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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第四章
48/75

12

幕間の編……とても長い。

それと、大事なことです。

鬱要素やメンタルヘルスに悪い部分、また若干自殺の描写があります。

もし受け入れられない方や心臓が弱い方、是非控えていただきたいです!

最後に人物のヒミツを書いています!

もし読む途中、ダメと感じたら、バツ押すか、最後の部分を見て、心を癒されてください!

では!

 黒井さな子、小学三年生の頃、すでに父と二人が暮らしていた。


 その家は1Kアパートで、中に家具も少なくて、決して裕福な環境ではなかった。しかし、家が小さくても、お金がなくても、二人はずっと幸せだった。


 ある日、黒井尚葉くろいなおばは自分の娘に問いかけられた。


「パパ、わたし、友だちにさそわれたんだ……一緒に旅行しに行きたいって、家族連れててもいいって……だから、パパも一緒に来てもいい?」


「旅行か……いつ?」


「来週の金曜日、夜から行くって。」


「……そうか。俺は無理かもな、」


「そう……じゃあ、明日断ってくる。」


 黒井さな子は明らかにしゅんと落ち込んでいた様子に、黒井尚葉はすぐしゃがんで、軽く娘の頭を撫でで言った。


「さな子、パパは行けないけど、さな子は行きたいでしょう?」


 黒井さな子は一瞬迷った後、頭を横に振った。しかし、黒井尚葉はすぐにわかった。その一瞬の間は、黒井さな子が自分の気持ちを我慢している表示。黒井尚葉は幾分のしょうがない微笑みをかけて、優しい口調で言った。


「ルール3.家族の間では、無理に嘘をつく必要はない。さな子、本当の気持ちを言って。」


 黒井さな子は驚いた様子で、そして視線が地面に注視した。まるで叱られた子供のように。


「さな子?」そう呼ばれた後、黒井さな子はすぐ黒井尚葉に抱きつく。


「おっと……」


「一人で行きなくない……」


 その言葉を聞いて、黒井尚葉は軽く黒井さな子の背中をポンポンと叩いた。


「そうか……一人が不安か?」娘の頭が自分の肩に乗せながら、わずか頷いた動きを感じた。


「なら、さな子は旅行しに行きたいか?」


 返事がない。肯定しないが、拒否もしない。たぶん少し行きたい気持ちがあるだろう。


「とにかく、パパと行きたいのか?」今度力強く頷いた感じがした。


「そうか。わかった。」黒井尚葉は両目を閉じながら、黒井さな子の身体を離した。


 そして、二人は面と面を向かって、注視し合った。


「パパは聞いてくるよ。休暇が取れるかどうか。しかし、たとえパパが行けなくても、自分の気持ちを無視しないでね。」真剣な表情で言った黒井尚葉。


 黒井さな子は頷き、「……わかった。」と言った。


 たぶん、そんなにわかってないだろう。黒井尚葉が軽くさな子の頭を撫でた。


「無理に『大人』になる必要はない。大事なのは、やりたいか、やりたくないかだ。」


「うん……でも、どうしてパパはわたしが嘘をつくと、すぐわかるの?」


「そりゃ、パパだからな。」黒井尚葉は少し誇張な動きで、両手を腰に差して、自慢げに言った。


「そう。パパすごいね。」


「はは、ありがとう!さな子もすごいよ。俺の娘だからな。くらえ!我が双剣!」


「……は!で、出たな!バカ超人!こんかいはゆるさないぞ!うううーー……目からのビーム!」


 そして、この小さなアパートの一室で、二人は遊びながら、幸せな時間を過ごしたのだった。


 ****


 翌日。


 黒井尚葉は迷っている。その原因は、休暇が取れるが、当番の人を見つけなければならない。


「先輩、どうした?」


「ああ……来栖くるすさん。ちょっと休暇を取ろうと思ったが、当番のことが問題でね。」


「へえ……先輩はあまり休暇を取ることがなかったよね。どうして突然?」


 黒井尚葉は少し迷ったが、娘とのことを簡単に説明した。そして、来栖は考えこんでいた。


「あの……」


「先輩、私が変わってあげようか?」


「いいのか?」


「娘の事情だろう?いいの!娘と一緒に楽しんでください!私、あまりそういう機会がないからね……」来栖の顔が少々寂しい感じがして、黒井尚葉はその「機会」のことを聞かないようにした。


