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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第六章(最終章)
65/75

5

 貴族と騎士たちが城門の前に立っている。


 人数がかなり多くて、一目見ただけで、こちらの人数が不利であることがわかる。


 400……いや、500人ぐらいだろう。


 こちらの方向に向かっている先頭の人が一番偉い人らしい。馬に乗っていて、鎧や召使い、また遠目でもわかるくらい高品質な装備だった。でも、他の騎士は少し貧相な装備だった。


 また、機動力を重視しているだろう。騎兵は多いが、重装備ではない。


 この人数は交渉するつもりか?絶対違うけど、交渉する余地があるなら、交渉したほうがいい……


 双方が一定の距離を取って、あちらから話しかけてきた。


「おやおや!お戻りになりましたね。ロードルフ子爵様。」少し高めで鋭利な声で、何となく気持ち悪い声だった。


「カーベーリ伯爵様。どうしてあなたのような方はここにいらっしゃるでしょうか?ここにお眼鏡に適うものはないでしょう。」


「ほほう、とんでもないです。ロードルフ子爵様。信じられないかもしれませんが、実はあなたの町、『反乱』が起きました!」カーベーリ伯爵らしい人物が両手を広げて、誇張な仕草をした。


「……そうですか。実に大変ですね。」


「反応が薄いですな。信じていないですか?」


「ええ、まあ、いささか信じがたいですね。カーベーリ伯爵様の言論はどこまで――」


「なら、私ぃの部下に証明してあげよう。夜の酒場の客に紛れて聞いていた情報です。ほれ、言ってごらん。」そして、カーベーリ伯爵付近の召使いらしい人物が十日前の酒場のこと、また「とある騎士」の話を言った。そのどれも「行進」のことを指している。


「とある騎士」の話を聞いている時、ロードルフ子爵は少しカイルの方向に見た。あの顔色、「とある騎士」は間違いない彼のことだろう。


 市民の中に他領の人が紛れていて、おかしくないことだ。もしかして騎士の中で今も……


 目の前の問題と隠れている問題、もはや不安しか残らない。


 でも、どうしてロードルフ子爵の心はこんな静かだろう?まるで、何かに開き直っているみたいに……


「どうですか?これで信じられるでしょう。」


「まあ、証人がいれば、信じられ――」話の途中でまた挟まれた。


「でしょう!だから私ぃ、無能のロードルフ子爵様のために、特別に助力しに来ました!どうですか、皆様。私ィ、やさしいでしょう!」彼はまるで強要している感じで、後ろの騎士たちに言った。


「「「「はっ!カーベーリ伯爵様はとてもやさしいです!」」」」後ろの騎士たちは業務みたいに返事した。


「ふふふ、素晴らしい返事でした。」まるで陶酔しているように、カーベーリ伯爵は気味悪い笑顔をしていた。


 こんなので、嬉しいのか……


「しかし、カーベーリ伯爵様の助力はいりません。あなたの気持ちだけ受け取ります。」


「気持ち?」疑問のように、蔑視するように、カーベーリ伯爵様は一瞬で冷たい声に変わって言った。


「ロードルフ子爵様。あなたは何を勘違いしていましたかね?やさしい私ぃが、あなたの『同意』なんか求めていません。大人しく、やさしい私ぃに助けられればそれでいいです。この城門、邪魔ですよ。」


 不快。必ず何か企んでいるのに、気持ち悪い言い方をしている。


「申し訳ございません。門番の騎士はちゃんと躾をしますので、カーベーリ伯爵様はここでお帰りください。『反乱』でも私自身が処理できますので。」


「もう一度言わせないでください……ロードルフ子爵様。やさしい私ぃが助けてあげますから。『貴族』に反抗するような反逆分子ぃを殺してあげるのです。」


「では、私ももう一度言います。カーベーリ伯爵様の助力はいりません。早くお帰りください。」


「ふーん……」


 カーベーリ伯爵はこちらの方向、もっと後ろの方――鉄格子の方向を見ていたようだ。


 彼は「おや?」と変に気持ち悪い声で言った。そして、すぐ「弓兵、構え。」と言った。


 ロードルフ子爵は「盾を構え!」と命令した。前の人は盾を構えた。


 一瞬で一触即発の状況、矢が飛んでくるだろうか……


 でも、私の心配がただの杞憂で、カーベーリ伯爵はすぐ「弓兵、おろせ」と言った。


 ロードルフ子爵もおろせと言った。


 脅迫、それとも慈悲?あ、いや……ただ距離が足りなかっただけだろう。


 それと、鉄格子があるから、命中しづらいかもしれない。矢も無限ではないし……鉄格子は一種の保護だから。


「ふーむ……おかしいですな。あなたはその『犯罪者』を逮捕したでしょう。どうして生きていますかね?帰る途中、私ぃの騎士と出会ったことはないですか?処刑の手助けをしたはずですが。」


