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159話

「僕もダメだと思ったし、言ったんだけどね。でもほら、ルールでは『お互いに了承すればなんでもオッケー』でしょ? 決めるのはキミじゃないよ、コンラート君だ」


 被せるように、その人物は自由な理論を押し付ける。まぁ、不戦敗でも別に? いいけど、できたら勝負したいし、勝ちたい。シシーからご褒美がもらえるから。


 場の音声は流れていないが、ネット上でも若干ざわつき出す。


 《あれは前回負けたヤツでは?》


 《絶対違うじゃん。本人はどこ?》


 《なんか面白いことになってる》


 賛否両論だが、決めるのももちろん彼らではない。コンラート次第。賭けの対象でもあるが、これも非公式ゆえ。公式でやれば、今後一切の大会参加は不可能になる可能性もある。


 こんな状況だが、どっちに転んでも面白いので、その人物は場を荒らす。


「で? どうする? どっちでもいいよ? まぁバラしちゃうと、僕はティック・タック・トゥだ。裏の賭け金も一〇万ユーロ、あるよ」


 正体もバラす。初戦で負けた相手。本来なら資格はもうないが、色々あってここにいる。今だけ、許されるなら『丸罰ゲーム』は『毒蜂』になる。


 金額に釣られて、というわけではない。そもそも、認めずに不戦勝を選べばもらえる大金。対局など必要ない。しかし。コンラートは。


「……おかしいところはいくつもありますが、あなたは今、毒蜂だ。問題ありません。やりましょう」


 再度握手。対局成立。ティック・タック・トゥ。おそらく同じくらいの年齢。だとすれば、彼……彼女? どちらかはわからないが、ユース選手権で勝ち上がった自分が、負けるわけにはいかない。隠れた実力者なら、いい同年代のライバルになる。


 ほっ、と戯けてサーシャは肩をすくめた。


「助かるよ。彼女には僕から強く言っておくからさ。必要があれば、対局場所を後日設けてもいい。それくらいはさせるよ。彼女のワガママなんだからね」


 目の前の少年の真っすぐさに、闇を抱えまくりのサーシャは胸が痛いし、眩くて目が眩む。できる限りの配慮はしなければ。


 ということは、本物とも対局できる。ある意味で美味しい。コンラートとしてはかなりのイレギュラーな事態だが、悪い方向にはいっていない、と確信した。勝つことも重要だが、この先プロになった後のことも考えて、色々な経験を積む。大事なことだ。


「ありがとうございます。ぜひ、いつでもいいので対局をお願いします、とお伝えください」


 モチベーションは万全。今は相手、ティック・タック・トゥを見据える。この対局で戦えるのはこの人物。一旦、毒蜂は忘れよう。

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