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110話

「情報を与えすぎたね。会話の中からキミが女性だということはわかっていたよ。それに返信時間。早朝は返ってこない。そして昼過ぎに返ってくる。まるで学校にでも通っているかのようだ」


 ……誰か……いる……! なんで……? 時間……? まさか……メールを介しての雑談は、中身と同時に時間を見ていた……?


「とはいえ、それだけではわからない。なので名前とアドレスを変えて、何度も新規を装った。もちろんキミはバレないように、様々な場所から発送していたけど、まさか同一人物だとは思わなかったみたいだね。追跡機能から確認できたのは、発送元はこのあたりを中心にした半径五キロ以内だということ」


 追跡……? そんな、まさか、そんな断片的な情報から、ここを探り当てた、ということ……? ありえない、追跡システムは穴が多い。機能はしっかり働いていても、人が動いていないということもあるし、不在票も入っていないのに、不在にされることもある。分の悪い賭けの、はず……そのために何度も……?


「若い女性、それでいてこのあたりに住んでいる。毒を製作しているなんて、家族にバレるわけにもいかないだろう。ひとりで暮らしている。学院の生徒だったらいいなと期待はしていたが、その通りであったのはラッキーでしかない。該当したのは二人だけだったからね」


 なに……? なにを、言っているんだ……? なんで……そう、なんで、なんのために? なんで生徒の個人情報を……? アリカがなにかした? なにも、なにも悪いことなんてしていない。悪いのは使っているヤツら! アリカはただ研究を……して、遊んでいるだけ……。


「もうひとりの子は白だった。家の中にもお呼ばれしたが、それらしいものはない。おそらく製作するためには、毒となる生物なりなんなりの、飼育や保存が必要だから。となると、残るはひとり。もちろん、当たりかはわからない。まぁ、一軒家だし、キミのほうが確率は高かったけど」


 もう一度だけ、ドアスコープから覗く。いない。でもいる。アリカを捕まえに? 殺しに? やってきた悪魔が。アリカは悪くない。悪くない。悪いのは、この国のほう。狂っているのは、この世界。膝を抱えて、震えながらその場にうずくまる。


「常に肌を晒さないよう、細心の注意を払っていたね。夏でも長袖で、制服まで改造して。スポーツの授業は休みがちだったけど、そういうことかと今なら納得がいく。毒を持つ生物に噛まれているのかな? 解毒薬の作製には、自らを犠牲にしていたということか」


 早く帰って……! いない、いないから! アリカはいないから! 早く! 遠くへ……! どこかに行って……! お願い……! お願いだから……! アリカに関わらないで……ください……! しばらくは、やめるから……! なに、なにが目的なの……?

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