表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第一章
4/75

4

 鏡の前に質問を交わした日以来、二週間が経った。


 私はロードルフ子爵とあまり交流することがなかった。


 ロードルフ子爵は忙しい生活を送っている。


 領地の経営、財政、貿易、外交、軍事、教育……そのほとんどの事務が一人でこなしている。


 もちろん領地には、市長、町長、村長、また自治団体とかもあるが、最終判断は領主にある。


 事務は大なり小なり、ほぼ毎日送ってくる。


 重大な建設から、草の毟りまで領主に決断させる。


 一度(なぜそんな無効率なことをするの)と聞いたら、


「王国の法律だから。」と返答された。


 法律なら仕方ない。


 彼の仕事に対して横槍を入れるつもりはない。適当な助言も状況を悪化するかもしれないし。


 でも、身体が動けない。自分の身体じゃないから、何もできない。


 ずっと無作為のまま、ロードルフ子爵の仕事を見ているから、私、少しつまらなくなってきた。


 そして、人間は退屈になると、余計な考えが増える。


 (私、何でここにいるの?)


 (私、本当に生きているの?)


 (誰か教えて、私は何のためにこの世界に生きている?)


 ぽん!と強く叩いた音。


 ロードルフ子爵が拳で机を叩いた。その手の痛みも私に伝わってきた。


「うるさい!意味のない質問をするな!」


 (すみません。ただつまらなくて、つい考えてしまった。)


「は!勉強はそういうものだ!楽しく勉強したいなら、王族の宮廷闘争に巻き込まれろ。」


 ……?変な言い方だな。


 (私は勉強しているの?)


「はあ?お前学生だろう?なら勉強するのは学生の本分だ。」


 そうだけど……しかし、私が聞きたいのはちょっと違う。


 (私……今勉強できないよ。)


 ロードルフ子爵が私の言葉を聞くと、ビクッと動きが止まった。


 そして感情も伝わってきた。怒りだ。


 ロードルフ子爵は無言のまま、鏡の前に立った。


「貴様、ずっと俺様の身体にいるつもりか?」あの怒りの目つき、鏡を通して私に向けてくる。


 (そのつもりはないよ。)


「なら、さっきの回答はどういうことだ!」


 (そのままの意味だよ。勉強できない。)


「……もう一度聞こう。貴様、ずっと俺様の身体にいるつもりか?」


 何となく察しがついた。そして、この問題はさっきと同じ回答じゃ絶対ダメ。


 (もし原因が知りたいなら、その質問を変えてくれない?)


「言葉遊びはどうでもいい!俺様が何か言いたいのは貴様も知っているはずだ!」


 はあ……


 (だから?)


「はあ?」ロードルフ子爵は拳で鏡を叩いた。その力が凄まじく、鏡にもヒビが入った。


 もちろん、痛い。感情や感覚も共有しているから、私も分かる。ロードルフ子爵は怒りのあまり、全身が震えている。


(ロードルフ子爵、あなたが怒っていると、知力が下がっているようだ。そして、すぐ暴力に頼る癖がある。)


 その癖のせいで、自分の身体でも容赦はない。


 もちろん、身体の中に「私」がいるから、「私」に対して怒っているのはわかる。


 今は人がいないけど、外人から見れば、突然怒りだしているにしか見えない。そして自傷までする。


 本当はお節介とかしたくない。ロードルフ子爵の態度も悪いから、あまり関わりたくない。


 だから、あまり交流しなかった。


 この二週間、一緒に暮らしてきたようなものだ。彼の人となりも、言いたいことも何となくわかる。


 恐らく、彼の意味は「俺の事務を見て、少しても学習をしろ!勉強しろ!」ということだろう。


 でも、それに従う義理はない。


 なぜなら、私は「ロードルフ子爵」ではない。「黒井さな子」だ。


 ロードルフ子爵がずっと無言のまま、「私」を睨んでいる。


 ずっと怒るのもさすがに私も影響されるから、説明するか。


 (私たちは協力する義務はあるかもしれないが、君の言うことに従う義理はないよ……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