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「さっきみたいな言い争いになるとは思わないか。」
(可能性は確かにあると思う。でも、お互いの価値観はすでにわかった。気持ちを整理するためなら、この問題は一番だと思う。大事なのは無視しないことと押し付けないこと。)
「あっそう。」
(では、お手本として私から先に言おう。まず、私の気持ちとして、たとえ「犯罪者」でも「人」であることだ。そして、私は「人」を殺したくない。)
「……ああ。これはすでに知ってた。だが、「人」を殺したのはお前ではない。俺だ。」
(そうね。他人から見ても、君自身としても、このことは間違っていないだろう。私もそう思いたかったが……できないことだった。あの時、「感覚」が共有していたから。)
「でも、今ならできる。そうか?」
(ええ、そうだよ。なぜできるか私もわからないけど、多分君の「主導権」と同じく、突然できるようになったんだろう。)
「あっそう。」
(うん。この話はいったん置いといて、大事なのは私たちが「感覚」が共有していたことだ。
私たちはお互いの「気持ち」・「感情」・「知識」、また「考え方」も、これらはある程度「意識」すれば、共有できないんだ。
でも、君の「身体」の「感覚」だけ、「意識」だけじゃどうにもできないことだった。)
「ああ、そうだな。一度だけ、お前に変わることがあったな。その時、お前の『頭痛』と『痛覚』の『感覚』が俺よりひどかった。」
(え?そうなの?私にとって君が傷を負えば、どれも痛かっただけだが……)
「どういう問題なのか俺も知らん。だが、俺にとって手の傷なんて精々かすり傷だ。そんなに痛がらない。」
(そうなの……?)
「俺にとってはな。」
「痛覚」の「感覚」は人格によって変わるものなのか?そういえば、その多重人格の本にも書いた。人格が変われば、書ける文字、口調、言い方も別人になることがあるらしい。ならば、痛覚もあながち間違いじゃないかも……
あ!もしかして、身体が「私」に変われば、「日本語」が……書けるのか?
いや、待て、今は……
(……いや、また話が逸れてしまいそうだった。今はその不明な部分は置いといて。)
「あ?お前が先に言ったんだろうか。」
(それは……ごめんなさい。とりあえず、私たちは「感覚」が共有していた。そのせいで、お前がやったら、私まで同じような「感覚」があったんだ。)
「……おい。」
(何?)
「ずっと『感覚』って言ったら、少しわかりにくい。整理したいなら、もっとわかりやすくしたほうがいいじゃないか。」
(そうね。じゃあ、「感覚」の共有だから、しばらく「共有感覚」で呼ぼう。)
「つまり、『共有感覚』で、お前まで『人』を殺すことになった。そうだな?」
(ええ。私にとってそういうことになっていた。もちろん事実上では、私はやってなかったが、感覚はどうしても残るし、記憶も残っている。
だから、突然隠れられるようになると、私もずっと隠れたままだった。)
「ふん。わかった。で、あとは俺が言ったらいいのか?」
(そうだね。手本はこんな感じかな。あと、質問が制限されていないので、聞きたいことがあれば聞いてればいい。)
「なら、俺は確かに質問したいことがある。」
(はい。いいよ。聞いてね。)
「……言い方少し不快だな。まあいい。お前は『人』を殺したくない。これはわかった。
だが、『犯罪者』は害をなす人だ。
一番簡単な例でいい、『暴力』だ。
お前に『暴力』を振るう『犯罪者』に、お前はまだ『犯罪者』のことを『人』として見るつもりか?」
(ええ。間違いなく「人」として見るよ。もちろん私は「暴力」を振るう人間は嫌いよ。でも、「人」として見ることと、その人間が「嫌い」かどうかは別のことだ。つまり、「気持ち」のことだ。)
「……なるほど。ここの『気持ち』は『価値観』に近い意味だな。」
(さすがロードルフ子爵。理解が早い。)心の中で拍手。もちろんただのイメージだけど。
「お前……ふざけてるのか。」
(これは本心だよ。)
「チッ……で、もう一つ聞きたいんだが、仮設の話でもいいだろう?」
(いいよ。「ディベート」ではどんな質問でもいいから。)
「あっそう。では、もしお前は『犯罪者』と出会ったら、どう自己防衛するつもりだ?」
なるほど。防衛手段が聞きたいだね。
(そうね。私は領主ではない。一般の学生だ。当然戦闘手段もない。だから、私の防衛手段は「助けを呼ぶ」・「他人の注意を起こす」、そして「逃げる」。この三つだ。)
「……そうか。情けないと思わないか?」
(ないね。むしろ助けを呼べるのに、呼ばないほうが情けないと思う。)
「そう……」
ロードルフ子爵はしばらく反芻して、静かになった。
(もう質問がないの?)
「ああ。もうないんだが、やはりもう少しわからないことがある。でも、確かにこの方が整理しやすい。」
(良かったじゃん。)
「だからその態度不快だな。お前、変わりすぎないか。」
(違うよ。今までの君がひねくれすぎるだけ。話し方も君と合わせていたんだよ。)
「はあ?お前……気持ち悪ぃな。」
(ありがとうございます。)
「褒めてねえ!」
(知ってる。)
ロードルフ子爵は「チッ」と舌打ちをしたが、でも彼はそんなに嫌いじゃなかった。そもそも、似たようなくだりがよくあったから、彼が嫌だったら私は最初からしない。
「では、俺の番だな。」
(ええ。)
「俺の気持ちとしては、『犯罪者』は『人』ではないことだ。」
しばらく重い雰囲気が続いているかもしれません。
そのため、本篇と関係ない人物情報を提示しまーす。
いわゆる小話(?)、ヒミツみたいなものです。
(”ツヴァイ”というゲームが大好きです。)
小話は四コマ漫画みたいな感じで見て頂ければ幸いです。
黒井さな子のヒミツ(1):
実は寝相が悪くて、よく寝癖がつく。髪型は大体パパがやってくれる。
中学の時。
黒井さな子は寝起きで、歯磨きの後。
「パパ~櫛……」
「ああ、はいはい。またすごい髪型になってるな。」
「うん……」
「ああ!待て待て。やってあげるから、そっちに座って。朝ごはんはもう用意してあるから。」
「わかった……」
黒井さな子はフラフラと小さな机の近くに座って、朝ごはんを食べた。パパはその寝癖を直してあげた。ほのぼのとした二人の親子であった。
髪型はこんな感じ。




