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「まず、俺の時間とお前の時間、『価値』が違う。
『能力』上、お前ができることが少なすぎる。やれることがないから、時間が余っている。
だが、俺は領主として、事務のことはもちろん、治安の維持と財政の管理も一つの仕事だ。時間が余っているほど、ずっとお前と会話する時間がない。
実際一週間後、俺は騎士団を率いて、各町と村の巡回が必要になる。巡回期間は一週間。これは治安の維持、適当な仕事は許さん。
そして、帰ったらまた事務の仕事。
だから、そんな時間がない!余っていない。ずっとルールのためにやったら、俺らにとって『デメリット』しかない。『時間の無駄』だ」
なるほど。こう来るね。
領主の仕事が忙しい。実際忙しいし……でも、これならまだ回る余地がある。
(確かに、「能力」の問題なら私も理解できる。あなたは時間の「価値」についての「考え方」も理解できた。
だが、「私は時間の価値は能力の価値と等しいと思わない」。
たとえお互いに異なる立場にいても、私たちの時間は同じくらい重要だ。
今みたいに、交流することによって、「お互い」の「価値観」や判断基準がわかるように、「意見の共有」や「妥協点」の見つけ方につながる。
あなたの領主としての責務について、十分理解しています。ずっと見てきたから。
ただ、たとえ私は能力がなくても、専門な人じゃなくても、簡単に他の視点の見方が役に立たないとは判断したくない。時には専門だからこそ、進展がない場合もある。
役に立つかどうかは他人の評価によるが、時間の無駄かどうか、「お互い」によるものだと思う。)
ロードルフ子爵は少々考えて、そして笑った。
「だが、それはあくまでお前の『考え方』だ!たしか『時間の価値は能力の価値と等しいと思わない』と言ったな!なんだ?お前。お前の『考え方』今重要なことなのか?『デメリット』について話し合うじゃないのか?」
……あ!しまった。
「私は時間の価値は能力の価値と等しいと思わない」、この言い方は一つ以上の意味がある。複数の意味を有する場合、聞く人によって解釈するものだ。
もし、「私は時間の価値は能力の価値と等しくないと思っている」と解釈されたら、その後の言葉もただの付加価値みたいなものだ。意味がなくなる……やってしまった。
「お前の『考え方』について、十分理解できたぞ!それで?」
先に聞いておくべきだった。最初の話。それはあなたの価値観どうか……勝手に決めつけてしまったな。
私は……普通に謝った。
(申し訳ない。言い方が勘違いさせてしまった。私が言いたかったのは、私は領主じゃなくても、時間は同じくらい重要だということだ。)
「ふん!だからお前は間抜けだな!」
ロードルフ子爵は「ドン」「ドン」と指で机の表面を叩いた。
「そして、時間は同じくらい重要だと言ったな。だが、お前は一つ大事なことを忘れてしまったようだ。俺はお前と『違う』。それは『性質』上のことだ。」
「違う」、「性質」。
(……どういうこと?)
「お前は確かに少し異様な知識を持っているが、それだけのことだ。
二週間、お前は何もやってなかった、『できなかった』――いいや、精々交流することができただろう。しかし、あまり意味がなかった。
正直、お前は誰なのかはわからん。文字が読めないのも信じよう。
だけど、そんなお前にはなんの『価値』がある?
何もできないあなたに時間を割振り必要がない!」
これは……ディベートではよく気を付けなければいけないこと――「できるか」と「するか」の違い。
ちょっと訂正――いや、普通に「反駁」しよう。間抜けって言われたし。
(ロードルフ子爵こそ忘れてしまったかな。私は、「できない」じゃなくて、「したくない」んだよ。)
「あん?」
(確かに、人によってそれぞれの価値観があるのはわかる。あなたの価値観も尊重するつもり。
「何ができるからやろう」、「できないからやらない」……このように、人それぞれの価値観がある。)
「……何が言いたい。」
(でも、よく思い出してほしい。私は「全然手伝ってもいい、やらせてもいい」と言ったはずだ。
「やりたいからやる」、「やりたくないからやらない」、やりたい気持ちってのは大事なんだよ。はっきり言って、ロードルフ子爵――)
「もういい!気持ちのことなんかもうわかった。でも、そうだとしても、やはり『時間の無駄』になるだろう!『デメリット』になるだろう!」
(では、「時間の無駄」という言葉について、少し定義を考えてください。)
「はあ、そりゃ『やっても無意味な時間』だろう。」
(では、あなたにとって、今の時間は「やっても無意味な時間」か?)
