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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第六章(最終章)
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2

 深夜。


 もうすぐ出発するところだ。


 ロードルフ子爵は二階の広い空間で、使用人たち全員に別れの言葉を告げている。たとえ仮逮捕でも、危険性があるから。


 そして、ロードルフ子爵がこの家を出たら、芝居が開始する。


「ロードルフ様……やはりここに残ってはいけないでしょうか?」とレイヤーが心配な顔で言った。


「ダメだ。屋敷を出たら、誰かに見られている可能性がある。危険性がある限り、ここに残らない方がいい。」


 王族のスパイ、他の貴族の間者……いるかどうかわからないが、用心したほうがいいと、計画の時に言った。


 レイヤーは矛盾な気持ちがいっぱいだろう。何が言いたがっていても、何も言えない表情だった。


「君たちは大事な人だ。死んでほしくない……」


「ロードルフ様……!」「「「「「ロードルフ子爵様……!」」」」」「子爵様……」


「執事がいるとは言え、市民たちは何をしてくるかわからない。この領地もメリー様の領地だけ隣接しているわけではない……だから、計画通りに進む。わかったか?」


 使用人たち全員心配な顔で何も言わなかった。説得力があるから。


「……返事は?」


 全員、「はい。わかりました。」と返事した。


「執事、君は騎士を統率する経験があるから、市民たちのほうは任せた。」


「かしこまりました。しかし、市民の素養は騎士と違って、少々不安が……」


 ロードルフ子爵はふんと嗤って、「そうだな。もしものために、一つの策を教えよう。」と言った。


「それは……ご教授していただけると助かります。」


「大事なのは人命だ。本当に制御できないと思ったら、標的をこの屋敷に転移しろ。そして、好きなように暴れてもいい。」


 これを聞いて、執事だけじゃなく、使用人たち全員驚いた顔をしている。


「それは……だから、ここに残らない方がいいとおっしゃいましたか。子爵様。」


「ふん。これでちゃんとわかったな。それに俺、この屋敷とこの身分……好きじゃない。壊れたほうが清々する。」


「ロードルフ様……」何となく、全員呼んだ気がする。


「なんだ。」ロードルフ子爵は全員を制止するように、右手を前に出した。


 そして、まるで代表するように、レイヤーが前に出てこう言った。


「ロードルフ様。僭越ですが、実はこの二日間、そしてさっきまで、ここにいる全員はロードルフ様のことをどう思っているのか、話し合っていました。」


 さっきまで、たぶん仮眠をとる間だろう。


「……それで、何が言いたい?」


「ここにいる皆様話し合った結果、私たちもロードルフ様に死んでほしくありません。」


「……ふん。どうせお前らが注目したのはこの二ヶ月の間だけだろう!このことが終わったら、俺もすぐ元通り――」


「違います。ロードルフ様。ここにいる使用人たち短くても九年、そして私に至って十五年以上も、ロードルフ様に仕えておりました……ロードルフ様はどんな人なのか、わかっております。」


「……そんなのわからないだろう。」


「わかっております。例えば、今私たちのことを疑っていたのも……」


 こっちの表情は何も動かなかったが、動揺したのを感じた。


「ロードルフ様が心配したこともありえますでしょう。だから、疑われても文句を言うつもりはありません。ロードルフ様のことですから、変に否定したら、余計に疑われるでしょう。」


 全員、ロードルフ子爵のことをちゃんと見ていた。長年に仕えていて、ちゃんと見ているなら、わかっていても決しておかしくない。


「なら、なぜ今そのことをばらすんだ。余計に疑われるだろう!」


「疑われていても、伝えたいですから。ロードルフ子爵に死んでほしくない気持ちを。」


 ロードルフ子爵はしばらく何も言わなかったが、「……アホだな。」と言ってしまった。


「俺は死に行くじゃない。ただメリー様を逮捕するんだ。計画がうまくいけば死なない。心配し過ぎた!」激励とは言えないが、ロードルフ子爵なりの言葉だ。全員、ほっとしたような笑顔をしている。