「……そうか。ありがとう。」深くお辞儀をした黒井尚葉。


「いいの、いいの。先輩大げさだよ。」慌てている来栖。


「いいえ、重要なことだ。」


「……そう。じゃあ、どういたしまして!先・輩。」


 二人がこのやり取りに少し可笑しく感じで、一緒にふふっと笑い出した。


 そして、黒井尚葉と黒井さな子、二人がその友達と一緒に楽しく旅行に行った。幸せなひと時だった。


 ****


 黒井さな子、小学五年生の頃。


 夜、トイレに行った後、黒井さな子が真っ青な顔になった。


「パ、パパ……血!血が!」


 黒井さな子は泣きそうな顔をして、すぐ自分の父さんに抱きつこうとした。黒井尚葉は「血」と聞いた瞬間、一瞬心配したが、娘の様子を見て、すぐ悟った。


「あ、さな子!ちょっと待て、大丈夫だ!たぶん、生理だ!授業受けたんだろう!」


「生理……?でも、とても多いよ!ほら、トイレ……」


 黒井さな子の慌てっぷりに、黒井尚葉も少し緊張していた。


 そして、


「あ……本当だ……これ、大丈夫なのか?いや、でも、量はそれぞれのはず……ああ、大丈夫だ!あの、パパは今、聞いてくる!待てて!」黒井尚葉は携帯を持ち出し、来栖に電話をかけた。


 “「もしもし、先輩?こんな時間珍しいね。」”


「あの、たぶん娘の生理が――」大体な事情を説明し終わった後、


 “「ああ……だから私に聞きたいか。」”


「そ、そうだ。」


 “「とりあえず先輩、落ち着いてみたら?」”


「えっ、でも、とても多いよ……」


 “「……はあ。わかったよ。住所、教えてくれてもいい?詳細がわからないから、何種類持っていく。」”


「あ、ああ。わかった。住所は――」


 “「それと、種類わかったら、これから常時備えてね。じゃないと色々不便だよ。」”


「はい!ありがとうございます。」


 “「はは、どういたしまして。」”


 電話し終わって、黒井尚葉は黒井さな子に何とか安心させた。少し生理のことにドタバタした親子だった。


 少々恥ずかしい思い出だったが、二人にとって決して悪い思い出ではなかった。


 ****


 ビッ、ビッ、ビッ……


 病院で。


 医療器具の音が響いている。


 黒井尚葉は、病床に臥す黒井さな子の横顔を見たまま、何も考えてなかった。無気力のまま、ボーとしていた。彼の顔が憔悴しきっていた。


 娘の命が助かった。しかし、この一ヶ月ずっと起きなかった。


 犯人が捕らわれていた。その犯人は「中学の友達」と自称していたらしいが……彼にとってどうでも良いことだった。


 黒井尚葉は、娘が起きることを待っている。ずっと、ずっと……


 この間、黒井尚葉はまるで屍のように生きていた。大事な娘が失われてしまいそうだったから。


 妻と離婚する時、彼はもう決めた。ちゃんと自分の娘を守ろうと。ちゃんと自分の娘を幸せにしようと……


 大学の時で学んだ「哲学」や「心理学」、今の自分の心にまったく役に立たなかった。大切な人が失う時、それほどのショックだった。


 たとえ頭がわかっていても、何かやる気力が湧かなかった。


 あの頃が懐かしい……娘と一緒に暮らしていた頃の記憶が鮮明だった。しかし、現実を見なきゃいけない。


 人は、どうして前に進めなきゃいけないだろう?どうして社会に生きなければいけないだろう?


 いろいろな思考が彼の頭に飛び交うが、考えれば考えるほど、「現実」の辛さを感じた。


 だから、黒井尚葉は何も考えないようにした。生きる屍のように。


 ガラガラ――病院の扉が開けた。来栖だった。


「先輩……ちゃんとご飯食べている?」


「……ああ。」


「その……」来栖が話す途中で、何も言えなかった。この行動に対して、黒井尚葉は来栖に言った。


「来栖さん……ありがとう。」この言葉を言っていた黒井尚葉は何の生気もない、虚ろな目だった。


 そんな彼に、来栖は「……いいえ、どういたしまして。」と返した。


「……君が来たなら、俺は、そろそろバイトの準備をしにくる。すまん。」


「……大丈夫、気を付けて。」


 黒井尚葉は、一人で家に帰っていた。家の中にはとても散らかしていて、もはやごみ屋敷に化していく。


 そして、浴室のドアノブに、一つの縄がくるくると巻いており、一つの円が形成していた。その円の中間は一人の首が入れる空間があった。


 この家のものは何も片付けていない、そして、やる必要もない。黒井尚葉はあの縄を見て、瞼を閉じた。何かを想像しているようだった。


 しばらくの間、彼は目を開けた。簡単なものを取ってから、フラフラと家から出た。


 黒井尚葉は、ずっと娘が起きることを待っている。


 ****


 “ねえ、さな子は父さんと感情がとてもいいんだよ。気持ち悪いぐらいにね。”


