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「ふん。ほとんどくだらないルールだな。」
(くだらないかどうか人によって違うよ。ルールを決めた以上、あまりくだらないとか言わないでね。)
「なら、俺にとって重要じゃない。」
(なら、ルール守れるよね。)
「……ふん。簡単なことだ。」
(では期待しております。)
感想→感想言わないで→重要性がない→なら守れるか→簡単なことだ。理解が間違えてなかったら、こういうことだろう。やはり一言多い。
「お前はこういう時だけ敬語使うのか。」
(あなたにだけこう使うの。)
「不快だな。」
(ありがとうございます。)
「褒めてねえ。」
(知ってる。)
「もういい。そんなことより、ルールが決め終わっただろう。」
(ええ、もし他に何が思い付いた時、その時また修正する必要があるね。)
「違う。これで、お前が『気になる』ことは何なのかが言えるだろう。」
(ああ、そうだね。言えるよ。)
「ならさっさとい……言うんだ。」
“言え”と言いかけたのかな。でも「お互いに命令しないこと」を気付き、言い方を変えたのかな。
良かった。ルールを守るつもりだ。
(そうね。気になることは「衛生観念」のことだ。)
「つまり?」
(私とあなたは「衛生観念」があまり大差はないようだ。)
「はあ、あまり相違ないのか?」
(ええ。傷口の処置と食事する前に手を洗うこと、「衛生」に対してのこだわりが見える。もちろん、それらだけじゃないが……他のことだと、ちょっと言いたくない。)
「ふん。で、つまり、俺らはある程度の『価値観』が一致していると言いたいのか?」
「うん。そうだね。」
しばらく沈黙。
「たしかお前は“にほん”とやらの国と言ったな。」
(ええ、そうだよ。)
「わりと大事な情報だろう。何で今まで気付かなかった?」
国の文化が違うと、価値観も違うになる。だが、共通の認識があったら、話がまた変わる。つまり、話の深掘り甲斐があるってこと。
(最初そんな余裕がなかったから。それに、裸を見る趣味もない。)
「く……チッ。気になることはこれだけ?」くだらないと言いたかったのかな。
(ええ、まあ、これだけ。)
「いいや、全てを言ったわけじゃないな。これだけなら、『気になる』ほどにならない。」
(……そうだね。全てを言うつもりじゃない。)すぐ気付く。
この状況、昨日もあった。ちょっと似たような状況――「ディベート」について説明する時、その後、「多重人格」のことに。
「その理由は?」
お?よくよく考えたら、ロードルフ子爵は「知りたがり」の一面があったな。これなら……
(気になるの?)
「当然だ。」
(どうして気になるの?)
「お前が何考えているのかわからないからだ。」
(つまり、「知りたい」の?)
「しつこいな!当たり前だろう!」
(ね、ロードルフ子爵、気付いてない?それ、一つの「気持ち」だよ。)
「あん?」
(「知りたい」という「気持ち」、感じた?)
ロードルフ子爵の視線が少し揺らいで、机の表面に凝視した。何とも言えない感じ。ちょっと動揺した。
「……ふん。それがどうした。今はどうでもいい。話を逸らすじゃねえ。」
少しわかりにくいけど、「認めた」かな。
(ええと、ルールの第2条、「なるべくお互いの「気持ち」を無視しないこと」、あなたが知りたかったら、無視するつもりはないよ。)
「ああ、そうか。知・り・た・い。これでいいのか?」
(そんな強調しなくてもいいけど。まあ、簡単なことだ。ちょっと「歴史」のことを考えているだけ。)
「『歴史』?何のことだ?」
(あの、具体的なことなら、一つの「情報」になるかもしれない。少々言いたくない「気持ち」がある。)
「なるほど。なら、俺が代わりに何か教えてあげたら、言う『気持ち』はあるか?」
(そうね。何か教えてくれる?)
「国の外交状況だ。昨日教えるつもりだったがな。」
(昨日は私の「気持ち」を無視して利用するつもりだったじゃない?あなたはそこまでアホではないはずだ。)
「不愉快だ。」
(私も同じだったよ。だから気持ちは大事。)
「もういい。わかった。それで、言う気はあったか?」
(そうね。じゃあ――)
そして、私はしばらく自分の考えたことと歴史のことについて述べていた。