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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第六章(最終章)
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 「子爵様。どうか考え直してほしい。」


「ならん!」


「しかし、メリー様を逮捕するなんて、あまりにも皮相な考え方です。」


「お前の意見なんか聞いていない!俺に指図するな!」


 今、ロードルフ子爵と執事が言い争っている……ように見えるが、ただの芝居だ。


 今日、メリー伯爵を逮捕するふりの前日だ。計画をうまく進められるために、芝居の練習をしている。


 芝居の練習が一段落した後、ロードルフ子爵はすぐ「おい……こんなことをする必要があるのか?」と言った。


「申し訳ございません。不肖の演技が不甲斐ないため、子爵様に付き合わせていただいて……」


「いいや、そんなの構わん。聞きたいのは使用人たちに見せる必要があるのかだ。屋敷の中で、誰も見えないだろう。」


 この芝居の練習、使用人たちも見ている。当然、屋敷の中に。


「しかし、ロードルフ様。メリー様もおっしゃいましたが、空想の話を作るより、直接見たほうがより事実らしく伝えます。」とレイヤーが言った。


「逮捕」の「噂」を流布するために、使用人たちの力も必要だ。


 ロードルフ子爵が二日前に「逮捕命令」を言う時、なるべく市民に気づかせるように大声で言ったが、もしものために、使用人たちにやらせる必要がある。


 だから、こうして使用人たちにうまく話を作れるために、直接見た方がいいとメリー伯爵が話し合いの時に言った。噂の操作が得意だから、たぶん嘘ついてないだろう。


 そして、ロードルフ子爵の視線が他の使用人たちに映って、誰も同意しているように頷いた。


「ふん……ならしっかり見るんだな。」


 (もしかして、照れてる?)


「はっ!誰に言ってんだ。大勢の騎士の前に話す経験が何度もあった。このくらいしないさ。」


 (でも、知らない人の前と知り合いの前に芝居をする感じ、全然違うと思う……)良奈ちゃんの前に演劇をした時、少し恥ずかしかった。


「チッ……何も違わない。邪魔だ。喋るな!」やはり照れてるかな。気付きにくいけど、これも使用人たちを大切に思っている証拠だろう。


「とにかくもう一回やる。今回別のパターンだ。お前らもしっかり見ておけ。」


 はいと使用人たちが返事した。


 そして、芝居の練習が普通に終わった。


 簡単な食事を済ませた後、すぐ部屋に仮眠をとる。そして、深夜で出発する。少し距離があるから、五日くらいかかるらしい。


 ロードルフ子爵が仮眠をとる前に、私はやはり心配せずにいられない。


(ロードルフ子爵。)


「なんだ。」目を閉じているのに、眠る気配が一切感じない。彼も緊張しているだろうか。


(計画……本当にうまくいけるだろうか?)自分が考えた計画は命がかかっているから、その責任の重さが……どうしても不安を感じてしまう。


 色々考えすぎて、恐怖を感じてしまう。


 覚悟を決めたからこそ、何かが引きずっているような感覚。


 私は……何かの言葉がほしかった。


「俺も知らん。」


 (そう……だね。)


「怖いのか?」


 どう答えた方がいいかと思ったが、誠実に答えた。


 (うん。怖い。)


「……俺もだ。」


 (ロードルフ子爵も?)


 少し驚いた。でも当然だ。彼も人だから。驚いたのは彼が怖いと認めたことだ。てっきり質問が返ってくると思った。


「ああ、当然だ。俺も色々考えているんだよ。何が考えているのか、聞きたいか?」


 ……もしかして、私の気持ちを和らげるために、言っているのかな。


 (……お願いします。)


 ロードルフ子爵は目を開けた。ゆっくりと座っている態勢にして、布団の表面を凝視している。


「これは決して良くない考え方だ。だが、これは俺の行動基準だ。俺の考えに引きずられるなよ。」


 (うん。)


「俺が考えたのは、

 実はあの女が裏切るつもりとか、すでに王族と手を組んでいたとか、全てが演技だとか……

 あるいは王族が先に手を打ったとか、今あの女がもう掴まれたとか、先に処刑されたとか……

 もっとひどいのは、この計画は全部俺を陥れるために考えているとか、全員俺を殺そうとするとか……そういう感じだ。

 どうだ?嫌な男だろう。俺自身もそう思っている。」


 嫌な男、メリー伯爵が言った言葉。


(そうだな。確かに少し嫌な感じ。でも、君は信用した……その理由は?)