 “ええ?まさか彼女は父さんとずっと家でアレコレやった?”


 “うぇ、家族と?気持ち悪い。”


 “それに、彼女はずっと「パパ」と呼んでいたよ。”


 “何それ、子供か。”


 黒井さな子は中学の頃、少し陰口、嫌われる傾向がある。もちろん、「噂」も流されていた。


 噂が流された原因は、とある女子クラスメートが家に来たかったで、後のことだった。


「ねえ、さな子。私、さな子の家に行きたいな。いい?」


 黒井さな子はこの女子と交流したことがあったが、あまり深く付き合ったことがなかった。


「……えっと、どうして?」


「ええ?私たち、友達じゃん。掃除する時、体育の授業も一緒にやったじゃん?私はもっとさな子のことが知りたいなーって。」


 普段から情熱のような子だったから、恐らく嘘ついてないだろうと、黒井さな子は思った。


 でも、黒井さな子は迷っている。


「いいじゃん。それとも何?何が知られたくないことでもあるの?」


「いいえ、そんなことはないけど……」


「じゃあ、私たち、友達だろう。」


 友達……


「……わかった。」この時、黒井さな子は断れなかった。曖昧のまま終わらせた。


「じゃあ、行くって決定ね。」女子がそう言って、他の友達のところに行った。


 そして、その女子の声が、「ほら、受けるって言っただろう。ジュースおごりな。」と、黒井さな子が聞こえた。


 友達だから、大丈夫……だよね。


 でも、何だろう。この嫌な気持ち……


 そして、夜。


「どうした?さな子。」


「パパ……あの、クラスの友達が、家に来たいって、言った。」


 少し違和感がある言い方に、黒井尚葉は聞き返した。


「ええと、クラスの友達?」


「……うん。」


 黒井尚葉は気付いたが、どう気付かせると思っている。


「その友達と、何があったか?」


 黒井さな子は何も返事しなかった。


 小学生のあの旅行以来、結構明るい子になったから、黒井さな子の状態の変化に気付かないわけがない。もちろん嘘をつく癖もわかっている。黒井尚葉は少し苦笑いをした。


「言いたくない?」


 黒井さな子は頭を横に振った。


「あの子、なんか賭け事したらしい……ちょっと嫌な感じ。」


「そうか……」黒井尚葉は返事した後、少し考えて、質問した。


「さな子はまだ覚えている?俺が教えていたこと。」


「やりたい気持ちとやりたくない気持ち……やりたくない気持ちの方が大事、だよね。」


「ええ。さな子はあの友達のこと、どう思っている?」


「嫌いじゃないけど……でも……」黒井さな子は考えていた。そして、ふとわかるようになった。


「そうか。私、あの子に家に来させたくないかも。」


「そうか。でも、ちゃんと覚えていて。もしさな子が友達に誘いたいなら、パパはいつでも大丈夫。忙しい時があるかもしれない。その時、さな子はちゃんと家の主人として、もてなしをしてね。そして、したくないなら――」


