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238話
毎日ドイツや各欧州諸国を旅している高速列車ICE。その日も午後一九時にドイツからの乗客を乗せてここ、華の都パリへ。
ゾロゾロとキャリーケースを引きながら降りてくる乗客に紛れ、ひと際スタイルのいい女性。ジャケットからマフラーから黒一色でまとめつつも、バレエシューズや眼鏡などに差し色で赤をチョイス。センスも光る。
「……ようやくついた。ふふ、まさか来るとは思ってもいないでしょ」
そう呟いたララ・ロイヴェリク。到着記念にパリ東駅構内のコンコースで自撮りしつつ。駅ナカには花屋やアロマのブティックなどもあるため、そちらも少し見つつ。ドイツ風のパンも売っていたが、そもそも旅行なのでドイツの色はできるだけなくす方向で。
「驚くかなー。いや、シシーのことだから『あぁ、来てたの』くらいで終わりそう。それはそれで悔しいか……」
悶々としつつ、目に飛び込んできたのは、高級な下着のブティック。駅でも買えるのか、と足を止めてまた悶々。
「……少し見てみようかな……」
誰に言い訳するでもないが。キョロキョロとまわりを確認しつつ、店内へ入っていった。