「でも、覚えておけ。状況は常に変化し続ける。無理に元の計画を進む必要がない。大事なのは方針だ!その細部はどうするか、状況に応じて臨機応変に対応しろ!必要な暗号、覚えているだろう?」


「はい!覚えております!」


「何か変化がある時、暗号で伝えろ!」


 全員はいと答えた。


 暗号、計画を話し合っていた時、メリー伯爵の扇言葉と、私とロードルフ子爵の間で密かに使っている指の交流。


 この二つを混じって、私たち全員、手話みたいな暗号を作った。これで直接会話しなくても交流できる。


「では、一階に降りよう。そして、屋敷を出たら……わかるよな。」


 全員、覚悟しているようだ。


「行こうか――」ロードルフ子爵の言葉とともに、全員一階に降りた。


 深夜だから、蝋燭の灯りがあっても、若干薄暗い。視野が大半暗闇に覆われて、視覚の情報があまり役に立たない。


 扉の前に、全員が立っていた。何となく、全員深呼吸している感じがする。


「さあ、ここを出たら、芝居が開始する。」


「「「はい!」」」扉を開けた。


 ****


 あれは理不尽な状況だった。あの状況を見たら、誰もそう思っている。


 時は深夜。


「子爵様!どうかもう一度考え直してほしい!それはあまりにも浅はかな考えです!」それはどうしても貴族様の行動を阻止したい執事が懇切な声だ。聞いて人の心に必ず響いていく。


 そして、


「うるさい!黙れ!お前は誰に向かって喋っているのかわかっているのか!」とある貴族様の声が町中に響いていた。


 普通なら、その貴族様を反抗するやつはいないだろう。でも、執事が諦めていなかった。もう一度言った。


「しかし!メリー様を逮捕するなんて!やはり皮相な考え方です!どうか考え直してほしい!」


「お前は一体誰の執事だ!俺は間違っていない!勝手に指図するな!」しかし、貴族様が心変わりの様子がなかった。


「それとお前らも!反抗する気か!あいつは王族と敵対する気だ!死んでほしくなけりゃ、早くそこから退け!」


 たとえ深夜だとしても、ちゃんと見ているなら、使用人たちが懇願しているように周りに跪いている。貴族様の進路を塞いだ。


「退けません!ロードルフ子爵様が変わらないなら、私たちはずっとここから退けません!」ともう一人の執事が言った。


 貴族様はまるで怒っているように、身体が震えていた。そして、すぐその執事に手を出した。その執事が何も意識できなかったかのように、地面に転がっていた。


 塞いだ進路も、少し空間が空いた。貴族様は強引にその間から歩いていた。


「……俺を反抗した罰だ。そして、お前ら、全員クビだ!俺を反抗する使用人なんていらない!」シュッと、貴族様は服を整えていて、汚いものを取り除くみたいに、ズボンと靴下を軽く振り払った。


「ああ――まったく、汚いものを蹴ってしまったな。」まるで使用人たちにも聞きやすいように、貴族様は嫌な口ぶりで言った。


「では、さようなら。もうお前らの顔を見なくて清々するわ。」


 そして、貴族様は騎士団の方向に歩いていた。


 これは深夜暗闇の視野で、市民たちが見ていた、聞いていたことだった。

 また、少し遠いところに隠れて、この状況を見ていた人物もいた。この人は公爵領の間者だ。自分の目と耳が自負しており、さっきの状況を見ていて、聞いていた。


「ふーん……どうりで最近この町は騒々しかった。メリー伯爵を逮捕するんだな。これは『公爵』に報告しにいかなきゃ。」


 そして、その人物はもう一度変な行動をしたかどうか確認した後、ないとわかって、すぐ隠れていたところから離れた。


「はは……でも、本当に『公爵』の言った通り。あの子爵は『無能』だな。『十年でやっと領地を立て直した』。」


「無能」だから、王族の宮廷闘争に入らないわけではない。「入れない」んだ。


 だから、メリー伯爵に「好き放題にされていた」。


「親父はバカの極み、息子は無能の極み……実に良いコマだな。」


 その間者はそう考えながら、公爵領に帰っていた。

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