「気持ちがあるからだろう。お前が教えてくれた『気持ち』な。」


 (あの、そういう理由ではなく……)


「ふん!わかっている。お前が欲しいのはこんな曖昧な答えではない。仮眠の邪魔をする罰だ。」


 (……ごめんなさい。)


「ふん。俺にとって、不審な点があるからこそ信用できる。そして、信用する。」


(不審……)


「お前、まだ覚えているだろう。あの女を説得する時と計画を言う時の会話。」


(うん。覚えている。)


「俺ら、ずっと探り合っていた。あれもお互い少し不審がっている証拠だ。わかる?」


 (何となく……)


 何となくわかっている。所々確認するような言い方があった。名前もよく呼んでいた。恐らく、私にわからない部分もあるだろう。


「で、あの女もわかっている上で、計画に乗ったのさ。」


(どうして、メリー伯爵様がそう考えていたのがわかるの?)


「いいや、本当は何を考えているのがわからない。ただそう信じたかった。」


(……不安は?)


「ある。でも彼女は計画に乗っただろう。」


(あ、そうか。だから裏切るとか考えていたんだね。)


「ああ。だから俺も怖い。お前と違う原因でな。」彼は膝を曲げて、頭を抱えて膝の間に埋もれた。


 (じゃあ、君は使用人たちも疑っていた?)


「当然だ。使用人だけじゃない、レイヤーもな。」


 懐疑的なのはわかっている。でも、ここまで考えていたのは……やはり引く。しかし、その原因が気になる。


 (どうしてそこまで疑う?昔、何があったの?)


「……レイヤーの母が自殺したのさ。俺のクソ親父のせいで。」


 (それは……)お気の毒……とか言えない。何もわからないまま言えるようなことではない。


「当然、俺はレイヤーが好きだ。愛のほうだ。でも、それと疑うかどうかは別だ。実はこの全てはレイヤーが仕組んだ考えまでもあった。あきれるだろう?」


 (うん……確かにあきれる。)


「なら、これでわかるだろう。俺は不安を感じながら、信用しているんだ。何も考えていないわけではない。同じく怖かったんだ。」


 (そうか。わかった……ごめんなさい。仮眠の邪魔をしちゃって。)


 ロードルフ子爵ははぁと嘆いて、「……おい。俺こういうのが苦手だ。俺のことだけ聞いてどうする?お前も怖かっただろう。」と言った。


 あ……話しかける目的が忘れるところだった。


 (そうだね。ごめん。)


「そういうのはもういい。早く言え。何が怖い?」


 (計画がうまくできるかと、メリー伯爵を救えるかどうか……)


「……そうか。ならそのほうがいいだろう。」


 (君にとってそうかもしれないが、でも私は……不安でしょうがない。自分が考えた方法が命にかかっているから……)


「不安があるからこそやるんだ。だからそのほうがいい。これはさっきの意味だ。」


 (どういうこと……?)


「お前、不安でしょうがなくてもやめるつもりがないだろう。」


 (それはそうだが……)


「理由はどうであれ、お前はやるつもりだ。なら、その不安を素直に受け入れよう。お前がよく考えていた証拠だ。」


 受け入れる……よく考えていた証拠……


「俺も疑っていながら信用した。怖いと思いつつ信用した。何も考えなしで信用したわけではない。

 そして全員も、考えなしで計画を同意したわけではない。じゃないと、計画について話し合うつもりはなかっただろう。ただ盲信するだけでいい。意見も出さなくていい。」


 盲信……意見……話し合う……


 何も考えていないなら、何も言わない。適当に話を合わせているだけかもしれない。でも、意見を出した。


 また、裏で何かをやっているなら、無理に裏の計画に合わせて意見を出す必要がない。その計画がバレたリスクがあるから。


 そして、誰もそんな行動をしなかった。


 (そうね。そうだね。君の言う通り。)


 全員計画の詳細まで話し合っていた。討論し合った。この事実は消えない。だから、彼は信じたかった。


「提案したのはお前だが、俺ら全員も同意した。だから恐怖と不安を感じたのは当然だ。でも、その恐怖と不安は真剣に考えていた証拠だ。もし何も感じなかったらむしろおかしい。」


 (それもそうだね……)


 この恐怖と不安はきっと消えないだろう。でも、消えなくてもいい。解消しなくても突然現れるようなものだ。


 だから、受け入れよう。友達みたいに、受け入れよう。


「それに執行人は俺らだ。お前は見るだけでいい。悪くないだろう?世の中に何もしなくても成果が出せることなんて、そうそういないぞ。」


(はは……そうだね。ありがとう。ロードルフ子爵。)


「ふん。もういいだろう。今度こそ寝るぞ。深夜で出発するんだ。」


 (うん。本当にありがとう。おやすみ。)


 相変わらず返事してこなかったが……


 ↑……おやすみ。


 と時々流れてくる彼の考えを感じた。

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