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翌日。メリー伯爵と面会する日。
面会の場所は、領主家の中に「応接間」、また「交流室」とも呼ばれている一階のところだ。
普通なら、貴族と面会する場所は領主家の近くにある会館、「領事館」――また「貴族館」とも呼んでいる場所にするらしいが、「婚約」の関係もあったから、ある程度の手間が省いてもかまわないと。
正直、私は「貴族との面会」って言ったら、イメージとしてはやはり「派手さ」の印象があるが……ロードルフ子爵は全然その「派手さ」を感じさせなかった。逆に「事務的」しか感じない。
私にとって、これはかなり好感度を持つポイントだが――
「あら、ロードルフ様。この家、相変わらず随分余裕がある空間ですわね。何も変わっておりませんわ。」メリー伯爵にとって、そうではなかったらしい。
メリー伯爵は大きな馬車に乗って、昼頃に来たのだ。ロードルフ子爵と簡単な挨拶をした後、あまり言葉が発せず、早々ロードルフ子爵家の応接間に行ったら、メリー伯爵が発する一言はその嫌味だった。
実際、ロードルフ子爵と使用人たちはすでに前から準備し回って、今朝からずっとメリー伯爵の到来を待っていた。確かに派手さはないが、決して失礼ではないと思うが……そこは価値観の違いかもしれない。
会話するのは私ではないから別にいいが、メリー伯爵のこの嫌味……ロードルフ子爵はどう対応するの。
「それは申し訳ございません。こちらとしては空間が余るくらい時間が大切ですので、もしよろしければ、是非メリー様のご意見を伺いたいです。」
「わたくしの意見?すでに申し上げましたわよ。それとも、わたくしに調達させてほしいという意味ですか?自分の身分をわきまえなさい。ロードルフ様。」
「……確かにおっしゃる通りです。誠に申し訳ございません。メリー様。」
「よろしい。さあ、紳士らしくエスコートしなさい。」
自分の顔が見えないから、ロードルフ子爵今どんな表情なのかわからないが……心からこみ上げてきた「感情」が感じられる。怒っているより、悔しさのほうが大きい。
ロードルフ子爵は少し不満な感じで、軽くメリー伯爵の手を引きつれて、応接間のソファーに座らせた。
メリー伯爵は外見が貴族らしい格好をしている女性だ。時々羽扇を持ちながら、口元の部分を遮って、少し嘲笑めいた目付きでこちら(ロードルフ子爵)に見ている。
でも、外見より、一番印象的なのは彼女の「複雑な匂い」だった。
かなり濃い。それは香水と「何らか」と混ざっている匂い、その匂いは何なのかがわかっている。
パパが忙しくて、三日間もお風呂してない時の匂いと同じだ……つまり一種の体臭。
(……すでに衛生法たっていたのに、彼女、身体を洗わなかったの?)
私の言葉にロードルフ子爵が返事するわけがないが、
「メリー様、何が話す前に、あなたに一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」ロードルフ子爵はメリー伯爵と距離を取った位置に座った。どうやらロードルフ子爵も嫌いだったらしい。
そういえば、彼は使用人たちにも毎日の清潔を要求していた。汗の匂いに対して結構敏感だった。
「あら、あなたにしては珍しいですわね。いいですわ。何が問題でも?」
「メリー様が入ってから、今日の応接間の空気、随分と芳しいになりましたが、メリー様には何が心当たりは?」
メリー伯爵はスッと一瞬羽扇を収まって、またパッと開け、怒っているように目の部分だけ覆わなくて、こちらに見つめている。
「……失礼極まりないですわよ。」
「しかし、以前よりかなり刺激的な香りです。もしかして、誰かの『不老不死』の進言とでも?」
「……本当にあなたにしては珍しいですこと。ロードルフ子爵。ええ、そうですわ。『不老不死』のことですよ。」




