表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第一章
2/75

2

「おい!答えろ!」男性は鏡に向かって、自分と会話しているように見える。


 しかし、「私」は分かっている。その言葉は「私」に対するものだ。


 つまり、「私」は認識されている。この「男性」に。


 うん、この状況を飲み込めるには私にとって難しい。ぶっ飛んだ思考力がなければ、いきなり分かるようなことができない。


 とりあえず、交流を試みよう。


「私」はちょっと体を動かし、口を開くつもりだったが、体は突然「私の意志」を背いて、怒り顔を出している。


「勝手に俺様の身体を動くな!気持ち悪ぃんだ!」そして男性が鏡に向かって拳を振った。


 いたっ!


 えっと、話がしたいだけなんですが……でも、聞いてくれない。そもそも交流すらできていないし。


「もう一度聞こう、俺様の身体にいる貴様は誰だ!あの女の手下か!」


 あの女?誰のことなのかわからないが……でも、これはかなり面倒だな。ちゃんとしたコミュニケーションが取れない。


 他の交流方法は……うん?待てよ、もし身体の感覚が共有しているなら、「思考」も共有できるのか?試してみよう。


 えっと……


 (えっと……)


「ほう、やっと答える気があったか?さあ、貴様は誰だ。さっさと言え!」


 (なるほど!こんな感じで感知してくれるのね。)


「……貴様、ふざけているのか?」


 (ああ、いいえ!私はただコミュニケーションをどう取るのかわからなかった。)


「は?勝手に人の身体に入りやがって、よくそんなこと言えるね。」


 (ええと、信じがたい話かもしれないが、今どういうことなのか私もよくわからない。)


「適当な嘘を言うな!」


 (私は本当のことを言っているよ。まず、あなたは誰なのかもわからない。名前を教えてくれる?)


 男性は少し静まってから、口を開く。


「……先に質問したのは俺の方だ。お前の方から先に言え。」


 あ、口調が変わった。質問の意図がわかってくれた?でも、態度が悪いね。


 (私は黒井さな子、日本人だ。)


 男性の様子から見て、多分外国の方だろう。一応国籍も言っておいた。


「どれも聞いたことがないな。お前本当のこと言っているのか?」


 (本当のことを言っているんだよ。そして、あなたは誰?)


「ふん、ロードルフ子爵だ。覚えておけ。」


 (覚えておく。)


 しかし、出身地教えてくれなかった。まあ、この状況からすると、たぶん言ってもわからない地名だろう。心理状態のために、また精神衛生上のためにも、今は余計な情報を取り入れたくない。


「それで、何で俺の身体の中にいる?俺様の身体を奪うつもりか?」


 何だろう。結構警戒されているからかな。質問の仕方は所々に罠が感じられる。


 (えっと、まず、私は何もわからないから、どう答えればいいのかわからない。)


 沈黙、それとも様子見だろうか。ロードルフは何も喋らない。


 (あなたの質問に答えたいが、何であなたの身体にいるのか、その原因も私が知りたい。そして、その「身体を奪う」とのことだが、ここでは「よくあること」なのか?)


 ロードルフは眉を皺めながら、不機嫌そうな顔をしている。


「そんなの知らん。お前に答える義理はない。」


 つまりあるのか。でも、決めつけは良くない。


 (では、今回私が質問するね。)


「は?そんなこと勝手に決めるな!」


 (しかし、情報を交換したほうが、お互いのためにもなると思う。)


「お前はさっきから『わからない』とか、『知らない』とか、そんなことばっかりだ。参考になる価値もねえ。」


 参考になる価値か。


 (なら、なおさら私に質問させた方がいいだろう。)


「あ?」


 (質問も一つの情報になる。さっき、あなたも読み取ってくれたよね。私が名前を聞いている時。)


「ああ、それがどうした。」


 (私はあなたと交流したいから、警戒心を解くために、あの質問をした。しかし、それは全て解いたわけじゃない。あの多重質問は警戒心の証拠だ。)


「ふん。」ロードルフは冷笑した。


 仕方ない、今私はただ当たり前のことを言っている。


 (しかし、それだけじゃ困る。私も情報が欲しいものだ。このままあなたに質問されるだけだと、お互いずっとわけがわからない状態になる。なぜなら、「君の質問」に参考になる価値がない。) 


「は!よく言うな。じゃあ、なんだ。俺様がのこのこと警戒心を解いて、貴様に身体を奪われるってか?」


 (ううん、私が言いたいのはあなたが「前提に基づく」質問をやめてほしいとのこと。警戒心を完全に解く必要はない。私は何が目的を持ってあなたの身体にいたわけではない。何も知らないまま突然いたのだ。)


 しばらく沈黙が続いた後、ロードルフは言った。


「わけわからないな。でもいいだろう。質問を許そう。頭が悪くないようだが、間抜けな奴に違いない。」


 それに、嘘にしては雑すぎる。俺に気づかせて、その上信じてほしいと言ったら、ただのアホか、間抜けか、あるいは本当なのかだ。どのみち、脅威ではない。↑


 ……どうやら、説得ができたようだ。でも、↑あれはロードルフ子爵の心の声か?何で突然わかるようになったのだろう。


「早く質問をしろ!」


 仕方ない。まず聞きたいことを聞こう。


 (ここはどこだ?)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