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「――お前、”自分が死んでいたかもしれない”と言ったな。」
さっき、メリー伯爵が言った言葉も聞いていた。ロードルフ子爵は私と会話するつもりだろう。
メリー伯爵……ありがとう。
(そうだ。)会話すれば、私は確定される。認識される。私は、生きている。
「何で確定ではない言い方をする?」ロードルフ子爵は手を動きながら、食事を進んで言った。
(それは……「死ぬ直前」の記憶だから。)
「だったら、死んでいなかった可能性もあるだろう。」ロードルフ子爵が言いたいことがわかる。
(わかっている!しかし――)
「しかし、“死んでいた可能性もある”、そう言いたいだろう。」
(そうだ。)
「ならなおさら心配する理由がないだろう!」
(違う!それこそ心配する理由になるんだ!)
ロードルフ子爵はチッと舌打ちして、ご飯を食べた。まるで自分に冷静させるように、大きな一口を食べた。
「……わかった。なら少なくとも、俺にとってそれは心配する理由にならない。これでいいのか?」
(全然良くない……)
「じゃあ、俺も一緒に心配した方がいいのか?お前がさっきそうしたかのように。」
(……私が?)私はさっきのことを思い出して、そして否定した。
(違う。私はただ「会話」がしたかっただけ!「事実」も伝えなきゃと思ったんだ!)
「ほう。面白いことを言ったな。」
(面白い?全然面白くないだろう……)
ロードルフ子爵は少し手を止めた。視線がメリー伯爵の方に向かった。
「メリー様。ここは一つ君に聞きたいことがあります。お前、会話がしたかったんだろう。なら、ここはちゃんとメリー様の話を聞くように。」
「あら、いいでしょう。何のことでしょうか。」
ロードルフ子爵は何がしたいのかわからないが、今会話の「対象」がメリー伯爵に移してってことだろう。
会話ができるなら、誰でもいい。しかし、今私が会話できるのは、ロードルフ子爵しかない。無理やり表に出ても、耐えられる自信がない。
「メリー様。この十年間、『不老不死』を追求する『ふり』をしていましたね。」
「ええ、そうですわ。」メリー伯爵は素直に答えた。メリー伯爵の食事がすでに終わった。ロードルフ子爵の言葉を真摯に傾いていた。
「では、『不老不死』を追求することに対して、『感想』、あるいは君の『気持ち』を、聞かせてくれるでしょうか。ちなみに、『過去』の話をしても構いません。むしろ、『約束』があるので、いい機会です。」
過去の話……そうだ。この二人の過去に何があったか、私にはわからなかった。確かにいい機会かもしれない。
「なるほど。いいですわ。では、まず過去の話から言いましょう――」
その後、メリー伯爵が言った過去の話はあまりにも壮大すぎで、少し信じがたい。しかし、嘘には聞こえなかった。
もし嘘だったら、ロードルフ子爵がその場で指摘するだろう。
指摘しない場合、この話は嘘じゃない、あるいは共犯体制――私を引き込むために一種の陰謀論になる。
メリー伯爵とロードルフ子爵との関係性が解明した。口を挟む余裕がなかったし、挟むこともできなかった。
二人の過去に、そんなことがあったんだ。でも……ロードルフ子爵、迷惑をかけすぎたではないか?
話が一段落のところに、私はロードルフ子爵に話しかけた。今彼に話しかけるしかない。
(あの……ロードルフ子爵。)
「ああ?」ロードルフ子爵も食べ終わった。使用人たちは食堂に入って、食器を片付けていく。
(私が聞きたい質問を、言ってくれる?つまり、代弁してほしい。)
そして、ロードルフ子爵は少しふっと嗤ったようだ。
「……いいだろう。こいつは何が質問したかったようです。メリー様。」
「いいですわよ。何が聞きたいですか?クロイ様。」
まるで会話……いや、間違いなく彼女と会話している。
メリー伯爵の瞳には、ロードルフ子爵の様子が映っているのに、「私」を見ているような感じだった。
真摯に聞いてくれるのに、私は「会話」がしたかっただけ……罪悪感が……
(どうして、「不老不死」を選んだのですか?って。)
「どうして、「不老不死」を選んだのですか?って」ロードルフ子爵は私の問題をそのまま、淡々と述べていた。
「ふふ……いい質問ですわ。」メリー伯爵は軽く笑って言った。
「『不老不死』を選んだ原因は、誰にもわからないことですから。つまり、『人』にとって、それは『不可知領域』ですから。」
不可知領域……パパも言ったことがある。それは「不可知論」のこと。
(つまり、「不老不死」と同じようなことであれば、原因は「不老不死」に限らない、ですか?)
ロードルフ子爵は私の問題を述べた後、メリー伯爵は綺麗な微笑みをかけて頷いた。
「そうですわよ。同じようなことであれば、『不老不死』じゃなくても構いません。しかし、ロードルフ子爵に信じ込ませるためには、わたくしも少し調べたことがありました。
クロイ様、わたくしが調べた『不老不死』のこと、聞きたいですか?」
(……聞きたいです。聞かせてください。)
「聞きたいようです。」
「いいですわよ。」
会話が、成り立っている……これは、私が求めていた「現実」。




