9
「正直、まだはっきりとしない。どう言うべきか俺もわからん。だが、『人』ではないと、俺の気持ちがそう言っていたかもな。」
ロードルフ子爵はそう思いたかったのかな。
でも、これはどう考えさせたほうがいいだろう。彼は考えたほうが、気持ちへの理解が早いと思う。
(うん。そうね。確かに少し難しい……では、なんで「犯罪者」は「人」ではない理由を述べてくれる?理由は外見だけじゃないのはわかっている。だが、他に何か理由があるの?)
「そうか。言ってもいいが、少し気になることがある。お前にとって外見だけじゃない理由もあるのか?」
(ええ、そうだよ。でも、今話すと話がそれるので、聞きたいなら、また後で話そう。)
「ああ。いいだろう。で、俺の理由は簡単だ。ずっとそう教えられたからだ。
『あいつらは人ではない。』
『死んでもらった方が安全になる。』
『余計な同情はいらない。』
ずっと似たような言葉でそう教えられてきたんだ。クソ親父の教えはあながち間違ってはいない。確かに『犯罪者』を野放しにしたら、治安のためにはならない。クソ野郎もいたからな。」
(そうなんだ。理由がわかった。では、ここで私の理由を――)
「待て。」ロードルフ子爵はここで私の話を止めた。
待て……今まで大体強引に話を挟むくらいの感じで喋ったけど、“待て”が言えるようになった。
(どうした?)
「一つ言ってもいいか……いや、俺が『言いたかった』――これは、『気持ち』なのか?」ロードルフ子爵は少し目を閉じて、恐らく「何か」を感じている。
考えてもわからない時、感じる。今、彼は「気持ち」への理解が深まっていた。
彼のこの「気持ち」、前にもあった。何が「言いたい」気持ち。ただ、あの時、彼は「気持ち」のことがわからなかった。
こんなに早く理解できるのは私のせいだ。私がミスしてしまったから。元々ゆっくりで教えるつもりだったが……
(……ええ、そうよ。それは何が「やりたい」という気持ち。今の君は「何が言いたい」気持ちがある。)
「そうか。」
(それで、何が言いたかった?)
ロードルフ子爵は目を開けた。
「昔のことだ。少し長い話かもしれん。話もそれるかもしれん。」
(うんん。言って。言いたい気持ちがあるなら、無視するつもりはない。)
「そう。
俺は初めて『犯罪者』を殺す時、アイツ――クソ親父が一人の『犯罪者』を俺の前に連れてきて、こう言った。
『お前のために選んだ。こいつは一人の男性を殺した。その殺された男性には三人の家族もいた。
こいつのせいで、あの家庭は今もろくな生活が送られていない。罪はすでに承認済み。さあ、殺せ。』と。
当時、俺は確かに躊躇ったんだ。なぜなら、『犯罪者』がこう言った。
『俺は確かにやった……だが、それはアイツが俺の妻を強引にヤったんだ!俺は間違っていない!俺の妻がアイツのせいでろくな生活ができなかったんだ!アイツのせいだ!俺には妻一人しかないんだ!大事な人だ!』と。」
(まるで、「トロッコ問題」だな。)部活の時、翔君がとても興味津々で言ったから、何となく覚えている。
「『トロッコ問題』?」
(ええ。例えば、一つのトロッコが間もなく来るとする。
そして、トロッコが向かった先に、二つの方向があった。一つは一人の方、もう一つは五人の方。トロッコが向かった先に人が必ず死ぬとする。
では、一人を救うのと五人を救うのとどっちを選ぶという問題なんだ。)
「なるほど。俺の話を聞くとそれを思い出すということは、単なる一人と五人の差じゃないだろうな。他に条件があるのか?」
(そうだね。理解が早い。でも、ずっと言い続けると話がそれるから、いいの?)
「そうだな。確かにややこしくなるかもしれん。話を戻る。
その当時、あの『犯罪者』の言葉は俺にとって難しい話だ。だから、俺は迷っているうち、クソ親父に助けを求めたんだ。
でも、俺の躊躇いにクソ親父がこう言った。
『何を迷っている。この場の取り繕う嘘でしかない。さっさとやれ。』と。
その時、俺はわかった。俺には選択肢がなかった。
俺はクソ親父の言う通りにやった。やるしかない。」
もっと他に方法があるだろうと、彼のクソ親父が教えてなかった。牢屋があった。だが教えなかった。「気持ち」を捨てるために。
(……あの妻と、三人の家族はどうなった?)
ロードルフ子爵は珍しく「ふん」と無力な笑いをした。
「俺はあの『犯罪者』とその家族のことが気になって、真相は一体何なのかとクソ親父に聞いてみた。
でも、クソ親父は『知ってどうする。お前の気持ちなんてさっさと捨てろ。覚えておけ。お前は貴族だ。人ではない。』と言った。
クソ親父に聞いてもわからなかった。だから、俺は自分で見に来たんだ。」
(外出は許されるの?)
