害が飛び火するのであれば、今後信用することはできない。いや、今でもしていないが。
「……そのへんは私に言われても。私は進行役でして。全ての決定権はプロフェッサー達によっちゃうんです。諦めてください」
プロフェッサー『達』。おっと、複数いることがバレちゃったよイケネ。まいっか。
なんだかギスギスとした空間。そのクッションとしてシシーが割り込む。
「まぁまぁ、聞こうじゃないか。ここで辞退した場合はどうなるんだい? ちなみに」
参考までに。そうなってしまったら残念ではあるので、ぜひそうなってはほしくないけども。
対局を拒否。そうなるともちろん、グウェンドリンにとっては言うまでもないことの気もするが。
「負けです。このですね、小瓶があるんですけど、こいつを飲んでもらいます。無味無臭。映画の『ロミオとジュリエット』を模してこんな感じに。ま、あれとは違って命までは取りません。そこは安心してください。ただ、日常生活にかなり支障をきたすでしょうね、程度です」
ポケットから取り出した透明で小さな瓶。その中には半透明な液体が入っている。紹介にあった通り、映画に影響されてこんなことに。




