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150話

「……どちらが勝つと思いますか?」


 そう聞いてきたのはカシュメランの子。予想だと力量はほぼ互角。だとすると分けるのは、駒の動かし方から見えるこの先を読む力。

 

「お嬢ちゃんの勝ち。大したもんだよ」


 と、静かな子の肩を叩く。声から察するにまだ一七、八というところ。実際、それでここまで老獪に指しつつ、罠を何重にも張り巡らせている。久しぶりにこれほどの指し手と会えた。だが、この指し方には覚えがある。いや、間違いない。忌まわしく記憶に残るあの男。


「大会の参加者?」


 そうこの子から聞かれたが、あぁ、そういえば今やってるんだっけ。懐かしいね、昔は出たし、勝ったりもした。


「あんたの師匠に聞いてみな。あたしはよくここいらにいるからね」


 この子はこの先、名前を聞くことになるかもしれない。たしか、騒がしい方が「シシー」と呼んでいた。覚えておこう。だが、それよりも気になるのは、この騒がしい方。


「……ん? なに?」


 声でわかる不機嫌。


 なにか、ズレたバランスを感じる。攻め方と守り方。純度一〇〇の攻めでも守りでもない。良く言えば流動的、悪くいえば濁り。境界線が曖昧。それがチェスに出ている気がする。もちろん、絶対に悪いわけではない。良く働くこともある。だが、この子には合っていない。失敗したプースカフェスタイルのカクテルのような。


「……いいや、なんでも?」


 酒のことを考えていたら飲みたくなってしまった。目的地に着く前に一杯ひっかけよう。さっさとズラかる。さて、エサは蒔いた。数日間は楽しいことになるかな。


 足取りは最初よりもより軽やか。明日以降、久々にチェスを指すことになるかもしれない。まだまだ世代交代なんてさせやしない。バキッと叩き折ってやるのも大人の仕事。骨は折れてから太くなる。まぁ、彼女達のことは実はどうでもいい。自分が楽しいほうが大事でしょ?

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