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メリー伯爵はまるでやっと肩の荷が降りたように、長く、長く息を吐いた。
「十年、長かったですわ。」そう言って、彼女はふわりと微笑んだ。
十年、婚約のことかな。
「ロードルフ様。君はわたくしと初対面のことを覚えていますか?」
「ええ。覚えています。あまりいい思い出ではありませんが。」
「そして、ロードルフ様。今の君にとって、あの頃のあなたどう思いますか?」
「……あの頃の俺は、あまりにも未熟だった。そうだろう?」
「ええ、そうですわ。今も未熟ですが、その事実がわかっているだけで、一歩進みましたね。」
「もういいでしょう。早く本題を。」
「相変わらずせっかちですね。しかしまあ、わかっているなら話が早いですわ。わたくし、『不老不死』なんか追求しておりませんわ。あくまで、その場で取り繕う嘘にすぎません。君とあの子のための嘘です。」
ロードルフ子爵はあまり動揺しそうな感じがしないが、私、驚いていた。
どういうこと?ロードルフ子爵はメリー伯爵との過去を言ってなかった。何があったのかな。
しかし、「不老不死」を追求することはただの嘘……つまり、ロードルフ子爵が考えたことはないってことだろうか。
メリー伯爵はロードルフ子爵のことが嫌っていなかった。そういうこと……かな。私は若干不安を感じながら、二人の交流を見続けた。
「ふん……そうですか。でも、今も嘘ついている可能性があるでしょう。」
メリー伯爵は少し怒っているように、羽扇をスッと収まって、ロードルフ子爵に睨んでいた。
「失礼ですわね。わたくし、嘘なんか言ってませんわ。なんなら、レイヤーの子を呼んでみましょうか。あの子の話なら、君は信じるでしょう。」
「……ふん。わかりました。呼ばなくてもいいでしょう。」
しばらくの間、メリー伯爵ははぁと嘆いた。
「まあ、君に騙していたことに謝りますわ。しかし、あの頃のあなたにも問題があります。『感情的』になりすぎましたわ。わたくし、ちゃんと怒っていましたよ。」
「ふん。本当にそうでしょうか。あの頃、随分余裕そうに見えましたが?」
まるでずっとこの言葉に待っていたかのように、メリー伯爵はパッと羽扇を開けて、少し嘲笑めいた目付きでロードルフ子爵を見ていた。
「貴族令嬢たるもの、常に余裕を見せるのが、わたくしのモットです。」
「いやなモットですな。」
メリー伯爵はふふと笑い出した。
「君は本当に『心の余裕』ができましたわね。このような交流ができましたわね。」
「ええ、これは全てメリー伯爵のおかげでしょうね。」
「あら、それは何かの嫌味ですか?」
「嫌味ではありませんが、今日の空気の味なら、多少心得ています。」
「……本当に失礼極まりないですわよ。わたくし、ちゃんと三日――」
この二人が何らかの形で和解しそうな雰囲気だが、私には確認しなければならない。
(あの……とりあえず、メリー伯爵は……いい人、なのか?)
ロードルフ子爵は親指で一回返事した。
「わかっている」……というより、たぶん「肯定」の意味かな。
(もしそれは肯定的な意味なら、もう一度同じ返事してくれない?)
そして、ロードルフ子爵はもう一回親指で返事した。
そうか。つまり、屋敷の人たちと同じ感じかな。
だけど……どうしてだろう。さっき若干の不安が消えなかった。むしろ大きくなった感じだ。メリー伯爵はいい人なのに、なんで嫌な予感がするの?
さっきまでの流れを考えて、メリー伯爵は悪い人じゃなさそうだし、嘘をついて信用を取るような人でもない感じだ……過去のことが知らなかったからか?何か詳細が――
「――しかし、これでいいでしょう。君も成長しました。わたくしたちの関係も、そろそろ限界に達しましたわ。」
「……どういう意味でしょうか。メリー様。」
「あら、この話でわからないなら、やはり未熟ですわね。ロードルフ様。」
ロードルフ子爵は口答えしなかった。たぶんメリー伯爵が説明してくれるのを待っているだろう。少し動揺した感じだった。
「ふふっ……それとも、わかっている上で言っているでしょうか。」
「それはいい。さっさとその意味を。」
ロードルフ子爵はまっすぐにメリー伯爵を見ている。メリー伯爵は羽扇で顔を隠し、目の部分だけ、少し悲しげな感情が見えた。
「十年ですわよ。君の悪い噂を流し、理由付けでずっと君との婚約を遅らせていた。ずっと王族と対立した行動を取ったら、ロードルフ様もわかりますよね。」
あ、そうか。もしメリー伯爵はいい人なら……
何が悟ったように、ロードルフ子爵は言葉を紡いだ。
「つまり、お前……」
メリー伯爵は何も言わないまま、ロードルフ子爵に頷いた。
メリー伯爵は、「王族」と「対立」関係になってしまった。
黒井さな子のヒミツ3:
実は、身体を柔らかくしたい。前方宙返りが夢だったらしい。
ロードルフ子爵のヒミツ:
実は、身体が体操選手並みに柔らかくて、海老反り・開脚・前・後方宙返りができる。
ロードルフは身体の柔軟さと健康を維持するために、よく動的ストレッチと運動をしている。(騎士団の伝統。)
そして、ロードルフが騎士団に安全税を取り下げる話を伝える日、その夜。
黒井さな子は少し気になるところがあった。
(ロードルフ子爵。)
「あ?」
(あの、君の身体、柔らかいね。)
「……なんだ、突然。」
(その、前方宙返り……できるの?)
「ああ。できるが、なんだ?」
(一回、やってみませんか?)黒井さな子は、前方宙返りの景色が見たかった。
「何でだ!しない!」そして、拒否するロードルフ子爵。
(一回だけでいい。)
「……やりたいなら、自分でやれ!」
(ごめんなさい!やっぱりなし!)
「ふん!」
こんな少し気まずい二人の話である。
これで黒井さな子のヒミツが終わります!
股関節を頑張っている黒井さな子です。




