表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第五章
57/75

9

 五日目。今日は説得する日だ。


 明日ロードルフ子爵は騎士団の要務があるため、あまり時間がない。メリー伯爵も帰りの準備をしなければならない。明後日の朝に即出発だから、しっかり話せる時間は今日しかない。


 朝、急務部屋に執事と副執事と一緒にメリー伯爵の計画について話し合っていた。


 また、レイヤーと召使いは、メリー伯爵と一緒に外に出かけて市民たちと交流していた。


 そして今、昼食の前。うまそうな匂いが交流室に漂っていて、料理人の夫婦はメリー伯爵が好きな料理を用意していた。


 庭師も交流室と食堂の机の上に、室内の花と外の花壇もしっかり整備していて飾っていた。


 私もロードルフ子爵と、もう一度計画の話と自分の気持ちを確認した。


 メリー伯爵を阻止するために、料理人の夫婦も召使いも、庭師も副執事も、レイヤーも執事も……みんな、メリー伯爵のために全力を尽くしていた。


 今出かけた人以外、全員メリー伯爵の帰りを待っている。


「子爵様。メリー様はもうすぐ帰ります。ぜひ準備を。」と執事が言った。


「ああ。」ロードルフ子爵は扉の前に移動して、すぐ食堂に移すようにメリー伯爵を迎えるつもりだ。


 メリー伯爵を説得する時間と場所は昼ご飯の時食堂にと決めたから。


 そして、しばらくして扉が開いた。


「はあ、今日暑いですね。市民たちも熱心でしたわ……」少し羽扇で揺らしながら、メリー伯爵は入った。レイヤーと召使いも後ろについている。


 そして、メリー伯爵は真っ先にロードルフ子爵のことを見て、あまり驚いた顔をしていない。一応形式的でも、ロードルフ子爵はよく迎えたことがあるから。


 メリー伯爵は淡々と「あら、わたくしを迎えていますね。素晴らしいですわ」と言った。


「お褒めにあずかりありがとうございます。メリー様。それと、食事がすでに用意しておりました。先に食堂に移動しましょうか。」ロードルフ子爵は軽く手を差し伸べた。


 恐らく雰囲気か動きかどっちがから察しただろう。メリー伯爵はここで少し迷っていたが、微笑みをかけて、自分の手をロードルフ子爵の手に乗せた。


「……あら。よろしい。紳士らしくエスコートしなさいな。また『何か』話があるでしょう。」


「ええ。おっしゃる通りでございます。」


「まったく……あきらめが悪いですわ。」


 自分の顔が見えないからわからないが、何となくロードルフ子爵は口角が両方に上げた感じがした。恐らく固い笑顔だと思う。


 だが、メリー伯爵は普通に優しい笑顔を見せてくれた。


 彼女の笑顔を見て、やはり死なせたくないと感じた。


 二人は食堂に移動して、手を洗った。


 ロードルフ子爵はメリー伯爵に座らせた後、レイヤーと執事以外、使用人たちに交流室で待機して食事すると命令した。


 この行動に、メリー伯爵は少し複雑な笑顔をした。悲しみもあり、しょうがないという感情もある。


「今日使用人たちも一緒にお食事してもいいですね?」


「そのつもりです。今後もな。だが、君に話があります……食事しながら話しましょう。」


「……人は食事をする時、緊張感が緩められます。そういうつもりですね?」


 ロードルフ子爵は返事しなかった。しかし、彼女の言う通り。少しでもいい。彼女の気持ちを変えさせるために、できるだけ何もやってみる。


 でも、こんなにあっさりと見破られたら、効果が薄いかもしれない。


 二人が食事を始めた。


 メリー伯爵が食べ始めた途端、


「何か話をする前に、確認させてくださいな。これはクロイ様が考えたことですか?」と言った。


「いいえ、違います。こいつだけでは力が足りないでしょう。俺と二人で考えました。」とロードルフ子爵が言った。


「そうですか。いいでしょう。」


 メリー伯爵のこの反応、わからない。二人じゃないなら怒るのか?それとも、外人の私が余計なことをしたのか?曖昧……


