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197話

 顔。そう言われてサーシャの脳裏に滲んでくるものは、見たことのない泣き顔ばかり。胸元に触れる。


「……笑ってる、かな。それくらいしか知らな——」


「はい嘘」


 先ほどから言葉を遮ってフェリシタスの言葉が挟まる。ちょっとした怒りも混じっていそう。


 正解。心の中で謝るサーシャ。そう、嘘だ。もう笑顔は思い出せない。


「……どうしてわかったの?」


「嘘つく人は胸元とか耳とか。そういうとこ触る。って授業でやってた」


 一応、優等生なもんで、とフェリシタスは付け足す。酒タバコどころか売春まで手を染めているが。優等生ということにはなっている。一応ね。


「……まいったね」


 結局のところ。自分はフェリシタスには敵わない。サーシャは観念する。バレちゃった、と告白したら、少しだけ。ほんの少しだけリディアが笑った気がした。


 胸につっかえていたこと。なんとなく流れ落ちていった気がする。スッキリしたフェリシタス。携帯を覗き込む。


「まぁそういうワケだから。これはもうおしまい。おしまいにしなくちゃいけない。間違ってた。削除」


 決めたら早い。これでこちらからかけられない。向こうからきたら丁寧に断ろう。申し訳ないって。


 しかし反対にモヤモヤが残るサーシャ。最初に辞めようとした時、拒んだ人がいた。


「自分で言ってなかったっけ? 待ってる人達がいるからダメ、とか」


 そのせいで延長になったわけで。まぁ、自分も『必要とされたい』と思って延長したから。人のことは言えないけど。


 痛いところを突かれた形のフェリシタス。「うっ」と心臓がチクリと痛む。


「だからごめんて。ちょっと……浅はかだった……」


 なんであんなことを言ってしまったのだろうか。なにも考えてなかった。この子のこと。反省。猛反省。うん、反省終了。切り替え。


 少しの寂しさと。少しの充足感。少しの申し訳なさ。サーシャを必要としてくれている人達に対して。それに、それらを受け止め切ることができれば。その人達は他の子に手を出さずにいられるのでは。そんなことも考える。自分を過大評価しすぎかな。


「でもどうしよっか。どうやってお金稼ごう。他に方法知らないんだよね」


 年齢的に普通に働くのは無理。働けても、ミニジョブ程度の給料では医療費など稼げない。


 そう言われてしまうと、代替案を持っていなかったフェリシタスは、黙ってしまう。そして瞑想。一分後。


「……チェスで稼ぐ、ってのはどう? リディアも喜ぶ、かもね」


 エンターテインメント的な世界なら。一攫千金が。もしかしたら。てか、それしか今は出てこない。

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