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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第二章
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6

幕間の編!

 放課後、黒井さな子と前田良奈二人が一緒に帰宅している。


「本当、私の家に来たいの?」と黒井さな子は少し疑問を感じながらこう言った。


「うん。行きたい!」


「私の家、本当に何もないよ。」


「ううん、家のことは大丈夫!私はただもっとさなちゃんと仲良くなりたい!」前田良奈は決意が固い様子で言った。


 前田良奈のその様子に、黒井さな子も少し断られなかった。肯定したかった。


 黒井さな子はディベート部に入ってから、二人が少しずつ親睦を深めた。学校ではよく話し合っていた。中学の時と違って、二人が「友達」になった。


 最初は一緒に帰る道の途中で別れただけだった。でも、この「一緒に帰る」ことをきっかけで、前田良奈は学校でだんだんと黒井さな子に話しかけた。


 少しオロオロで不安な感じで、しかしまっすぐな言葉、その言葉にこもった「気持ち」は嘘偽りなかった。


 あの時もそうだった。


 “「うん?どうしたの?」


「……えっと、一緒に帰ってもいい?それと、今後も、部活の時間が終わったら、一緒に帰ってもいい?」”


 そのまっすぐな目に、不安を感じながらも、真摯と向き合っていた。太陽が沈む前に、その光も眩しく感じた。その時、黒井さな子はちゃんと感じた。


 前田良奈は勇気がある人だ。そして、その「気持ち」に、その「勇気」に、黒井さな子は肯定の返答をした。


 その場の勢いで答えてしまったが、あまり後悔しない。恐らく、自分もその「気持ち」があったんだろう。と黒井さな子は考えていた。


 そして、あれから二週間後、間もなくゴールデンウイークになる時期、少しの間、二人は会えなくなる。


 黒井さな子はスマホが持っていないため、交流することが難しい。


 一応携帯を持っているが、電話代がかかるため、あまり使わないようにした。それで、前田良奈は黒井さな子の家に行きたいと提案した。


「わ、私は、よく寂しく思うから、ちょっと、休み中でも、さなちゃんとお話ししたい、会いたいので……」


 気持ちとしては嬉しい。正直、断りたくない。しかし……黒井さな子は迷っていた。


 中学の時、似たような状況があったから。


 “「ねえ、さな子。私、さな子の家に行きたいな。いい?」”


 当然、前田良奈はあの時との全然違う人物なのだ。その人物も前田良奈と友達の関係じゃなかった。


 しかし、似たような状況に、黒井さな子はやはり躊躇ためらってしまった。


「も、もし、あなたの家じゃダメなら、私の家も、いい!お金なら、私が出せる……」


「ううん。お金の問題じゃないよ。でも、そうね……」黒井さな子は少し間を空けて、問いただした。


「本当に、私の家に来たいの?」


「うん。行きたい!」


「私の家、本当に何もないよ。」


「ううん、何もなくても大丈夫!私はただもっとさなちゃんと仲良くなりたい!」


 そう、か。


「そう、ね。私もたぶん少し寂しく思うよ。本当に来たいなら、部活が終わるまで、待ってくれる?」ごめん。少し試したような言い方を言った。でも、本当に部活があったから……大丈夫。


