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249話

 ルービックキューブではよく『手が考える』という言葉が使われる。もはや頭で考えて、というレベルではなく、手が勝手に揃えるという域。というのも有名な『CFOP法』という解法が存在し、それをいかに最短で組み立てるか、というものは反射で行われる。


 この法において、どう動かすかというのはパターン化されており、まずキューブの配置を目で確認して、決められた手順をなぞるだけ。非常にシンプル。そこの考えに至るまでが長い道のりなのだが。


 とはいえ、世界大会のようないかに素早く揃えられるか、という場合は、始まる前に配置を確認する時間が数秒間あり、そこでは頭を使って、手順をシュミレート。そして始まった瞬間に手が勝手に揃える。


 どの色から揃えるのが最短か。しっかりと指は動くか。ある程度趣味で遊んでいるだけでも、二〇秒ほどで揃えるようになるまで、すぐにレベルが上がる人もいる。だが世界大会の猛者ともなると、数秒で揃えるのが当たり前なわけで。その数秒を縮めるために数年、数十年かけて訓練する。


 まだ始めたばかりのケティだが、ぐちゃぐちゃに崩されたキューブをじっくりと観察。そしていじる。その四〇秒後には揃えてテーブルランナーの上に置く。

 

「ねぇ、できた。できた」


 格好だけは世界大会のように。大会では、手を置くとストップウォッチが止まる。そんな機械は家にはないけど。それっぽく振る舞いたい年頃。


 ちなみに測定する機械は安いものだと十ユーロほどで購入できたりする。まぁ、必要ないかと父親は判断して買わなかった。


 呆れるような。驚くような。怖ささえも覚えるような。そんな複雑な表情をヴァージニーは浮かべる。


「……早くない?」


 コツを教えて一週間。もうすでに自分より上手くなっている。自分の数年間が否定される。


 だがそれにしても限度がある。自身はブランクありで平均二〇秒程度。大会などで上位に食い込めるようなものでは全くないが、それなりに一般人としてはいいほうだと思う。ここからが壁。高くて登れない。


 それに引き換え、始めたばかりのケティはすでに『三×三×三』ではなく、そのひとつ上の『四×四×四』、通称『ルービックリベンジ』に挑戦している。前者は最速なら八秒を切ったらしいので、一旦お休みとのこと。


 流石にそこまでいってしまうとケティは家族が誰も手に負えないので、最近は動画を見て研究している。文字はわからなくても、映像と言葉があればなんとか。他にも色々と大道芸的なスキルも磨いているらしく、目隠ししたりジャグリングしながらも。


「色だけだから色々とごちゃごちゃ考えなくていいの。暇つぶしにも、集中力アップにも使えるし」


 アルファベットすら書けないままだが、指を扱うことについては相当に長けている。まるで俯瞰しているように、自分の意思とは勝手に指がキューブを揃えてしまう。その感覚がたまらなく好き。

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