「……自称騎士の賊なら、出会いましたが。」まるで反撃でもするつもりのように嫌な言葉だが――


「そうですか、そうですか。実に残念です。きっと逃げたのでしょう。使えない騎士ですな。」


 まったく信じていないのに、全然残念がっていない。何の気持ちもこもっていない言葉……怖い。


「では、生きている理由がわかりましたが、どうして『犯罪者』を庇うつもりですかね?ロードルフ子爵様。」


「こちらこそ聞きたいです。何で――」


「今は私ぃが聞いている。答えろ!」


 ずっとこちらの話を聞いてくれない。聞いていても、無視しているような感じ。これが「貴族」……


「……『犯罪者』ではなく、『容疑者』ですから。」


「ふーん、よくわかりませんが、とりあえずあなたは庇うつもりですね?」


 “引っ込んでろ”、言われた通りに「心の空間」に逃げ込んでいた。


 “「ああ、そう――」”しばらくの間、何も言わなかったロードルフ子爵が声を出した途端、「全軍!突撃!」という声も一緒に響いた。


「心の空間」に隠れていたのに、凄まじい状況が発生したのがわかっている。


 “「『犯罪者』を庇う『貴族』なんていません!今目の前にいるやつらは全員『犯罪者』だ!全員殺せ!」”


 理不尽だ……


 “「すぐ槍と盾を中心に五人の小隊編成!こちらに向かってきたやつらを殺せ!騎兵が来たら槍で転ばせ!人を下ろせ!」”


 “「「「はっ!」」」”陣形を取った後、殺し合いが始まった。


 ****


 始めはロードルフ子爵が何とか陣形で戦況を保ちつつ、相手の兵力を削った。でも、人数の問題で、状況がどんどん不利になっている。最初死んでいたのは、昨日重傷を負った騎士何名だ。


 双方の死亡人数、大体5:30……


 そして、相手は“「弓兵も進め!」”と言った。


 “「もし矢が飛んで来たら、必ず盾の後ろに隠れろ!」”


 “「「「はっ!」」」”


 鎧があるとはいえ、隙間に刺さることもありえる。盾があるとはいえ、頭部に刺さったら死ぬ。だから、時々矢が飛んできた時、ほとんどの騎士が手で頭部を守りながら戦っていた。


 ロードルフ子爵とカイルは小さな盾を持っているため、守る面積も大きくなる。


 たぶん、装備と訓練の精度が違うだろうか?今こちらの騎士はただ数名死んだが、対して相手の騎士は50名くらいも死んだ。でも、やはり喜べない。


 早く終わってほしい……もう誰も死なないように、早く終わってほしい……


 “「騎兵!早くあの陣形をかき乱せ!」”


 “「陣形を保て!騎兵は騎兵を牽制し、槍兵が馬の脚を狙え!人を下ろせば、簡単に殺せる!」”


 “「「「はっ!」」」”


 こっちが死んだ騎士はもう十数名になった……そんなに明晰ではないが、戦況が不利になっているのはわかっている。早く終わってほしい……


 双方の死亡人数、大体10:70……


 トン!


 うっ!何本の矢がロードルフ子爵の盾に飛んできて、強い衝撃を受けた。手が痛かった。「心の空間」に隠れても、感覚が遮断しても、薄々感じた痛みだ……怖い……


 早く終わってほしい……誰も死なないように、早く終わってほしい……


 “「何をやっている!早くアイツらを殺せ!ただの『犯罪者』だ!」”


 “「こちらは負けてない!練度はこちらの方が上だ!ひるむな!」”


 “「「はっ!」」”ロードルフ子爵の視野によって、戦況を把握している。


 双方の死亡人数は大体15:100だろう。人数が不利な状況が変わらない……


 あ、でも、飛んできた矢が少なくなってきた――


 “「弓兵!矢がなくなったら、剣を持って攻撃しろ!何をやっている!攻撃だ!」” きっといずれ矢が飛んでこないと思ったら、相手はすぐ命令した。


 “「怯むな!人数が不利でも負けていない!陣形の人数が足りない場合牽制しろ!仲間の援助を待つんだ!」”


 “「「「はっ!」」」”


 ああ――うああ――と叫び声が聞こえる。


 鮮明ではないが、聞こえる。


 頼む、早く終わって……


 死亡人数、20:150……25:200……確かに戦況がどんどん良くなっていた……


 “「りょ、領主様!こっちの騎兵が全滅!相手の騎兵はまだ五名――」”とカイルが言った。


 “「相手の矢もなくなった!槍兵はちゃんと陣形を保て!ある程度の隙間を開けて、来たらすぐ馬の脚を狙え!」”


 ここでロードルフ子爵も地面に落ちた槍を持って、向かってきた一人の騎兵とやり合っていた。


 キン……カン……私には絶対直視できないが、ロードルフ子爵は要害を守りつつ、一人の騎兵を下馬させて、殺した。


 う……怖い……怖い……無事であってほしい、無事であってほしい……頼む!