「――ちゃんと断る。わかっている。今回、私はちゃんと断ってなかった。」


「うん。わかるなら大丈夫。」


「……でも、パパは本当にすぐ気づくね。」


「そりゃ、パパだからな!くらえ!カニハサミ!」


「はっ!で、出たな!カニ仙人!今度わたしは失敗しないぞ。へい!パ、パカパカ髪竜巻!」


「うわあああ――この髪の毛の量……半端なかった。ぐっ……」


 ****


「はあ?」


「ごめんなさい。私の家に来ないでください。」


「……何それ、前はいいって言ったじゃん。」


「それはただ言えなかっただけで、今ちゃんと断るつもり。」


「……何それ。じゃあ、私が勘違いしてたってこと?私たちは友達じゃないの?」


 また友達を……


「それはわからない。とりあえず、家に来ないでほしい。」


「行きたいって言ったじゃん!」


「じゃあ私も来ないでほしいって言った!」


「何よ!行けない理由でもあるの?」


「気持ちの問題です!」


「ああ?もしかしてあの賭け事が気にしているのか?あれはついでだよ、ついで!」


 それの問題じゃない……


「それでも来ないでほしい。」


「じゃあ何?君が低収入だからか?家がみすぼらしいから?」


 そういえば、低収入のことも、彼女が勝手にばらした……


「だから気持ちの問題って言ったでしょう!」


「何が気持ちの問題だよ!きっしょ、うざっ。君の彼氏じゃないし!わざわざクラスメートがいないところに呼び出したし……」


 どうしてそんなことを言うの……


「ああ、低収入でいいな。友達の誘いも断れる。」


 嫌だ……嫌な人……


「……低収入のことも君が勝手に言ったんだ。」


「ああ?私が悪いといいたいのか?君のためにやったんだ!」


「そんなことを頼んでいない!勝手なことをしないで!」


「うざ、ひどっ!こっちは『善意』でやったのに、そんなこと言うんだ。」


「そんなの善意じゃない……」


「じゃ何なのか言ってみろよ!」


 黒井さな子は初めての状況に戸惑っていて、何も言えなかった。「善意」じゃないなら何なのか、彼女は答えられなかった。


 でも、このことはもうどうでも良かった。


「と、とにかく、私の家に来ないでほしい!」


「……はあ、うざ。私は悪くないし。もう興味がない。帰る。」


 そして、その女子がクラスに戻った。黒井さな子は見送るしかなかった。


 このことをきっかけに、黒井さな子はクラスの中に色んな「噂」が流されていた。


 黒井さな子はちゃんと否定しても「うわ、この反応――」とか言われて、否定しなくても「否定しないから」と、「噂」が流され続けていた。


 だから、彼女は気にしないようにした。


 しかし、その女子クラスメートがずっと気にしていたのだった。


 ****


「ああ、ごめんなさい。先生、これでいい?」


「……はあ、白井。もうそんなことするじゃない。前も言っただろう!前回黒井さんのためにと言ったから、警告で済むが、今回度が過ぎる!」


「先生、それはただ黒井さんが勝手に思い込んで――」


「口答えするな!他の生徒からも君からだと言った!認めないつもりか!」ポンと、教師が机を叩いた。さすがこの挙動に、白井も黙り込んだ。


「白井……授業の時間まで、ずっとここに立てろ!」


「ええ、私悪く――」


「喋るな!それと、黒井さん。」


 黒井さな子は「はい」と返事した。


「どうしてそんな『噂』すぐに否定しなかった?」


「否定した。」


「……ちゃんと否定したのか?」


「ちゃんと否定した。否定してもずっと言われ続けてきたから、気にしないようにした。」


「……そうか。言い方が悪かった。噂を阻止することは誰にも責任がある。否定だけではダメだ。俺も責任がある。今回運がよかったものの、もし気付いてなかったら、俺も誤解される!わかったか!」


