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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第一章
8/75

8

(知らないの?)


「知らん。なぜ俺が知る前提で言った?」


(交渉能力がうまいから、そう判断した。)


「そうか?」ロードルフ子爵は疑って、しばらくの間で、少し意外なことを言った。


「……だが『貴族』にとって『交渉能力』は『基本』だ。お前のその『ディベート』というのは、ただそれだけじゃないだろうな。」


 口調は怒ってない。質問というより、私は試されているかもしれない。


 それに、「情報」もくれた。


「貴族」にとって「基本」。「交渉能力」は「基本」。


 この一言はつまり「常識」と「価値観」……彼なりの「優しさ」なのか?


 とりあえず、回答しよう。


 (「交渉能力」だけじゃない。「ディベート」は交渉を主題にする「活動」だ。よく「口喧嘩」と「言い争う」ことと間違われるが、全然違う。)


「俺は元々わからんから、印象とかどうでもいい。もっと内容を。」


 (……そうだね。簡単に言えば、ある議題に対して、二組の人が対抗する立場で、「第三者を説得するために」議論することだ。)


「ふん、つまり第三者が大事なのか?」


 わからなかったのに、「議論」ではなく、真っ先にそこをついた。本当にわからなかったの?


 でも……


 (少し違うよ。「第三者を説得する」ことの方が大事だ。もちろん、「議論」も無視してはいけない。)


「どのみち、第三者がいないと、『ディベート』が成立しないわけだろう。」


 (そうだが、もし認識の齟齬そごがあったら、言うこともどこかで勘違いするかもしれない。議論も平行線になる可能性があるから、「定義」をしっかり分かったほうがいいと思うよ。)


「ふん、それも『ディベート』のおかげか?」


 (まあ、そうね。)


 うん?なんだろう。少しうれしい気持ち……


 あ、これは彼の感情だ。影響されている。


「じゃあ、他には?」


 (そうだね。論理的な思考力、情報整理、態度、多方面の視点、価値観等々、これらは必要でありながら、身につけていくという感じ。)


「違う……ディベートについてはもう何となくわかった。聞きたいのはお前が他に何かできるかだ。」


 (あ、なるほど。ごめんなさい、勘違いしてしまった。以上だ。)


「チッ!そういうのいいから、早く言え。」


 うん?


(さっき言った。以上だよ。)


「は?」


 (できることはそれだけ。)


「……ふざけているのか?」


 (違う。どこまで言った方がいいかわからない。それに、全部言い出したくない。)


「なるほど……つまり、俺の『意図』がわかったってことだな。」


 (そうね。)


 ふっとロードルフ子爵は鼻で笑った。態度が悪いが、気持ちの影響があるから、今「楽しい」という気持ちが分かった。


 ロードルフ子爵の意図は「情報」の「交換」だ。


 さっき、貴族の「常識」を教えてくれたから、私も代わりに「ディベート」のことを言ってあげた。


 等価ではない感じがするが、ロードルフ子爵元々概念がないから。


「いいだろう。どう扱うかは少し考えておく。お前は他に何が聞きたいことがあんのか?二週間前の時、たしか何か質問がしたかったんだろうな?」


 ……本当に態度悪いけど、案外律儀なことをする。彼も私と同じく考えたのか。さっきの「情報」のこと。


 (……そうだね。事例の詳細が知りたかったよ。)


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