 そして、相手の騎兵が陣形を壊せないため、逆に一人ずついなくなった。


 “「役立たず!この人数を相手に全員も殺せないのか!一体何をやっているんだ!あんな陣形なんてこうすればいいんだよ!」”そして、カーベーリ伯爵が自ら出てきた。


 彼も馬に乗っているから、騎兵がまだ一人……しかも、彼と馬も重装備……


 彼は乱暴なやり方ですぐこちらの騎士たちの陣形を崩し、何名の騎士を殺した。


 30:210……


 “「鉄格子の周りに囲め!その周りで陣形を取って牽制しろ!カーベーリ伯爵は俺がやる!」”ロードルフ子爵は言いながら、大きな動きがなかった。


 “「俺をなめるなよ!」”カーベーリ伯爵がロードルフ子爵の声を聞いたようで、すぐ向かってきて、狙うつもりのようだ。


 “「陣形を崩すな!」” そして、二人が何度もやり合って、馬が来たらすぐ横に避けて、武器と武器でぶつかる。


 “「……グっ!」”とロードルフ子爵は強い衝撃とともに、地面に転んだ。


 “「は!たかが子爵が俺をやるだと?ふざ――」”


 “「槍兵!今だ!囲め!アイツを馬から降ろせ!」”


 “「「はっ!」」”六名ほどの槍兵が命令通りに一瞬で囲んで、馬の行動を制限し、カーベーリ伯爵を下ろした。


 “「……なっ!」”降ろされた後、ロードルフ子爵はすぐ槍でカーベーリ伯爵の頭部を狙って、強い鈍撃の音が響いた。そして、カーベーリ伯爵は気絶した。


 “「……カーベーリ伯爵はもう捕まった!この戦いが終わった!命が惜しけりゃ、武器を下ろせ!」”


 相手の騎士、ロードルフ子爵の言われた通り、全員武器を下ろした。大将が捕まったら、戦意がなくなったようだ。


 ……終わった?何となく、戦いが終わったような気がする。


 あっけなく終わったから、私はすぐ「心の空間」から出てきた。


 (……本当に終わった?)と聞いた。


 恐らくあっけなく終わったからの不安だろう。虚しさとまた何か起こるじゃないかという不安……余計な不安が自分の思考にまとまっている。


「ああ、戦いなら終わった……だが、計画がまだだ。」ロードルフ子爵は少し息が上がっている。それに、もう暗号で伝えるつもりがなかった。疲れていただろう。


 (本当に、大丈夫なのか?)


「何?お前はもっと何かを期待していたのか?裏切りとか?それとも戦い続けるとか?ふん。戦いはこういうものだよ。

 昔も賊を殺し終わった時、虚しい感じだけだった。同じことさ。」


 (じゃあ、カーベーリ伯爵は?どうする?)


「殺せない。殺したら、アイツの領地が問題になる。俺も『反逆者』の烙印にされるかもしれない。」


 (すぐ殺すとか言う……どうするのって言っているのに。)


「はっ!そんなの知らん!君の方が一番わかるんじゃない?」


 (そんなの……)


「とりあえず、しばらく牢屋に入れておく。どうするか後で考える。元々こいつについて何も考えていない。」


 (そうね……)


「良かったな。こいつの騎士の練度が低くて。でもこれも王国が腐っている証拠だ……皮肉だな。」


 ロードルフ子爵の視野によって、色んな人が死んだ。気持ち悪い……私の計画のせいで……


 それに、こちらの騎士も結構死んでいた。


 (ごめん。君の騎士が……)


「はあ……死んだ人は生き返らない。進むしかない。引きずられるな。」


 (……うん。)