「……ぐぅ、ああ、俺は言い方を間違えた。これは『無駄な時間』だ。やっても意味が感じられない時間だ。」
(そう?でもそう言うと、あなたが言った「デメリット」は、あなたの「主観」によって生じるものだよ。つまり、さっきの私と同じくなったよ。)
「……なんなんだ、貴様。もしこう言いたいなら、これはもうただの言葉遊びだろう!ルールの前提条件なんかもいらなくなるだろう!」
ちょっとやりすぎたのか?
いや、もしかして、これは「気持ち」を認識させるチャンスかもしれない。でも――
(では、さっきの話はなしにしてもいい。ここは一つ君に聞こう。)
「……なんだ。」
(あなたは「できるから」、領主の仕事をやっているの?)
「当然だ、そこに『気持ち』なんか一切ない!」
ふーん、これは……強がりだね。気持ちがないわけがない。だがここで指摘しても意味がない。
(なら、この問題をちゃんと聞いてね。)
沈黙。
(あなたは「ルールを決める」ことが「できる」のに、あなたは「しない」のか?)
机を叩いている指が止まった。
とても長い沈黙の時間。
ウンーっと、まるで耳鳴りもあったかのように、聴覚が鈍くなった。
ロードルフ子爵は一瞬沸き上がった怒りの感情が、次の瞬間で沈む。複雑な感情がぐるぐると心を巻いているように、何とも言えない感覚。
彼の感情が伝わってきたが、何も言わなかった。
そして、一体どれぐらい経ったのだろう。
ロードルフ子爵はふっと嗤った。
「そうか。『できるか』と『するか』の違いか。これも浅はかだった。」
(えっと……)
「いいだろう。この前提条件を認めよう。」
(いや、認めなくてもいいよ。本当に時間の問題があるなら、修正する必要があるから。)
「……お前はなんなんだ。さっきもそうだが、すぐ逆のことを言っている。」
(だって言ったはずよ。「お互い」のために決めるもの。片方に傾いたら問題になる。)
ロードルフ子爵は何も言わなかった。両手を組んで、考えている。
「ふん。いらない気遣いだ。」
(そう?)
彼から伝わってきた感情が、何とも言えない。恐らく、「あの質問」を聞くのは今だけだと思う。「気持ち」を気付かせるのは今がチャンスだ。
しかし――私は迷っている。今、彼に「気持ち」のことを気づかせて、本当にいいことだろうか。
「そうだ。で?あとはどうする?どっちの条件に決めるか?」
(……そうだね。一通り良し悪しもわかったし。後はどう修正すればいいって感じだよ。)
「そうか。なら俺は仕事をしながら考える。しばらく話しかけんなよ。」
(わかった。)
実は、もう一つ質問がしたい。だが、ここで「気持ち」を気づかせて、全て未知数になる。
“さっき、「時間の無駄」について、どうしてやっても意味が感じられないと思う?”
とても曖昧な質問だ。
そして、曖昧な質問にもちろん曖昧な答えも出る。
“やっても意味ないから、「やりたくない」。”
たとえこんな答えが出なくても、「気持ち」は感じるはずだ。「気持ち」は考えるより、感じるものだから、気付くかもしれない。
もし「やりたくない」気持ちがわかったら……
うん、やはり、今ではない。私は帰りたいから、今は気付く時じゃない。
“「お前は間抜けで臆病なやつということが分かってないのか?」”
ロードルフ子爵の言葉が、すでにわかりきっている。
私は臆病な人間だ。良奈ちゃんの時もそうだった。
良奈ちゃん、とても「勇気」がある人だ。先に私に「気持ち」を示してくれた。素晴らしい人だ。
会いたい……
帰りたい……
だから、ここは「臆病」でもいい。
私は、帰りたいから。
2章2話の部分に一階の平面図をアップしました!
興味がある方は是非ご覧ください!