117話
慌ててアリカが止めに入った。お互い、毛布ははだけてしまった。傷だらけの肌が露出する。
「ちょっとちょっと。アリカが言うのもなんだけどさ。無理でしょ。どう考えても。腐ってる」
元はといえば自分の家のもの。自分の責任。いつ買ったのかもわからない野菜。農家の人ごめんなさい。ジルフィアといると、こんなことも考えてしまう。
真顔でなんの疑いもなく、野菜スープでも煮込もうか、と考えていたジルフィアは、作業をストップさせられて目を丸くした。
「胃に入ればなんでも一緒でしょ? あ、栄養とか気にするタイプ?」
大丈夫、トマトは万能だから、となぜか自信満々に作業再開。適当に切って鍋に放り込み、水や調味料も適当。そもそも、なんの調味料なのかもわからないが、あったから投入した。
「……ひとりで食べてね。アリカはエナドリでいい……」
冷蔵庫に常備してあるエナジードリンクをひとつ開けて飲む。喉元を過ぎる爽快感と、ガツンとくるガラナのテイスト。覚醒する脳が、昨日までになかったこの家の異物を再度診断する。
(見た目は普通なのに……色々ぶっ飛んでる。一体どんな生活をしてりゃ、こうなるんだ?)
学院に通っているということは、日常生活は送れているということ。アリカも褒められたものではないが、制服以外は目立たないようにしている。というか、私服可の学校なんだから、服装についてとやかく言われる筋合いはない。
ほぼ水のような野菜スープが完成すると、ジルフィアはマグカップで掬い、飲む。
「うん、ちょっとケチャップが足りないかな?」




