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250話

「ごちゃごちゃ考えちゃうでしょ、フツー。てかさ、間違いなく才能あるって、あの子。マックス・パークみたいにさ。スピードキューブをやらせるのアリでしょ」


 妹が寝静まった夜。テーブルを取り囲んで家族会議。その話の口火をヴァージニーが切る。二歳で自閉症と診断されたマックス・パークは、指の訓練に七歳頃から始めてすぐに大会で優勝。その後、世界記録をいくつも保持するほどに。


 その彼に比肩する、と睨んだ。そして彼のように『ザ・スピードキューバーズ』というドキュメンタリーまで作られるところまでいけると。その際はヴァージニーも出演し、薦めたのは自分だと高らかに宣言したい。


 意気揚々と夢を語る長女に対し、父親は少し怪訝そう。コーヒーを口に含んで唇を濡らす。


「……まぁ、趣味を見つけてもらって嬉しいけど……」


 もうひと口。そもそも自分がこのルービックキューブを最初に家族に広めていったわけだが、別にそこまで上を目指すために持ち込んだわけもなく。楽しんでくれたら、という希望と、姉の言う通りさらに上のレベルへ、という希望が心の中でぶつかり合う。


 世界を獲るだけの才能は持ち合わせているかもしれない。だが、期待しすぎてそれが原因で嫌いになってほしくない。でもやっぱり本人がやりたいならやらせたい。どうすれば。


 自身は全くやらないので、蚊帳の外にいる母親。楽しそうならなんでもいい派。


「いいんじゃない? 時間がかかっていいんであれば、文字も数字も少しずつ読めるようになってきてるし」


 今の状況に満足。これ以上を望むのは愚の骨頂。


 フランスにおいて、二〇〇五年に『障害者の権利・機会の平等、参加、公民権のための法』というものが施行されており、ディスレクシアも国によって平等な権利が保障された。


 基本的には特殊な学校などに通ったりはせず、まわりの子供達と同じように勉強もする。とはいえ、それぞれの学校に特別学級などが設けられたりと、そういったものを活用しながらで、地域差や学校間の差もあり、完全に浸透しているとは言い難い状況だが。


 その中でもケティは多少なりとも改善の兆候が見られているとのこと。


「無理やりどっちかを選ばせて、結果どっちも悪い方向に進むくらいなら、本人に責任を持たせて選ばせたほうがいいね」


 というのが母親の結論。上の子を育てたことで、自分達の思うように成長していかないことはわかった。グランゼコールもここ数年、口にしたこともない。結局幸せならなんでもいいんだ、ということを学んだ。


「そんなもんかねぇ……」


 そんなこんなで話には特に進展もなく。お開きにして妹の寝ている部屋に入るヴァージニー。間接照明のみ。間取りは同じだが、ベッドや机にはぬいぐるみやら人形やら。自分とは違って女の子、という部屋。私の時には買ってくれなかったのに。ま、シンプルが好きだしいいけど。

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