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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第二章
22/75

10

 ロードルフ子爵は近くにある本棚から、渦巻き状に巻いている毛皮を取り出した。


 その毛皮を平たくすると、中に島や境界線など描いていた地図なのだ。


 (地図……)


「ああ、地図だ。それとも何が?これも『線』しか見えないのか?」


 (いいえ、「絵図」はちゃんと認識できる。)


「ならいいだろう。国の外交状況を教えるんだ。絵もダメなら、言葉で教えるしかない。」


(あの……一つ頼んでもいい?)


「あん?」


(簡単な「図形」とか描いてくれる?まるとか、バツとかでいい。)


「……そうか。」ロードルフ子爵も何が思い付いたようで、私の提案に乗ってくれた。


 彼は廃棄処分の紙を取って、それぞれの「図形」を描いてくれた。


「これは?」


(まる。)


「これは?」


(バツ。)


「で、これは?」


(矢印。)


「『図形』が認識できる。上出来じゃねえか。」


(ええ、そうだね。それと、ロードルフ子爵、何が『文字』を書いてくれないかな?)


「何でだ?」


(もしかしたら、「文字」を「図形」として認識したら、読めるようになるじゃないかと思っているんだ。)


「あっそう。」


 もしできるなら――と思ったが……


(あ……ダメだった。やはり「線」なんだ。)


 うまくいかなかった。


 ロードルフ子爵は文字を書いたけど、やはりただの「線」しか見えない。


「はあ……なあ、なんでお前に『文字』を書かせてみたいという理由に考えていないのか?」


 (それは……何か推測があったじゃないの?)


「ああ、あったさ。だが、お前もっと深く考えてないのか?」


 (考えてない。どういうこと?)


「チッ。俺らが今『交流』できること自体がおかしいと思わないのか?」


 (ええ、確かにおかしいと思うよ。こうやって身体の中で話すから。)


「違う。『言葉』の意味だ。『言語』のことだ。」


 (あ、なるほど。「言語」に対しての認識か。)


「そうだ。違う国だったら、『言語』も違うはず。お前は今何語で話しているんだ?」


 (……自分の認識では、「日本語」だ。)


「俺は『バイアス語』で話すんだ。一応『共通語』もできる。だが、お前にとってその『日本語』とやらに聞こえるのか?」


 (ええ、そのように聞こえる……)「言語」の名前どれも聞いたことがない。ちょっと驚いた。


 まさか、ここで新たな事実が発見された。


 でも、何で「言語」の認識が違っても交流できるの?私は「バイアス語」とか、「共通語」とか全然わからない。しかし、ちゃんと日本語のように聞こえる……


 あ、待て。たしか「多重人格」の本に書いてあったはず。そう。脳の仕組み!


 もしかして、「身体」が同じだから、「脳」が同じだから、「言語知識」も共有できる。


 つまり:「私からの言語」→「脳の転換」→「本人」、私たちの交流がこういう仕組みかもしれない。


 逆も同じ:「本人」→「脳の転換」→「私がわかる言語」


 そもそも、私は「考える」ことでロードルフ子爵と交流している。いわゆる、「並存意志」みたいなものだろう。だから、同じ脳で「言語知識」を共有した。


 でも、もし「言語知識」が共有できるなら、なんで「文字」が「線」に……


 あ!だから、私に「文字」を書かせたかったんだ!「言語知識」のことを考えて――


「ふん。これでわかったか。なんで俺がお前に『文字』を書かせたい理由を。」


 (うん。十分わかった。というより、ロードルフ子爵は本当に「多重人格」のことがわからなかったの?)


「知らんかったが、お前昨日のことを忘れたか。」


 (そうか。たしか勝手に「読んだ」のね……)


「『読んだ』というか、『感じた』ほうが正しいだろう。それは言語化できないものだ。」また曖昧なことを……まあ、何となくわかるけど。 


 (どっちでもいい。でも、これは「ルール」に追加したほうがいいかも。あなたも私に何考えているのか読まれたくないだろう。)


「そうだな。だが、ルールの追加は後日だ。外交状況のほうが先に教える。」


 (じゃあ、今仮ルールでいい。とりあえず、お互いの知識や記憶など勝手に読まないこと。)


「ああ。で、国の外交状況はそんなに複雑ではない。『図形』もわかるなら、『図形』を見ながら説明する。まず、外交策は――」


 そして、ロードルフ子爵の説明と相関図によって、わかりやすく理解できた。


 バイアス王国の外交策:積極的に他国と友好関係に結ぶ。


 バイアス王国周辺国は「図形」で表示する。計四つの国。それぞれの代表図形、“○”、“×”、“△”、“□”。


 〇 ←→ バイアス王国 : 〇


 × ←→ バイアス王国 : 〇


 △ ←→ バイアス王国 : 〇


 □ ←→ バイアス王国 : △


 マルは「友好」、三角は「中立」。つまり、バイアス王国は周辺国との関係性はほとんど「友好」だ。


 そして、“□”の国との接する部分が少なく、交通網も不便なため、「中立」となっている。


「それで、一番面倒なのは『派閥』の問題だ。まず、この国の『派閥』からだ。」


 バイアス王国の派閥、大きく分けて王族派――貴族派。


 バイアス王国の派閥:

 王族派:

 また三つに分ける――権利派、集中派、分配派。

 だがどれも王位継承権をめぐって争うつもり。

 宮廷闘争が激しい。貴族派と「民心」を「競う」仲。


 貴族派:

 地方の貴族は大体この派閥。派閥の派生も多くてややこしい。

 よって、地方の勢力と役割だけ教えてくれた。

 そして、地方の勢力が一番大きいのはリザリザ公爵。(註:地図5の位置)

 公爵は王族と協力関係を持っている。


 地方の勢力:

 子爵領の周りに伯爵が四人いる。


 カーベーリ伯爵 〇国の外交担当。(註:地図2の位置。)

 レンファ伯爵 主に外交補佐、また他の領地の補佐。(註:地図3の位置)

 ビルディ伯爵 子爵経由で外交担当の支援、また子爵の内政補佐。(註:地図4の位置)

 メリー伯爵 〇国の外交担当。(註:地図6の位置)


 ロードルフ子爵は主に外交の補佐、次に内政の支援。どちらにも協力体制を取っているが、あまり子爵のことをよく思われていないらしい。


 (ここで質問していい?)


「構わん。」ロードルフ子爵は手を止めず、他の図形を描いている。


 (どうしてよく思われていない?子爵は嫌なことでもした?)


「ア……ふざけるなよ。」“アホ”なのかな?


 彼は手を地図に指しながら、一つずつ理由を述べていた。


 カーベーリ伯爵 領地の面積が子爵より小さいことに気にしている。

 レンファ伯爵 仕事の支援が遅い。

 ビルディ伯爵 公爵との関係性を重視している。

 メリー伯爵 なぜか飛ばした。


 (メリー伯爵は?)


「……『あの女』は俺の婚約者だ。」


「あの女」……最初の時、聞いた言葉だ。


 “「もう一度聞こう、俺様の身体にいる貴様は誰だ!『あの女』の手下か!」”


地図です。汚くてすみません。

挿絵(By みてみん)

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