12
幕間の編!
変な感じだ。
まるで自分の身体じゃない感じ、何かから解離しているような感じ――俺はどうしたの?
最初、フワフワな感じなんだが、突然何かに吸い込まれていたような感覚……
「――」
そして、変な声が聞こえた――聞こえた?あまり形容しがたい声……
「お―い。」
(あれ……?)突然、目の前が明るくなった。
いや、もっと正しく言えば、「俺」が「目を開けた」。自分の意志じゃなく、「何か」の強い力で強制的に開けさせられた。
「おい。おきたか?」幼い男の子の声。
何が起きたのか、少々頭が追い付かない。
(えっと……?見覚えのない天井、華麗な黄金の装飾……ここはどこだ?)
「お!おまえ、ちゃんとはなしができるのか?」
「え、話しって……」言ったそばから、俺の口が自分の意志に反して、他の言葉を紡いだ。
「ちょっと、よのくちでしゃべらないでくれる?考えるだけでいい。」
え、なにこれ……こわっ!口が勝手に動いた!それに、このフカフカな感じ、俺のベッドじゃない!
俺は周りが見たいけど、何だか強い力が「俺」のことを操っているように、自分の意志では動けない。
それに、考えるだけって……読心でもできないだろう。
(それに、考えるだけって……読心でもできないだろう。)
「ほら、できたんじゃん!」
ええ?「俺」が考えたことに対して反応した。
おかしい……いや、むしろ、自分が考えて、自分が返事しているような気分――
(おかしい……いや、むしろ、自分が考えて、自分が返事しているような気分――)
「おまえ、はなしがおおいな。はあ、しかたがない。げんじずをみせてあげよう。」
かわいい声とともに、「俺」の身体が勝手に起き上がり、俺の意志に背いて、ベッドから降りた。
俺の視野はこんな低いだっけ?いや、違う……もっと大事なことがある。
ここはどこだ?俺の部屋じゃない!
何もかもがおかしすぎで、俺は思考放棄になりそうだった。
「さあ、カガミをみて。」だが、この一言で、「俺」は自分の意志を取り戻した。
(何この美少年!)
「俺」の目に映ったのは金髪の美少年だ。「俺」の面影が何一つも残らない。
「おお、おまえ、みるめあるな!」金髪の美少年が目を細めて笑った。かわいい。ショタコンの姉さんが見たら、一目でぶっころだろう。
でも、なんだろう。金髪の美少年はまるで「俺」に話しかけているようだ?あまり現実性が感じられないな。
(何これ。「俺」の姿?)
「ちがう!よのすがただ!」
(あれ……おかしいな、鏡の人が喋っているけど、まるで「俺」に話かけているような――)
「もちろん、おまえにはなしかけているのだよ。よのなかにいる『おまえ』にな。」金髪の美少年が頭を頷きながら話す。
(うんん……だめだ。俺には無理な話。)(話がぶっ飛び過ぎで、理解できない。)(これは夢なのかな?)
「おいおい、あきらめるのがはやすぎない?それと、かってによのからだに入ったのはおまえだよ。」
(ええと、まず情報整理させていい?)
「いいよ。」あっさり。
(では、そうだな。まずあなたは誰なのか、教えてくれる?)
「しらないのか?『ぼく』はすぐ王位につぐおとこ、『ベル王子』だ!あ、まちがえた。『よ』だった!さっきのなし!もういちど、自己しょうかい――」
「ベル王子」、なんかどこかで聞いたことがあるような――あ!まさか!
(もしかして、国の名前は「ランド王国」という……)
「おお、わかっているじゃないか!そうだ。『ぼく』はこの『ランド王国』の王子、ベルさまだ。あ!『ぼく』じゃなく、『よ』だった。」
自分で「様」付け……っま、どうでもいい。
それに、もっと大事なことがある!
(では、最近、公爵とか宰相とか、あるいは臣下たちから……どんな人でもいい。「反乱」ということに聞き覚えは?)
「え?ないなぁ。そもそもここすうじつ、誰とあったこともない。せいぜいすうにんの侍女たちだけだね。」
やはり!
