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194話

 ここ最近、少し余裕が出てきたな、とサーシャは不思議でしょうがない。それでも毎日、何人も相手をしているのだが、その数が半分ほどに減った。需要が減ったのかな、と少し悲しんでいたら、


「流石に減らした。リディアも大事だけど。あんたも自分を大事にしなさい」


 とフェリシタスに怒られてしまった。なんだか姉ができたみたいで、少し嬉しかった。


 とはいえ。空いた時間というは不安が押し寄せてくるもので。今、この瞬間に稼げたのではないか、とか、本当に必要としてくれているのだろうか、とか無駄に考えてしまう。それでも仕事に入ると変わらず、むしろ予約が取りづらくなったことで、より密に愛してくれる人も多かった。


 だとすると、その空いた時間はどうしよう。公園で、カフェでボーッとするのもいいけれど。サーシャは頭を悩ませたが、一番の有効活用は、リディアが起きてきた時のために。もっとチェスを勉強しておかないと、という結論に達した。


 以前であれば、関する本も「ここからここまで」と買うことをしていただろう。だが、今はそんなお金があれば治療費にまわす。なら図書館。大きな図書館であれば、それこそ数多くある。研究者達に感謝し、読み耽る日々を過ごした。


 フェリシタスに会う回数も減った。会ってももちろん行為はなくて。一緒にただ添い寝をするだけで。タバコもお酒も最近はやめたらしい。サーシャとしても、心が許せる、安らぎの時間。


 そしてたくさんの人に求められて。もうリディアの悲しい顔は見えない。悲しい、というか、なにも。浮かび上がらない。愛想を尽かされちゃったのかな、となんだか微笑む。それならそれで。やることは変わらないし、大事に想っていることも。なにも。変わらない。


 相変わらず、そのリディアは病院で眠り続けているらしい。お金は支援されている、ということになっているので、フェリシタスの口座から引かれる。もし亡くなったら、それも終わる。だから、減っていっている今は生き続けているということ。それだけでいい。


「……今日はいい天気だ」


 珍しくフェリシタスから誘われたサーシャは、ホテルでことを済ます。ずっと我慢していたからか、かなり激しく、だが傷つけたりそういうことではなく、貪るように体を重ねた。なんだか懐かしさと、落ち着く居心地の良さ。お互いに心から求め合った。


 そんなフェリシタスが荒い息づかいで唐突に天気のことなどを言い出した。なのでサーシャも「?」と目が点になる。だって今日は——


「雨、だよ。それも結構な」


 伝えると、ぐったりしつつ「……そっか」と返された。学業が忙しいらしく、性欲の我慢と重なって頭が正常に働かない、とのこと。それなりに歴史のある学校かつ優等生、というのは心身に疲労をもたらすらしい。ゆえにサーシャに甘えたくなった模様。

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