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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第二章
21/75

9

 最初、なんで衛生観念のことに気付かなかったか、ロードルフ子爵がよくお風呂やシャワーなどしていたからだ。あの時、また現代の感覚で見たから、違和感を感じなかった。


 しかし、時間につれ、文化の感覚と政治体制は前時代なものだと気付き、少しおかしいと思っていた。


 外国史の授業を受けたから、“子爵、領主、貴族、王国”、恐らく「政治体制」は中世紀のものだとわかっていた。


 家具と服装の雰囲気から見て、中世紀の前半と中期より、後半の感じだと思った。特に天井のシャンデリア、あれは蝋燭のもので、電力じゃない。


 電力がないなら、文明レベルの範囲が特定できる。電力は第二次産業革命で発明された。19世紀からだ。


 つまり、文明レベルはルネサンス(文芸復興)、あるいは第一次産業革命の前か、後か……一番思い当たる節がこの二つの時期。


 でも、機械があるかどうかまだわからない。だが、公衆衛生を重視し始めた時期は18世紀、第一次産業革命の後だ。


 そして何より、ロードルフ子爵の衛生観念は18世紀よりもっと「現代」寄りの衛生観念の感じだ。


 決めつけは良くないが、共有していた五感で、香水や体臭などのものが匂わなかった。自分からの匂いが鈍いかもしれないが、使用人からもそんな匂いがなかった。精々汗の匂いだ。


 それと、「平民」の「医者」だ。中世紀の医者はほぼ神職・宗教の人たちのはずだ。


 これは、現代寄りの衛生観念だ。誰が普及していたのか、私はこれが何かの手がかりになりそうだと思っている。


 しかし、私は全ての推測を言うつもりはない。


 なるべく推測の部分を省き、自分が知っている文化、政治、価値観、それぞれの要点をまとめて、この国の文化は総体的にずれがあると指摘した、


 そして、何か手がかりにならないかとのこと。


「つまり、お前にとって、この国の文明が何か違和感を感じたってわけか。」


(ええ。そうよ。)


「だが、お前が指摘したことに何の考えが付かないわけがない。自分の推測を隠したか?」


 (そうだよ。だが、言わないことに理由がある。)


「理由は何だ?」


 (私の「先入観」に影響されないためだ。)そう。全ては私が思い込んでいる可能性が十分あるから。


 これは保険だ。昨日の多重人格も思い込んでしまったから。


「ふん。俺がお前に影響されるだと?なめるなよ。」


 この人、一体自分のことをなんだと思っているんだろう。


 (少なくとも可能性がゼロではないと思う。)


「いいだろう。そして、手がかりと言ったな。お前の話から聞けば、一番知りたがっていたのは『衛生』のことだろう。」


 (そうね。)


「具体的なことは知らん。だから簡単に言う。

 最初の『衛生法』と『衛生観念』の提出者は同じ人物だ。この『バイアス王国』を建国した王様――『ライン・バイアス』。

 そして、その王様はすでに死んでいた。何せ、100年以上の人物だからな。」


 (そうか……)


 ライン・バイアス、やはり聞いたことがない名前だ。


 名前は聞いたことがないけど……


 (確認だが、その「ライン・バイアス」という王様は、「事例」の方だよね。)


「そうだ。」


 正直、どう結び付けたほうがいいかわからないが、衛生の提出者と事例の人が同じということは、たぶん偶然ではないと思う。


 いや、そうあってほしい。


 (もう死んでいたのか?)


「そうだ。さっき言ったばかりだろう。」


 (その王様に関する文献や資料がないの?)


「あるにはあるが、俺には見られないものだ。王族に保管されている。」


 (でも、あなたが王様についてのことは「文献」でわかったじゃないの?)


「俺は知っている情報が少ない、具体的に言えないと言ったはずだ。俺が知っていることは全てが『貴族学院』の授業で学んだものだ。」


 そんな、じゃ、何?つまり、情報はもうないの?


 (じゃあ、文献を借りることは?)


「ダメだ。それは王族のものだ。」


 (じゃ、じゃあ、学院に入ることは?先生に直接教えて……)


「ダメだ!俺は卒業した!卒業した貴族が再び学院に入ることは、王族の『宮廷闘争』に加わる意味があるんだ!」


 なにそれ。意味不明。


 (なら、先生をこの家に――)


「お前は先生のことを何だと思っている!学院にいた人はほとんど侯爵以上の人間だ。俺が誘っても来ない!」


 それは決めつけだろう。


 (それでも――)


「しつこいぞ!お前は何考えているかわからん。しかしルール第4条、勝手に押し付けるんじゃない。」


 押し付け……あ!


 (……ごめんなさい。少し取り乱してしまった。)


「ふん。お前はこんな視野が狭いか。さっき『先入観』の意味がよくわかった。」


 (否定できない。確かに私は何かにしがみつきたい気持ちはある。)


「く……軟弱すぎる。」


 くだらないかな、これに関して何も言えない。でも、保険かけておいて良かった。


「ふん。確かにこれならお前の推測は聞かなくてもいい。昨日の多重人格とやらのこともあったからな。」


 (そうね。)


「で、国の外交状況、それと文字の試し、何がしたい。そろそろ仕事の時間が惜しい。」


 (そうね。まだ心の準備ができていない。この国の外交状況から。)


「なら、文字の試しは明日にする。この情報を教えたら、すぐ事務の仕事に戻る。お前は聞きながら質問を考えるんだ。」


 (わかった。)


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