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243話

 四三二五京なんて言われても当然ピンとこないヴァージニー。二度目の思考もたぶん外れてるだろうなと分かりながらも。


「深海を含めた、海にいる生き物の数?」


 海はある意味、宇宙よりも未知の部分が多いとも聞いたことがある。水圧の関係で。それにプランクトンとか。全部ひっくるめたらそれくらいいるかもしれない。だけど、八九八五万とか細かい数字が出ているということは、なにか確定していることなのだろうということはなんとなく。


 コーヒーをソーサーに置いた父親は、おもむろに背後の台の上にある観葉植物……の横に無造作に置いてあった四角い物体を取り出す。


「違う。これだ」


 目の前に差し出されたもの。時々それはヴァージニーの目にも入っていた。カラフルなそれ。


「……ルービックキューブ」


 カチャカチャと回転させながら色を合わせる玩具。なんだか綺麗で触れたことはあっても遊んだことはなかった。やり方はわかっていたが、あまり興味を持てず。


「そう。一番オーソドックスな『三×三×三』のルービックキューブ。これの配置は実に四三二五京を超える。とは言ってもピンとこないだろう? 宇宙誕生から一秒間にひとつ配置を揃えたとしても、全く間に合わない。こんな手のひらに宇宙を超える物体がある」


 わかるようなわからない例を挙げつつ父親は、少々得意げな顔で手渡す。暇な時や考え事をしている時などに指を動かす目的で始めただけのもの。しかしやってみたら深くて面白い。揃え方なども調べたりして、それなりに自信はある。とはいってもアマチュアの範囲内で、だが。


 プレゼントにしては誕生日でもないし、なにより父のお下がり。ヴァージニーに不満はなきにしもあらず。


「これで世界一を目指せってこと?」


 受け取った左手でクルクルとボールのように回してみる。右手はトーストを支える。興味は正直ない。いつだったか、当時の自分と大差ないくらいの年齢の少年が、わずか数秒で揃えた動画を見たことはあった。すごいな、とは思いつつもそれだけ。自分とは違う世界。


 父親としてはそうなったら嬉しいけど。しかし目指すものではないとは思っている。


「そんなことは言っていない。このルービックキューブ。ただ、全て揃えるのに何手くらい必要だと思う?」


 ただの家族の会話のネタなだけ。深い考えはないが、自己というものを確立しだした娘に対して、こういう世界もある、と教える程度のこと。テレビの子供向け番組、くらいに気楽に聞いてほしい。


 現在、色合いがめちゃくちゃなキューブ。しかし、こんな感じのものを少年は高速で動かしながら数秒で揃えていたわけで。となるとヴァージニーはだいたいの数字を計算した。


「五……いや、四〇くらい?」


 あの数秒で何回動かしていたのかはわからない。動体視力で追えるようなものではなかった。というか、なにをもって一回とするのかという基準もよくわからない。

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