「……わかった。」


「もう教室に戻ってもいい。白井はここに残れ!」


「ありがとうございます。」


 黒井さな子は強制的な形で、和解させられていたが、白井と彼女の友人たちは何も変わらなかった。


「私……悪くないし……」それは誰も聞こえない白井の独り言だった。


 ****


 食っちゃね……バイト、食っちゃね……バイト……


 娘が半年も起きなかった。今はただ入院費用を稼ぐために生きている。それと、いずれ起きるかもしれないというわずかな希望。


 食っちゃね……バイト……


 来栖に縄のことがバレてしまった。なんか泣いたが、黒井尚葉は何も感じなかった。生きる屍だから。この日から、家が時々綺麗になる。でも、黒井尚葉は何も感じなかった。


 食っちゃね……バイト……


 娘の身体がどんどん痩せてしまった。でも、生きている。起きなかっただけ。


 食っちゃね……バイト……


 試しに本屋の中に、何か「哲学」の本を取ってみた。何も吸収できなかった。そうだ。大切な人がいなくなったから、別に読む必要がなかった。


 食っちゃね……バイト……


 ひげが長く伸びていたから、黒井尚葉は剃った。そして、傷ついた。何も感じなかったが、今度来栖の注目で剃らなければならなかった。来栖は住み込んでいた。


 食っちゃね……バイト……


 三年が経った。


 ****


「あの……さなちゃんのパパ。」前田良奈はわかる。この呼称を呼んだら、黒井尚葉は少し反応してくれる。


「……ああ、君か。たしか、ずっとお見舞いしにきた……その……」


「前田、良奈です。」


「そうそう……あれだね、良奈ちゃん、だっけ?」黒井尚葉は空虚な笑顔を見せた。その様子はいつでも消えそうだった。


「……何の用事?」


「あ、ええと、これが渡したいから……」前田良奈は一つの写真を黒井尚葉に見せた。それは黒井さな子と前田良奈の写真だった。写真の中に彼女が楽しく笑っていた。


「これは、来栖が……なのか?」


「い、いいえ、私が、渡したいだけ……」


「そっか……」黒井尚葉は受け取りたいが、力が振り絞れなかった。一度動いた手はすぐだらんと垂直に垂れた。


「ごめん、いらない……」黒井尚葉は扉を閉めようとしたが、前田良奈はすぐ話しかけて、扉の間にぐっとつかんだ。


「その!」力強く掴んだため、黒井尚葉は閉められなかった。


「……なに?」


「その、さなちゃんに……信じて。」


 黒井尚葉は何も考えてなかったが、考えたふりをして、「ああ。」と答えた。


「……閉める。」


「……はい。」


 自分の言葉が届いてない。前田良奈は知っていた。手を控えて、扉がすぐ閉めた。


 彼はずっと、屍みたいだった。


 ****


 黒井さな子を殺しかけた人は、たしか中学のクラスメートだった。白井という人が、「私は悪くない!」と叫びながら、黒井さな子と五十鈴貫太郎を殺しかけた。


 五十鈴は刺傷で、黒井さな子は落下と打撲……階段の附近に発生した争いだそうだ。


 前田良奈は悲しい気持ちで事件の概要を思い出した。事件の現場にいないため、他人の口から知るしかなかった。


 とても悲しかった。だから、三年が経った今、恐らく自分は黒井尚葉と同じく頭がおかしくなったと、前田良奈が思った。


 黒井さな子のディベート部の友達――軽井翔が言った「情報」、信じてみたくなった。一種の思い込みかもしれない。


 “「だから、たぶん部長のこのゲーム……きっと何かできるって!これは、たぶんただのバグじゃないと思うんだ!」”


 前田良奈は黒井尚葉に言いたかった。


 しかし、あまりにもおかしすぎて、馬鹿にしてると思われる可能性が高いだろう。下手すると、状況が悪化するかもしれない。


 だから……何とか動力をあげたかった。


 しかし、写真は無駄だった。


 ならば、あのゲームは本当に何ができるかと思い込んで、頑張るしかなかっただろう。


 そして、もし彼女と部長が本当にいたら、気付かせてほしい。自分たちは待っていると。


 前田良奈は軽井翔の家に行って、そこに伊原千美もいた。


「あの、進行は、どうでしたか?」


「事件性の発生の仕様がわからない。何もかも無茶苦茶になった。でも、時間だけ進んでいるのは確かだ。それと、この人物とこの人物……ゲームにないキャラクターだ。」


「……私たち、できることはないの?」


「今んところは……でも、できることは必ず――あ!」


「何?どうしたの?」


「……王族派閥の改革が起きた、それに、良くない方向……政権交代……」


「ど、どういう意味?」


「つまり、死ぬ……かもしれない。」


 三人は、見ることしかできなかった。

ロードルフ子爵のヒミツ2:

実は、甘党派。


メリー伯爵のヒミツ1:

実は、餌付けすることが好きで、贈り物はよく食べ物を送る。


メリー伯爵は時々デザートやお土産をロードルフ子爵家に持っていく。

そして、メリー伯爵はロードルフ子爵が何か好きなのかを観察することが密かに楽しんでいる。


「あら、そのイチゴはお気に入りですか?」

「はっ!こんなの好きじゃありませんよ!メリー伯爵。」

イチゴは普通かな……


「では、そのおもちみたいなものは?」

「……ふん。好きではありません。」


あ、さっきよりいい反応だわ。


「なら、今度ゼリーを持っていきますわよ。」

「……もう良い!さ、さっさと帰ってください!」


ゼリーか。じゃあ、ゼリーにしようと。


少しギクシャクな二人である。

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