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270話

「……まぁ、そうなんだけど……」


 気まずくなって、どうすればいいのか惑うヴァージニー。父親のことが好きだった、なんてわかっていたこと。恥ずかしいことなんてないのに。読まれたことが恥ずかしい。すごい迷惑をかけている。今度ここに来る時は手土産持参で来よう。


 しばしの沈黙。いつ帰るのだろう。まさかまた来る予定を立てられていることなど、夢にも見ていないシーウェン。ひとつ妙案を思いつく。


「妹から嫌われればいいんじゃないか? そうすれば、言うことを聞かなくなるんだから、チェスもなにもかも辞める。そうすると父親も落ち着く。ハッピーエンドだ」


 かなりの力技。だが解決策のひとつでもある。


 実はそれはヴァージニーも考えていたこと。一石で三鳥を仕留める案ではある、が同時に心苦しくなることも。


「それは……ちょっとかわいそう、かな。せっかく楽しんでるところでもあるから。あー、どうしよ」


 あまりあの子は友達も多くない。同級生達からしたら、自分達と違う教室で、自分達と同じことができない子というのは中々近づきづらいところもあるのだろう。そういう年頃。自分の時はどうだったっけ。同じ障害の子がいなかったからわからない。


 それは気まぐれ。ただのシーウェンの気まぐれにすぎない。


「私がメタメタに叩きのめそうか? そしたらやる気を失うかもな。勝てないとつまらないだろうから」


 言ってから「あ、やっぱ面倒」と言葉を重ねようとしたが、移り気に「まぁ、それもいいか」なんて軽く考え始める。


 その言葉を理解するのに数秒。つまりそれは……ヴァージニーは予想外のことに飛び起きる。


「……は? シーウェンてチェス、強いの?」


 それは考えてなかった。いや、そんなおかしいことではないけど。なんたってプレー人口は五億人くらいいるって言うし。やってても変じゃない。


 強いか弱いか。それはシーウェンにとって大きな問題ではない。というのも。


「やったことはない。が、シャンチーなら得意だ。シャンチー。知っているか? まぁ、中国のボードゲームだ。チェス・将棋・シャンチーの三つが世界三大ボードゲームとか言われたりしているな」


 中国とベトナムでは国技とも言われている盤上遊戯。最も歴史が古く、最も競技人口が多いとされているが、いつ頃誕生したのかは定まっていない。ルールを変更し、今の状態に落ち着いたのが一一世紀から一二世紀頃という説がある程度。


 チェスと共通する部分もあり、運要素は先手か後手かくらいでしかなく、奪った駒は使えない。そのため終盤に逆転が難しく、将棋と大きく違う点はそこにある。

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