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109話

 唐突のことで、タイピングをミスしたりもしたが、エンターキーを押す指にも力が籠る。そしてすぐに返信がくる。ありがたい。この興奮を途切れさせたくない。あなたにも興味が出てきたよ。顔が見てみたい。どんな人物なんだろう?


 《身長一七一、体重五五、女》


 非常にシンプルかつ無駄のない答え。しかし、この殺される相手は、少し痩せているが随分とプロポーションのいい女性だ。もったいない。様々に楽しめるのに。だが、妄想もできる。自分の毒が、この女性にどう作用するのか。見たい。悶え苦しむ姿が。毒は芸術だが、その被写体も込みで完成する。美しければなお良し。


 その後、数日間で数回のやり取りを終え、発送まで終了。これでこの人物との縁も終わり。にしたくない。アリカの勘が告げている。この人物をもっと知りたい。リスクはある。だからこそ、アリカからのプレゼント。もしもこの謎を解くことができたら。そんな聡明なあなたに会いたい。


 《発送した毒に、ひとつ、あるものを付けさせていただきました。読み解くことができましたら、解毒薬を差し上げます。三日後の正午に、そこでお待ちしております》


 ないならないでいい、と言っていた解毒薬。どうせなら、遊ばせてもらおう。有名なゾディアック暗号。それだけだと有名すぎるので、解き方もわかりやすい。そこをさらにいじる。複雑化したアリカ暗号。果たして、アリカのメッセージに気づいて——


 《そんなものはいらないよ。必要なら今から行こうか?》


「……な……!」


 届いたメールを開き、アリカは驚愕して立ち上がる。どういう……こと? アリカのことを知っている人物……? いや、誰にもこの『毒』のことは言っていない。ハッタリだ。きっと、優位に立とうとしているだけ。さすが。認めただけある。アリカを一瞬だけでもビビらせるなん——


 ビィィィィッ!


「!!」


 家のチャイムが鳴る。そんな……嘘、でしょ? ……いや、なにか荷物が届いたのかもしれない。タイミング、そう、タイミングが運悪く重なっただけ。怖い。無視しようか? ダメだ、もし本当であったら、バレているということになる。


 それに荷物だったらだったで、再配達などというシステムもない。もし送り主がメールの相手だったら。隣人が荷物を預かってしまう。中身がわからない以上、リスクを避けなきゃ。


 まだなにも確定していない。でも本当ならなんで? 悪いことはしていないのに? なんでアリカはこんなことになっている? ただみんなが欲しがる毒を作っていただけなのに? 悪いのは欲した人達じゃないの? ドアスコープを覗き、確認する。誰もいない。イタズラ……か? それならそれで——

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