表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/335

115話

 しかし、ケロっとした顔でジルフィアは否定する。


「いや? ルールがわかる程度。オープニングとかディフェンスとかあるみたいだけど、覚えるのはともかく実戦で使うには経験が必要だね」


 ははは、と白い歯を見せる。チェスはそんな甘いボードゲームではない。


 アリカは頭を揺らす。断片的な内容が積み木のように重なり、形となる。が、おかしい。


「……全然話が見えないけど、どうやって勝つつもりなのかね。それともあんたが死ぬ気、ってんなら止めはしない」


 会って数時間の関係。少し惜しい気もするが、死ぬなら今のうちに。感情が移入なんてしないだろうけど、早いに越したことはない。


 液晶のシシーに頬ずり。ジルフィアの顔がその灯りに照らされる。


「死ぬ……それもありかもね。うん、悪くない。でも、目的は彼女にギリギリの勝負を楽しんでもらうことだからね。そして絶望する姿」


 心酔しているのか、それにしては考え方が過激で極端。自分でも理解はしているが、やめられない。


 ボルテージの上がっていくジルフィアとは違い、直接矢面に立つことはないアリカは、少しヤキモキしてきた。


「具体的には? アリカはなにをしたらいいの? 注文があった毒を作ればいいだけ?」


 自身にできることなど、毒以外にはなにもない。人とのコミュニケーション力も、人脈もない。この人物はその毒のためだけに、アリカを探し求めていたってこと? そう考えると、少し自慢げになる。毒で繋がる縁もあるということ。


「まぁ、そうなるかな。もっと手伝ってくれたら嬉しいけど」


 期待はしない。ジルフィアはひとりでもやるし、やれると思っている。真っ向勝負ではなく、色々と小細工をすれば、チェス『っぽいもの』で相手を追い詰めることができる。


 だが、選ばれた、という気と体の緩みにより、アリカは上機嫌だ。


「ものによる。言ってみなよ」


 本来ならこんなサービスはしない。ただの気まぐれ。気まぐれでこんなことを言ってしまうくらいには、気分がハイになっている。


 どうしよっかな、とわざとらしく焦らすジルフィアだが、腹づもりは決まっている。


「キミにはシシー・リーフェンシュタールに近づいてもらいたい。できるなら親密な仲に。体の関係になってしまってもかまわない。ね?」


 同調を求めるように、にこやかにスマイル。疑いを知らない、純真無垢な子供のように。


 しかし当のアリカの目は、死んだ魚のようになる。


「……いや、無理言うなって。あの人がそういう趣味があるのか知らないし、もしなれたとして、あんたのお気に入りが、他の女と……そういうこと、するのってどうも思わないの?」


 この人と会話していると、自分がとても真人間に見えてくるのをアリカは確信した。アリカも壊れている。だが、それよりも壊れている人間のおかげで、個性程度の綻びにしか感じられない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