表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
294/335

294話

 そこはグウェンドリンもツッコまれるところだとは思っていた。というか、セット係とか、そういうの雇わないのかと常日頃から。


「まぁこれは個人的な楽しみとしてやっているだけなのでね。そこまで大規模にする必要もないんです。盤面と、あとは私が個人的に撮影する程度。はい、笑って笑って」


 そして携帯のカメラを二人に向ける。うんうん、映えるなー、この二人。


「……」


 盤を見つめるドゥ・ファン。濁った感情が胸で渦を巻く。いつも。意気揚々と臨むことなどできない。ある意味で見せ物。世界中のチェスプレーヤーが見守る、とは違う。


 二枚ほど撮影したところで、グウェンドリンが訝しむ。


「あらら。ファン、美人が台無しだって」


 仏頂面で、全てを憎んでいるかのようなドゥ・ファン。対局はともかく、こんな茶番にまで付き合う必要も義務もない。


「……いいからさっさと始めろ。時間の無駄だ」


 つれないねぇ、とグウェンドリンは唇を歪ませる。こっちだって予定をキャンセルしてここに来てんのに。空元気で明るく振る舞ってるのに。


「そんじゃまぁ。自己紹介、ってのもいらないかと思いますが一応。アービター兼カメラマンのグウェンドリン・グラシエットです。よろしく」


 ついでにバーテンダー。さらに言えば準備と片付け係。なんでも屋。


「おやおや。大役だね」


 ソファーに座ると、足を組んで頬杖をつくシシー。全くこのやり取りを仕組んだ者の全貌が見えないが、楽しそうなのでまぁいい。なるようになる。


 褒められたら伸びるタイプのグウェンドリンは、そう言って労ってもらえると嬉しい。やる気が湧く。でも控えめに。


「いえいえ。主役のあなた達に比べたら端役ですよ。ちなみに参加賞はそれぞれご用意してあります。もちろん勝ったほうは賞金を差し上げますので、勝利を目指して頑張ってください」


 自分はどっちが勝っても特別手当みたいなものはない。たまにはあってもいいんじゃない? ブラック企業ってこう言うのなのかな。知らないけど。


 普通の対局じゃない、なんてことはとっくにシシーもわかっている。リスクとリターン。それを実現した戯れ。


「太っ腹だね。勝っても負けても欲しいものが貰えるなんて。お金持ちの考えることは豪快だ」


 ここにいるような連中は、この緊張感の中で対局することが目的なんだろうけども。すでに本当に欲しいものは獲得できていて、このあと味わうだけ。


 色々と報酬が多いのも、ワケがある。グウェンドリンはそのあたりの説明を少し詳しく。


「ま、命張ってもらってるわけですから。油田とか、そんな感じでブッとんでなきゃいいそうです。検討しますけど、その裁量はこっちで考えます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