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137話
彼女にとっては光のない世界、とは言っても、光というものがなんなのかもよくわからないので、闇と言われてもこれまたわからない。ならば、光とはどんなものか、と他の人に聞いても「なんか光ってるもの」という答えだけが返ってくる。
検索をかければきっと、物理的だったり論理的には説明してくれるのだろうが、はたしてそれがわかったところで、「ふーん」と言って終わるだろう。それならベルリンの美味しいレストランでも調べたほうが有益だ。彼女にとって、そんな面倒な世界よりは、キングを目指して策を練る世界のほうが合っていた。
「不必要なものは見る価値がない」
それがその女性のポリシーでもあるため、盲目というものはハンデにはならない。ほんの少しだけ美味しいものと、やはりお酒と、それと競馬。走っている馬というものも当然見たことはないが、ギャンブルは好きだ。
ブッダの言葉でこんな有名なものがある。
《幸福な道などない。歩みこそ幸福》
ならば、盲目のまま歩くしかないのだ。あ、杖は持ってだけど。