俺の推測が正しければ……
恐らく、ここは「王国の内政ゲーム~自分の国を作ろう!~」というゲームの世界だろう。
ふざけているようなタイトルだが、実はゲームの内容はとてもハードコアな内政ゲームだった。
ファンタジーなし!政治、政策、経営、軍事、外交、教育、衛生、医療……などなど、開発のスタッフが全ての心血を全部「内政」に注いだって感じだ。開発スタッフが内政に対しての態度・精神、そして作りこみがとても素晴らしいものだと思う。
「弁士」の先生にも勧められた一つのゲームだ。実際遊んでみたら、確かに面白かった。
しかし、作りこんだこのゲームの評価が賛否両論だった。一番否定されているのが「ゲームに政治の事情とか持ち込むな!」とのこと。内政ゲームにそんなことを要求するのはどうかと思うけど……まあ、「政治」のこととか知りたくない人たちだろう。
生活中よく「政治」のことがあるのに、委員長の投票とか、部長とか、生徒会とか……
いや、そんなことより、「ランド王国」のことだ。
「ランド王国」は「チュートリアル」で、プレイヤーに「民心」と「政策」の大事さを教える、必ず「破滅される国」であったのだ。
そのストーリーは、ランド王国の王様が信頼した「公爵」と「宰相」によって暗殺され、まだ七歳も経っていない王子が強制的に国王になったという。
当然、王子は何もわからぬまま、「公爵」と「宰相」に操られ、国も好き放題むちゃくちゃにされていた。
そして、民が反乱する寸前、「公爵」と「宰相」も逃げていた。全ての罪や過ちなど、王子になすりつけて……
ランド王国が破滅された際、“あなたが信じる人は必ず裏切らない保証がない。たとえそれは忠誠な臣下たちでも。そうならないように、必ずいい「規則」を決めて、良い「政策」で民の心を掴めよう!「民心」だけはあなたに裏切らない!”と、この若干哲学な思考が混じったメッセージが出て来る。
それでその後、プレイヤーが国を作る時間だった。ランド王国は跡形もなく、完全になくなった。
俺の記憶が間違っていなかったら、その王子の名前は「ベル・アイランド」という名前だった。
プレイヤーの「人物の紀伝」では、「チュートリアル編」で王子の顔の記述もあった。
“金髪で美しく、美少女に間違えるほどの美少年”とのこと。
どう考えても、これは異世界だろう。
そして、俺はこの「ベル・アイランド王子」の身体に入ったってことだろう。
また、必ず破滅を迎える国……どうしようかな。
「ねえ、さっき、おまえが『反乱』といったな。」金髪の美少年が話しかけてきた。
(え、ああ、うん。)このタイミング……なんか良すぎないか?
「そうか。やはり、このくには『はめつされる』の?」金髪の美少年は鏡を通して、「俺」を見ている。
(え?もしかして俺、全部「言いました」?)「言ってなかった」と思うが。
金髪の美少年は頭を横に振った。
「ううん。いってない。でも、うすうす『感じる』。なにか『考えている』って。あと『反乱』もいったから、何となくそうじゃないかっと。
それに、侍女たちもおなじようなことをいってた。そのめには『どうじょう』のかんじがした。」
なるほど。たとえ子供だと言っても、わかるものはわかるんだな。王子ならなおさら。
でも、「感じる」って、どう感じるだろう?
(そうか。そうですね。少し言いづらいですが、この国は民の反乱によって、破滅されるかもしれません。)
「……そう。」金髪の美少年は落ち込んでいた。
直言した罪悪感が俺に謝らせたくなってきた。
(ごめんなさい。)
「ううん。おまえのせいじゃない。たぶんこうしゃくとさいしょうのせいだろう。」
(わかっているんだ。)
「うん、今となったら、そのぐらいよもわかっている。『ちちうえのしんか』だ、たぶん『うらぎらないだろう』と……『うたがい』を、じぶんの『気持ち』をむししてきた。」
賢い子だ。俺にはどう考えるべきだろう。
(……そうですか。)
「だから、これはよのじごうじとく……」
(……難しい言葉がわかっていますね。)
「侍女たちがおしえてくれた。」
なんという侍女だ!
でも、どうしよう。見殺しにするのもアレだし……かといって、俺には何ができるのか?
(どうしよう。)
「うん……わからない。でも、いままでなにもできないから。さいごは、ちちうえのように、おうさまらしくしんだほうがいいだろう。」
たとえどんな運命でも、受け入れよう。これは王のさだめ……ちちうえのことば。ぼくも、はめつのうんめいをうけいれよう。↑
↑これは、王子の「考え」だろうか。漏れている……
(あの……そういえば、どうして王子様が「俺」のことがわかります?)
「あ、けいごはあまり使わなくてもいいよ。なんかおまえがいった感じ、ちょっとぎこちない。」
(すみません……あまり敬語が慣れていなくて。)一応部活の部長をやっていたけど、やはり敬語が難しいから……
「ううん、いい。ゆるそう!それと、おまえのことはあれだ。」視野が鏡の前から、ベッドの方に向かった。そのベッドの上に一つの本があった。
(あれは?)
「ええと、本。」そして、金髪の美少年はベッドの本を手に取り、表札の部分を見せてきたが……
(うわ、全部「線」だな。)
「『せん』?でも、ぼくはわかるよ。さてはおまえ、字がよめないな?」
(いや、字が読めるけど、これは「線」――あ!)