「それぐらいできるさ。目的を言わなかったけど。」
(なるほど。)
「で、あの『犯罪者』の妻が死んだ。どんな理由で死んだのかわからない。俺の推測ではたぶん餓死で死んだだろう。
見た時、彼女はすでに皮一枚で、死体の腐臭が漂っている。その匂いが今もはっきりと覚えている。死んだ事実はちゃんと残っている。
反するに、その三人の家族がいい暮らしをしてきた。クソ親父の話では、三人の家庭はろくな生活が送られていないはずだった。
ここで俺は気になって、三人の家族に聞いてみた。
そして、『犯罪者』が殺した男性は、実はずっと家計を乱す、家族にも暴力を振るう人間だったらしい。
外で女を見つけたら、裏路地に連れて乱暴するという『武勇伝』を聞かされたと。最後聞かされた武勇伝は、『犯罪者』の妻だった。名前も一致しているからな。
それで、後のことは、その『犯罪者』が男性を殺し、騎士に見られて、連れてこられたってわけだ。」
話はここで終わった。正直、胸糞悪い話だ。嘘なら嘘でいい。ただの作り話なら気にする必要はない。
(何で、クソ親父はその「犯罪者」を選んだの?)
「一番簡単に殺せるからな。そして、俺の『教材』にもなれるから。」
(そう……言ったの?)
「ああ。『貴族』の交流方法を学んだ後、俺はその交流方法を応用するために一度だけ聞いてみた。何で真相を知る必要がないかと。
そして、
『まさか、あれ以来、お前は何も成長してなかった。
あれはお前のために選んだ教材だ。感情なんて捨てろ。お前の気持ちなんかいらない。
貴族では、必要なのはお前の気持ちじゃない。まだわからないのか。
お前は真相を知って、どうした?お前は何ができたのか?
何もできなかっただろう。
多数の幸せのために、真相なんていらないことだ。さっさとその気持ちを捨てろ。』
は。多数の幸せのためにね……確かにお前の『トロッコ問題』に少し似てるかもな。
その無感情な言葉と口調はとても鮮明だった。今にも覚えている。不快な低い声……気分が悪い。」
苦しい感情。ただの感情じゃない。自分という人間が無視される感じだ。まるで、「道具」みたいに見られている感じ。
ただの「道具」に過ぎないと、私はずっとロードルフ子爵からそういう感じがした。こういう過去があったから、彼自身も自分にそういう風にやってしまったんだ。
本当に、クソ親父だ。「貴族」としての役割が果したかもしれない。しかし、「人」のやり方じゃない。
(……話はわかった。確かに、気分が悪くなる。)
「ふん。俺が言いたかったんだ。それに言った後、何となく和らげる。これが気持ちの整理ってことだろう。」
(そうかもね。これに関しては、君しかわからないことだから。)
「ふん。」
(では、これは君が「人」を殺したくない理由だね。)
「……そうだな。これは俺が『人』を殺したくない理由だ。」
(では、どうして「犯罪者」は「人」ではないの?)
「それは……そっか。これは『気持ち』か。だからお前が言ったんだ。“お前の気持ちとしては“と。
俺は、『犯罪者』は『人』ではないと思いたかったんだ。俺の『気持ち』としては、『犯罪者』は『人』ではないことだ。」
(ええ。とてもあいまいな言葉だが、この「気持ち」は価値観に近い意味だな。)
「ふん。本当によく知っているとあいまいな言葉だな。」
(ええ。だから知る必要がある。じゃないと、「人」として必ず支障が出る。)
「はっ!確かにな。あのクソ親父のようにな。で、後はどうする?大体整理できたんだぞ。」
(あとは、やりたくない気持ちのことを考えた方がいいかな。でも、その前に、私は言わなければならないことがある。)
「何だ。」
(ごめんなさい。)
気持ちについて、恐らくロードルフ子爵も大体わかった。私も、私のミスについて謝らなければならない。
なぜなら、「意志」――これこそが「気持ち」の本質の部分だ。
はーい。良い子の皆さん~小話の時間ですよ。
本篇と関係ない人物情報の時間でーす。
四コマ漫画みたいな感じで見て頂ければ幸いです。
黒井さな子のヒミツ2:
実は、漫才好き。少しボケたがる一面があるが、ボケするの下手。
高校1年
黒井さな子は前田良奈と仲良くなって、友達となった。
黒井さな子はよく一緒に前田良奈と家に帰る。家に帰る途中、少し話題が広がっていき、黒井さな子はここだとボケたがっていた。
「――そういえば、良奈ちゃん。」
「うん?」
「実は深海魚では、サナという魚がいるの。」
「へ――そうなんだ。」
「うん。それで、この魚は魚体が黒くて、女の子だ。」
「あ!はい……」前田良奈は何かに気付いた様子。
「この魚は自己紹介する時、どう自己紹介すると思う?」
「わからないね。」前田良奈は微笑みをしている。
「“私はくろいさなこです”という自己紹介するの。」
「そうなんだ。おかしい魚だね。」
前田良奈は突っ込んでくれなかったことに、黒井さな子は少し落ち込んでいる。
「えっと……冗談です。ごめんなさい。そういう魚がいないです。」
「あ、し、知ってるよ!面白いと思う!」
「……そうなの?」
「……ごめん。今度、一緒に私の家でお笑いを勉強しようか?」
「……わかった。」
そして、黒井さな子は前田良奈とその妹とパジャマパーティーをした。少し気まずくて、ほのぼのとした話であった。
ちなみに、いいねと☆の評価をくれたら、励みになります!
よろしくお願いします!