 そして、ロードルフ子爵はカイルのところに行った。


「カイル隊長。」


「はっ!」


「あいつらを拘束し終わったら、すぐ守備隊の人と連絡しろ!」


「はっ!ではすぐ伝令をします!」


「いや、お前がやれ。こいつらは俺が監視する!」


「でも……」


「俺は警戒をゆるんでいない。心配無用だ。」


「はっ!わかりました!」


 そして、全員拘束し終わって、カイルは町の中に入った。


 守備隊を待っている間、ロードルフ子爵は静かに鉄格子の付近に近づいた。


 ……もしかして、メリー伯爵は裏切ったとか、そういうこと――


 でも、私の不安を裏腹に、メリー伯爵は安心と優しい笑顔を見せた。それはロードルフ子爵が生き残ったことに、また自分が生き残ったことに安心な微笑みだった。


「メリー様。」


「何?」


「実はこの五日間、俺はずっと……」


 ↑……ずっと君を疑っていた。


「疑っていた、ですね?ふふ、言わなくてもよろしいですわ。わかっていますもの。」鉄格子の中にいるメリー伯爵は少し悲しみの笑顔を見せた。


「だって、わたくしもずっと……君はわたくしを王族に売ろうじゃないかと心配していましたわ。」


「……そうか。」ロードルフ子爵の口角が上げた感じがした。


 自分の顔が見えない。でも、きっと笑顔だろう。


 やはりこの二人、仲がいい。仲が良すぎで、まるで「家族」みたいに。


 そして、二人は「どうしてだろう……」「何ででしょうね……」と同時に話し、


「「俺・わたくしはずっと、君のことを『母』・『息子』と呼びたくなるな(わ)」」と、また同じタイミングで言った。


「おかしいだね。」「おかしいでしょう。」と言い終わったら、二人は「ふふ」、「はは」と笑っていた。


 もはや、ただの気が合うレベルじゃない。


 母・息子……きっと私が知らない10年の間に、二人がお互いに何かを感じていただろう。


 良かった。本当に良かった。


 そして一瞬だけ――


 ****


 “まるで、身体が浮いている。”“見ていたわけではない。”“感じたのだ。”


 病院で。


 一人の女性がベッドの上に眠っているような姿だった。


 その女性の隣には、「家族」、「部活の先輩・友達」、「親友」が立っていた。


 “「家族」は、パパ。”


 “「部活の先輩・友達」は、伊原先輩と翔君。”


 “「親友」は、良奈ちゃん。”


 身体にもはや異常はない。ただ、意識がずっと戻らなかった。


 三年間……この人たちずっと欠かさず、お見舞いしに来た。もちろん悲しい雰囲気、重い雰囲気だった。だが、この人たちがずっと願っているのは、「意識」が戻ること。


 “私が親愛なる人たちは、ずっと私のことを待っていた。”


「僕は……『部長』の様子を見てくる。」


 他の三人は頷き、一人が部屋から出ていった。


 またたくさん、話したいことがある、またたくさん、楽しいことがしたい。だから、さなちゃん、早く起きて……


 起きて……


 ”起きたい。私も、帰りたい!”


 一人の女性がベッドの上に眠っているような姿だった。


 その女性は、「黒井さな子」であった。


 “私は、ここに帰らなきゃ!”


 ****


 一瞬だけ――私は「現実」を見た。


「おい。」ロードルフ子爵も感じただろう。


 (ああ。一瞬だけ、君から離れたね。)


「ええ。そういえば、お前は最初、何のためにここにいたと聞いたな。もしかして、君は俺たちのために、ここにいたかもな。」


 (はは……そうかもしれないね!)


「なら、計画が終わるまで、あと少しだ。」


 (うん。やり遂げよう!)


 予想外の戦いが終わった。


 恐らく、計画が終わる時、お別れの時間だろう。


 つまり、さようならの時間はあと少しだ。

メリー伯爵のヒミツ3:

実は、騎士好き。


使用人たちのヒミツ2(レイヤー):

実は、勘がいい。



ロードルフ子爵の屋敷内。メリー伯爵とレイヤー二人がよく話し合っていた。


「――と、そんな感じですわ。どうでしょうか。」

「すごいと思います!でも……これ、騎士にかかわるでしょう?ロードルフ様が受けるかどうか……」

「ぜひやってほしいですわ!そして良ければ、騎士団の訓練も見させてほしいですわ!」

「それは、どうしてですか?」

「効果があるかどうか知らせてほしいですから!自分の目で確認した方がいいでしょう!」

ロードルフの屋敷に行くまで、メリーはよく寄り道をする。彼女は騎士の訓練の光景を見るのが密かに楽しんでいる。


「……そう、ですか。」そして、レイヤーが気付いた。

たぶん、メリー伯爵は効果より、見たかっただけということを。


少し会話に夢中しすぎて、あとのことを考えていない二人である。

(騎士の訓練は機密である。)


メリー伯爵のヒミツはここで終わります!

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この話、とても難産でした……初めの案が結構暴走しました。

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