そういえば、ゲームの中では、「本」とかいうものは「知識力」を上げるための道具だった。「イベント道具」でなければ、ほとんどの内容が設計されなかった。
あ、だから七歳にしてはこんな賢いなのか!「本」を「読んだ」から!
「あって?どうしたの?」
(ごめん。俺は字が読めなかった。何が書いてあるの?)
「そうか。本の名まえは『しんりフレンド~そうぞうのともだちを作ろう~』という名まえだ。つまり、おまえはぼくの『しんりフレンド』だ。」
(……何という本を見ているんだよ!)思わず突っ込んでしまった。
「え、これは侍女がくれたものだよ。『最後ぐらい、この本でいい思い出を作ろう』といった。」
……嫌な侍女だな。もっといいものがあるんだろう!イマジナリーフレンドと遊んでっていう意味だよ!
「やさしい侍女だよ。」
(……優しいのか?)
「すくなくとも、ぼくからはなれようとしなかった。」
(……そうか。そうだな。)
「うん。」
(そういえば、やはり俺は何が考えているのかわかるのか?タイミングが良すぎるというか……)
「ううん。ちがうよ。あの、この感じかな。」視野が本から再び鏡の前に映った。
「たとえば、おまえには『ぼくが本を持っている』ということが見えるだろう?」金髪の美少年は時々本を見たが、確かに本を持っている。
(ええ。)
「同じようなかんかくで、ぼくには『ああ、おまえは今何が考えているなぁ』という感じ。なにも考えてなかったら、けっこうシンーとくる。」
(なるほど。)心の耳鳴りって感じだろうか。
「お!今なら、おまえのこえがきこえて、何か考えているなって感じがした。」
(え、「声」と「考える」のが違うの?)俺にとって結構近い感じがするが……
「ああ、なるほど、たしかにせつめいが難しい……たぶん、こうかな。」金髪の美少年はこう言って、右手に本を持って、左手だけ縦に振っている。
「『動いた』と何かが『見えた』って感じ?ちょっと難しい……」
(いや、結構わかりやすいよ。むしろ良く思いついた。)
「いや、本の中にかいたから。」
ああ、だから時々本を見ていたんだ……
(とにかく、俺はお前の「心理フレンド」ということ?)
「そう、かな?でも、きのうためしたのに、何もおこらなかったよ。何できょうにかぎって、とつぜんあらわれたの?」
(それは俺に聞かれても……)やはり異世界の類だろうか?一応ラノベ見たことがあるから、少しわかるが……俺は、死んだのか?
うん。ダメだ。
最近の記憶がモヤモヤな感じ、あまり覚えられない。
「どうする?いっしょになんかあそぶ?」
(いや、俺は……)
金髪の美少年は頭をかしげて、無邪気な顔をしている。
(俺は帰りたい。ごめん。)
「そうか。ごめんなさい。ぼくのせいで……」
(いいんだよ。でも、どうやったら帰れるんだ?)
「うん……わからない。」
だよね。子供に聞いてもわかるはずがないだろう。
しかし、このままではこの国も、ベル王子も、王子の身体にいる「俺」も、死ぬ運命を迎えるしかないだろう。
どうすればいいのか。
定番と言えば、やはりゲームをクリアすることだろう。
でも、このゲームはいわゆる内政(経営・養成)類のゲームだ。
「クリア目標」らしい「目標」がない。ある程度の期限が定まって、国がどうなったとかはあるけど、それだと大体百年以上の時間単位だ。
政策と社会現象の効果はほとんど時間をかける必要があるから……
百年……俺は死ぬだろう。
いや、ゲームでは王は簡単に変わるものだ。もっと短く計算したほうがいいだろう。
ゲームが始まった時間、つまりチュートリアルの時間帯は……たしか「共通歴」560年1月だったはず。
医療と衛生を変えなかったら、精々610年に持つだろう……
(王子、ごめん。帰る方法がわからなかったから。しばらくあなたと一緒にいるかもしれない。)
「うん。いいよ。」爽快な回答。
(でも、俺は元の世界に帰りたい、だから、俺のことを手伝ってもいいか?)
「いいよ。でも、このくに、はめつされるかもしれないよ?」
(それは俺に任せよう。信じてくれるか?)
「……それはちょっと。」
そうだよな。臣下たちに裏切られたばっかりだし、ゲームもそういう説明があった。「どんな忠誠な臣下でも」って。
(じゃあ、俺たちの「ルール」を決めようか。)
「ぼくたちの『ルール』?」
(ええ、簡単な話だ――)
もう、何もかも変えるしかない。そして、元の世界に帰りたい!
誰の視点なのか、推測してみてください!
この人の幕間はこれだけにするつもりですので。
とても簡単です。
ヒント:この人は「王になる」より、「王のふり」をする自信がある。
簡単すぎですか?文句を受けつけません!
では、次話は第三章になります。