 でも、表情は優しい笑顔のままだった。少し悲しい感じがするが、嫌いではないと思う。


 二人はしばらく食事を運んだ。


「……何となくですが、今日花壇の景色、食事の風景……また料理も、かなりわたくしの好みですわ。」


「お気に入りでしたら、今後もそうしましょう。メリー様。」


「そうですか。ありがとうございますわ。ロードルフ様。」メリー伯爵は肯定も否定もしなかった。受け入れただけだった。


 つまり、気持ちを変えるつもりがなかったという意味だろうか……いいや、やはりわからない。同じく曖昧な返事だ。


 今なら少しわかるかもしれない。どうして「貴族」は曖昧な返事が嫌いということ……その本意がわからないから。


 そして一口、また一口、二人は食事を進みながら、会話している。


「……では、そろそろ本題に入りましょうか?ロードルフ様。君は今までずっと話が長引かせたくありませんでしょう。」


「昔なら確かにその通りですが、今回しっかり話し合いたいですので、ゆっくりと話し合いましょうか。メリー様。」


「……いいでしょう。では、話の流れはロードルフ様にお任せします。いいですか?」


「ああ、いいでしょう。」


 余裕……ではないと思う。そんなに説得したいなら、説得してみてというわけではなさそうだ。


 たぶん、本当の気持ちがあるから、わざわざ話の主導権をロードルフ子爵に握らせただろう。本当は誰かに頼りたかったかもしれない。


 今まで、メリー伯爵はずっと「一人」で頑張っていたから。物理的なことではなく、もっと精神的な意味で……


 ロードルフ子爵は少し口元の部分にティッシュで軽く拭いた後、両手の指が絡み合って、親指の部分だけ軽く触れ合っていた。身体が前に傾き、彼女の視線に直視する。


 メリー伯爵も手を止めて、ロードルフ子爵の視線を避けようとしなかった。


 恐らく、ここからが本番だろう。


「では、先に君の『計画』について、話し合いましょう。」


「ええ。わたくしの『計画』、何が悪いでしょうか?」


「まず『計画』の『目標』、とても素晴らしいと思います。俺には考えられないものでしょう。」


「今の君なら、普通にできると思いますわ。」


「ええ、それは今です。しかし、この『計画』は昔の君が考えたものでしょう?」


「……ええ。そうですわ。」


「あの年頃でここまで考えました。当時の俺には全然考えられませんでした。」


「……わたくしを褒めても気持ちを変えるつもりはありませんよ。」


「知っています。俺はただ素直に褒めたかっただけです。メリー様。」


「……そうですか。ロードルフ様。しかし、わたくしだけではありませんわよ。レイヤーの子。彼女も一緒に考えてくれましたわよ。」


「それは『俺のこと』でしょう。レイヤーに聞いていましたよ。彼女は『計画』と深く関わっておりません。簡単なことくらいしか知りません。」


 近くにいたレイヤーは少し申し訳ない顔で、メリー伯爵に頭を下げた。メリー伯爵はただ微笑みをして、「構いません」と返事した。


「簡単なことでも、『知っている』という意味です。そういう言い方、君は彼女の努力を無視するつもりですか?」


「メリー様。少し話を逸れたい疑惑がありますね。それに、彼女の努力もわかっています。素直に感謝していますし……愛しています。だから、無視しておりません。」


「いいでしょう。わたくしも変な疑いにかけられたくありません。信じましょう。しかし、『計画』の『目標』が素晴らしいだとしたら、別にそのままでいいではありませんか?」


「『目標』はいいが、『方法が良くありません』。現に、考えられた『欠点』がいくつか挙げられます――」


「お待ちくださいな。その『方法が良くありません』というのは、わたくしが『間違っていた』という意味ですか?」


「いいえ。間違ってはいませんよ。ただ文字通りの意味で、方法が良くないことです。いい方法、悪い方法……表現は少し曖昧かもしれませんが、とりあえず、『方法が間違っていない』と思ってください。」