「わ、わかった!待つ!」


 実は、“今日は用事があって、先に帰りたい”、と先に部長に言えばいい。部長と副部長も優しいから、許してくれる。


 実は、住所だけ教えれば、“休みの時にいつでも会えるよ”、と言えばいい。いろんな方法があった。


 しかし、「気持ち」を確かめたかった。中学のあの時と同じくならないように。


 黒井さな子は、また一歩引いてしまった。


 そして、部活の時間が終わって、前田良奈が待っていた。


 もし、前田良奈が先に帰ったら、黒井さな子は何も思わなかっただろう。それなりの時間だ。文句を言わない。


 でも、その待っている姿に、黒井さな子は動揺した。


「前田さん……待たせてごめんね。」


「ううん。大丈夫。私が行きたいから。」その微笑みに嘘偽りない。


「……そう。ごめんね。」


「い、いいえ、大丈夫!気にしてないから!」


 黒井さな子はこの言葉を聞いて、しばらくしてから、少しふふっと笑い出した。


「……立場が逆転したね。」


「え?どういうこと?」


「ううん。わからないならいい。その方がいい。」


「そうなの?」


「うん。それより、もし私の家にいる時、つまらないと思ったら教えてね。その時送るから。」


「え、いいのよ、別に気にしなくても……」


「ダーメ。その時ちゃんと教えて。何かに無理するのが良くない。私と仲良くなりたいなら、このことはちゃんと覚えて。」


「わ、わかった!」


「うん。じゃ、私の家に行こうか。」


 そして、黒井さな子と前田良奈二人が一緒に帰宅していた。


 ****


「……1Kアパート。」と前田良奈は目の前の建物に独り言を言った。


「うん?見たことがないの?」


「あ、いいえ!大学生の兄さんがいるから、見たことがあるよ!」


 二人が会話しながらアパートの階段を登っている。前田良奈は少し周りの景色を見た。


 決して悪い環境ではなかったが、いいほどでもなかった。少し普通の感じ。


 その挙動はもちろん、黒井さな子も見ていた。


「その兄さんは一人暮らし?」黒井さな子は言いながら、鍵を取り出した。


「え、はい!」


「じゃあ、こっちは人数的に勝ったね。」黒井さな子は笑いながら言った。


 前田良奈は一瞬反応できなかったが、はっとなって、「あ、冗談を言っているんだ」と思っていた。


「さあ、入って、あまり見世物がなくて申し訳ないけど。」黒井さな子は靴を脱いで、玄関のところに置いた。


「だ、大丈夫!」前田良奈も同じく置いた。


 そして、中に入ったら、まず果物の香りが伝わってきた。少しマンゴーみたいな匂い、しかしそれは他の匂いと混ざっている。まるで……歯磨き粉。


「ちょっと果物の匂いがする、それは……」前田良奈は気になって聞いてみた。


「ああ、浴室からかな。もしかして嫌い?」


「いいえ、ちょっと気になっただけ。」


「じゃあ、ちょっと紹介しようか?こちらはバスルーム。」


「あ、はい!」


 そして、前田良奈は黒井さな子の紹介によって、浴室のほうを見たら、三点ユニットバスだった。空間も狭い。


「私は、マンゴーの歯磨き粉を使っている。果物の匂いはあれかな。」


「そ、そうなんだ。」


「ここはリビング――」リビングの空間は比較的に大きい。だが、それだけだ。必要な家具だけ揃った。


 テレビ:一応朝のニュースや気象を見ている。

 クローゼット:共有制。ちょっとスペースを分けて区別するくらいの感じ。

 冷蔵庫:なるべく節約するために、ほとんど自炊することが多い。

 小さな机:いろんな雑事がここで済ますことが多い。

 二人分の布団:机をどけて、床で寝る。


 それでも、二人がいると、少々狭く感じる。


「――これくらいかな。どう?本当に何もないよね。」


「ううん。全然。ありがとう。紹介してくれて。」


「……そう。こちらこそありがとう。そう言ってくれて。」


「え、私そんな大層なことを……」


「あなたがそう思ってくれることが嬉しい。素直に言ってくれて嬉しい。ずっとこう言いたかった。」


 黒井さな子は少し照れくさそうな顔をしていた。前田良奈も聞いてから、照れた顔をした。


「そう、ですか。」


「うん。」


 そして、二人が沈黙した。少し気まずく、しかし心地良い空気だった。


 それで、沈黙の空気を破ったのは黒井さな子だ。


「はは、さすがにずっとこのままだと良くないね。何する?宿題をする?」


「そうね。それがいいと思う!」


「じゃあ、水を準備するね……あ、お茶出せないけど、大丈夫?」


「大丈夫!」


 黒井さな子は頷いて、コップに水を注いだ。 


「ええと、そういえば、さっきさなちゃんは『人数的』って言ったけど、ここ何人に住んでいるの?」


「私とパパ二人だけ。」黒井さな子は机の上にコップを置いた。


「そうなんだ。パパと仲がいいだね。」


「うん、パパと仲がいい――あ、違う。父さんと仲がいいんです!」


 珍しく慌てていた黒井さな子に、前田良奈は少し面白がっていた。


「別にいいのよ。可愛いと思う。」


「いや、それは子供っぽいということでしょう……」黒井さな子は少し困った顔で、気まずそうな感じがした。


「少しね……でも、それはつまり、さなちゃんにとって父さんはとても安心できる存在だよね?子供っぽいところを示しできる存在、とてもいいと思うよ。」


「そう、思う?」


「うん。そう思っている。それに、前からちょっと、思っていることがある。実は、さなちゃんはわりとドジな一面があるねって。」


「あ、それ言わないで!恥ずかしいから!」黒井さな子の顔はもはやリンゴのように真っ赤になった。恥ずかしくて恥ずかしくて、黒井さな子は両手をバツのような形にして、強い意志を表明した。


「わ、わかった!言わない。」


 一つ、休憩時間、黒板の板書ばんしょを消すとき、一つ内容が取り忘れていたようで、彼女はノートに書き終わった後、そのノートをそのまま教壇の上に置き忘れた。


 もう一つ、トイレを済ました後、スカートのめぐりに気づかなくて、パンツに挟まれ、トイレから出ていく前に、完全に丸見え状態だった。もしその場で指摘しなかったら、大惨事になるだろう。


「でも、可愛いと思うよ。」


「本人にとって、ただ恥ずかしいだけ。」


「ふふ……」前田良奈は嬉しく笑った。黒井さな子は前田良奈が笑ったことに、同じ嬉しく笑った。


 二人が一緒に楽しく笑った。二人にとって、とても幸せな時であった。


 ****


 病院で。


 一人の女性がベッドの上に眠っているような姿だった。


 その女性の隣には、「家族」、「部活の先輩・友達」、「親友」が立っていた。


 身体にもはや異常はない。ただ、意識がずっと戻らなかった。


 三年間……この人たちずっと欠かさず、お見舞いしに来た。もちろん悲しい雰囲気、重い雰囲気だった。だが、この人たちがずっと願っているのは、その「意識」が戻ること。


「僕は……『部長』の様子を見てくる。」


 他の三人は頷き、一人が部屋から出ていった。


 またたくさん、話したいことがある、またたくさん、楽しいことがしたい。だから、さなちゃん、早く起きて……


 起きて……


 一人の女性がベッドの上に眠っているような姿だった。


 その女性は、「黒井さな子」であった。


次話ちょっと余裕を持たせてほしいです。

連続三日間で投稿しているので、少し疲れました。

よって、次話三日後でアップします!


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