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263話

 幸いなことに、妹はまだそういったことに気づいていない。家族で楽しくお出かけしている、程度にしか考えていないのだろう。チェスも、ネットを駆使してずっと対戦させている。チェスボードで相手の手を父親が再現し、ケティが指した手を携帯に打ち込む係は自分。


 はっきりと言って、ケティは強い。どんどんとレートは上がっていき、明らかに初心者などもういない環境。中級者以上ともなると、疲れて眠くなった時にミスが出て負けることもある。その時は、父は無言で私を睨みつける。休ませろ、ということ。


 やる気がない時は、私が寄り添って言えば、文句がありそうな顔をしつつもとりあえず父の話を聞く。知識を詰め込むだけ詰め込む。しかし、直感型であることもわかっているので、詰め込みすぎないように。その塩梅に気をつけつつ、ガラスでできた像を磨くように、妹というものを形成していく。


 だが、こうして止めることができていない以上、なにを言っても自分も同罪である。いや、罪ではないか。妹は別に私と一緒にいたいという果実を得るために、頑張って木に登っているだけ。しっかりと実という利益があるなら、これは教育なんだ。ケティのためなんだ。


「……おやすみ」


 果たしてこれは悪いこと? 子供の手を引っ張っていくのは、親や姉の仕事でしょう? 巡り巡って、これが将来に結びつくのであれば、むしろ感謝されるべきことなのでは? 


 でも私は本心ではそれをやりたいのだろうか? だって、本当は——


「……私が、お父さんに期待されたかったのに」

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