「……いいでしょう。その『欠点』とは何なのか、言ってくださいな。」


 ロードルフ子爵は少し留まってから、話し始めた。


「1.君は後先のことを考えておりません。

 この計画は市民たちのためにやっていましたが、市民に権利を握らせたあとのこと、明らかに考えていません。何せ、君は最初から『死ぬ気でやる』つもりですから。」


「あら、わたくしはちゃんと考えておりましたわよ。わたくしは言っていませんが、ちゃんと人材を育ったつもりで、この人に任せてもいいと考えておりました。それは君だけではありません。わたくしの領地にも人材がいますので。」


「……執事、そうですか?」


 レイヤーの隣にいる執事は軽く頭を下げてから、「はっ、確かにいます。」と言った。


「しかし……その人たち、メリー様に比べるほどではありません。もちろん子爵様にも。」執事は言った後、メリー伯爵に深くお辞儀をした。


 これに対してメリー伯爵はレイヤーの時と同じ反応をした。ただ若干寂しさを感じたかもしれない。すぐには反応しなかった。


「そうか。でも、いるのは確かだな。なら、考えていなかったということではないでしょう。」


「当然です。」


「しかし、『死ぬ気でやるつもり』というのは、これは反論の余地がないでしょう。」


「……ええ。そうですわ。」


「では続き、欠点です。

 2.市民たちと周りの人たちの命の危険に繋がります。

 メリー様は王族と対立してしまったことに、君は自分が死んだら終わりだと思いますが、決してうまくいきません。」


「……あまり命の危険に繋がらないと思いますが?」


「俺のクソ親父、死んでもなお俺に迷惑をかけた。かなり簡単な一例でしょう。」


「……しかし、それは君の特例でしょう。君が言ったはずです。市民たちと周りの人たちの命と。


 王族は全部愚かな人ではありません。仮にクソな素性でも、素性と知恵は関係ありません。わざわざ全員と敵に回すような行為など、王族も考えるでしょう。」


「なあ、メリー様。君はやはりはぐらかすのが得意のようですね。」


「……というと?」


「『王族はどう考える』か、それはあくまで仮設の話です。つまり、『不可知領域』のことですよ。その後の行為など、君と俺が知る由もありません。」


「しかし、ロードルフ様は……」メリー伯爵は途中で何も言わなかった。


「俺が言ったのは『自分の例』です。この『欠点』がありますということです。」


「……なるほど。罠ですね。第1点は。」


「話の流れは俺に任せたでしょう?」


 メリー伯爵がはあと嘆いて、まるで仕切り直すために少し料理を口に運んで言った。


「まいったわ。本当に嫌な男ですね。」


「ふん。お褒めにあずかりありがとうございました。」


「褒めてありませんわよ。」


 (あの……これ口論争ではないよ。)


「わかっている。」


 メリー伯爵は少し笑って、「クロイ様ですね?」と言った。ロードルフ子爵は「ああ。」と相槌を打った。


「さあ、続けてくださいな。しっかり『欠点』と言ってください。」


 ロードルフ子爵はいくつかの欠点を挙げた。その大まかはこの四つ。


 欠点:

 市民たちの命の危険。

 領地の経営問題。

 戦争が起きる。

 反乱が起こす。


「……そして、『欠点』ではないが、君が死ぬのは嫌です。メリー様。」


 しばらくして、


 メリー伯爵は両方の眉少し下げた感じで、悲しげな顔で


「……まったく。もし君はもう少し前で言ってくれたら、本当に説得されましたと思いますわ。」と言った。


「では……」メリー伯爵の言い方に構わず、わずかな希望に抱いているだろう。ロードルフ子爵は少し期待しているような口調だった。


 でも……普通に説得するためだけなら、この段階で終わるんだが……


「しかし、『計画』はすでに実行済みです。残りは最後の段階ですわよ。たとえ婚約を解消しなくても、わたくしは必ず処刑されるでしょう。だから今欠点を言ったところで、何も変わりません。わたくしは気持ちを変えるつもりありません。」


「実行済み」、これこそ問題点だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