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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第三章
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1

 翌日になった……と思った。


 目?を開けて、知らない空間だった。見覚えないところ。狭くて、窮屈な空間。


 でも、何となく空があるような、ないような……気がする。靄がかかって、あまり認識できなかった。


 外なのか?違う。一瞬頭からよぎった考えをすぐ否定した。


 また、景色は自分の「目」で見たものなのかはわからない。自分の身体の様子を確認したかったが、手も足も見えない。恐らく、これは普通の視覚情報ではない。


 そして、試しに自分の身体を動いたが、「動いた」と思った。しかし、それも確認できなかった。


 どうやらここでは、全ての五感が朦朧もうろうのまま、はっきりとしない。


 絶対怖くなるはずの感情が不思議と落ち着いている。


 ここはどこなんだろう。私はどうしてここにいるの?


「変だな……あれ?」自分の声が出せる。何で?


 いや、これも普通の聴覚ではない。これは「黙読」に近い声、いわゆる「心の声」みたいなものだろう。


 現に「聞く」というより、「感じる」と言ったほうが正しい気がする。


 自分が質問した問題を、自分が解決した。


 おかしいけど、落ち着いている。怖くなるはずだったけど、冷静だった。何もかもあやしいところに、正常だと思っていた。


 だが、明らかに変だ。


 私は「フラフラ」という感じで、この「空間」に「歩いてみた」。まるで「想像の世界」に迷い込んだ感じだ。でも、悪くない。


 少々不気味な空間だが、落ち着けられる。


 そして、一歩「歩く」たび、何かが自分の「身体」に入った。


「瞑想」、「心の空間」、「潜在意識」、「並存」、「ルール」、「自分を守るための手段だ」。


 あ、そうか。ここは「心の空間」だ。明確な空間ではない、イメージされたところなんだ。だから「五感」より、「感覚」が一番感じやすい。


 では、なぜ私はここに?この心の空間は誰が作ったの?私?ロードルフ子爵?いや、一人だとあまりピンと来ない……まさか、「私たち」――ええ、そうね。これが一番しっくりくる。


 どうやって作ったと思った矢先に、また答えがすぐ出てしまった――「ルール」だ。


「ルール」によって作られた「心の空間」だ。だから、落ち着けられる。


 では、本題:私はどうしてここにいるの?


 この問題だけ、答えが出てくれない。


 いや、答えがあった。


「思い出したくないことがあるから」


 何のことだろう?一体何がおきたのか?


 私は少しずつ、自分の記憶を探ってみた。


 ****


「おい。心の準備はまだか?」


 (……ごめんなさい。やはり無理みたい。)


「どうしてだ?一体何に怯えている?ただの恐怖心じゃないだろう!」


 (それは一つの要素だけじゃない!)


「なら、一つずつ言うんだ!説明するなら、そのぐらいできるだろう!」


(そうね……まず、自分が消えそうな感覚だ。これはロードルフ子爵も感じたことがあっただろう。)


「ああ、確かに最初の時にそういうことがあったな。気持ち悪ぃんだ。だが『ルール』を決めたんだろう。お前のことなんか干渉するつもりはない。」


(もしそれだけならまだいい。問題は「気持ち」のことと一つの「推測」なんだ。)


「また『気持ち』……それはわかった。『推測』は何だ。」


(これはあくまで仮設の話だ。もし、「私」がよくあなたの身体を貸して、あなたの「身体」に馴染んでしまったら、私は「私」でいられるのか?)


「……はあ?」


(人格にも整合や融合の話がある。もし、あなたの身体に馴染んでしまったら、私は戻れない可能性が十分ありえる。


 もちろん確証がない。だが、私の直感がそう伝えた!「慣れてはいけない」と。)


「直感……」


 (ええ、直感だ。あなたが信用できなくてもいい。でも、私はこの「直感」を信用するつもり。)


「それは何の直感だ。命の危険か?俺と『自分が消えそうな』感覚と似てるのか?」


 (うん……たぶん「自分が消える」というより、「自分じゃない」感覚のほうが似てるかもしれない。)


「『別人になる』という感じか?」


 (そうね。そのほうが一番しっくりくる。)


「そうか。だが、自分の文字が書けるかどうか、これも大事なことだろう。やれることが雲泥の差だ!


 それに、仮設の話と言ったか。では、お前は馴染まざるを得ない状況だったら、どうするつもりだ?俺が消えたら、お前はどうするつもりだ?」


 (それは……)


「お前は何に対して心配しているのかわかった。だが、仮設の話に前提を知る必要がある。お前の前提は『直感』しかないんだよ!」


 (わかっている!だから心の準備が必要だ!やらないとは言ってない!)


「チッ!もういい。進展がなさすぎる!俺は仕事する!」


 (ええ、早くそうしてください。)


 ****


 ううん……これじゃない。この記憶じゃない。


 確かに少し苛立ちしたけど、ここに入る理由にならない。


 もっと、もっと嫌なことだったはず……


 私はまた記憶を探ってみた。

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