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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第二章
17/75

5

 「まず、俺の時間とお前の時間、『価値』が違う。


『能力』上、お前ができることが少なすぎる。やれることがないから、時間が余っている。


 だが、俺は領主として、事務のことはもちろん、治安の維持と財政の管理も一つの仕事だ。時間が余っているほど、ずっとお前と会話する時間がない。


 実際一週間後、俺は騎士団を率いて、各町と村の巡回が必要になる。巡回期間は一週間。これは治安の維持、適当な仕事は許さん。


 そして、帰ったらまた事務の仕事。


 だから、そんな時間がない!余っていない。ずっとルールのためにやったら、俺らにとって『デメリット』しかない。『時間の無駄』だ」


 なるほど。こう来るね。


 領主の仕事が忙しい。実際忙しいし……でも、これならまだ回る余地がある。


(確かに、「能力」の問題なら私も理解できる。あなたは時間の「価値」についての「考え方」も理解できた。


 だが、「私は時間の価値は能力の価値と等しいと思わない」。


 たとえお互いに異なる立場にいても、私たちの時間は同じくらい重要だ。


 今みたいに、交流することによって、「お互い」の「価値観」や判断基準がわかるように、「意見の共有」や「妥協点」の見つけ方につながる。


 あなたの領主としての責務について、十分理解しています。ずっと見てきたから。


 ただ、たとえ私は能力がなくても、専門な人じゃなくても、簡単に他の視点の見方が役に立たないとは判断したくない。時には専門だからこそ、進展がない場合もある。


 役に立つかどうかは他人の評価によるが、時間の無駄かどうか、「お互い」によるものだと思う。)


 ロードルフ子爵は少々考えて、そして笑った。


「だが、それはあくまでお前の『考え方』だ!たしか『時間の価値は能力の価値と等しいと思わない』と言ったな!なんだ?お前。お前の『考え方』今重要なことなのか?『デメリット』について話し合うじゃないのか?」


 ……あ!しまった。


「私は時間の価値は能力の価値と等しいと思わない」、この言い方は一つ以上の意味がある。複数の意味を有する場合、聞く人によって解釈するものだ。


 もし、「私は時間の価値は能力の価値と等しくないと思っている」と解釈されたら、その後の言葉もただの付加価値みたいなものだ。意味がなくなる……やってしまった。


「お前の『考え方』について、十分理解できたぞ!それで?」


 先に聞いておくべきだった。最初の話。それはあなたの価値観どうか……勝手に決めつけてしまったな。


 私は……普通に謝った。


 (申し訳ない。言い方が勘違いさせてしまった。私が言いたかったのは、私は領主じゃなくても、時間は同じくらい重要だということだ。)


「ふん!だからお前は間抜けだな!」


 ロードルフ子爵は「ドン」「ドン」と指で机の表面を叩いた。


「そして、時間は同じくらい重要だと言ったな。だが、お前は一つ大事なことを忘れてしまったようだ。俺はお前と『違う』。それは『性質』上のことだ。」


「違う」、「性質」。


 (……どういうこと?)


「お前は確かに少し異様な知識を持っているが、それだけのことだ。

 二週間、お前は何もやってなかった、『できなかった』――いいや、精々交流することができただろう。しかし、あまり意味がなかった。

 正直、お前は誰なのかはわからん。文字が読めないのも信じよう。

 だけど、そんなお前にはなんの『価値』がある?

 何もできないあなたに時間を割振り必要がない!」


 これは……ディベートではよく気を付けなければいけないこと――「できるか」と「するか」の違い。


 ちょっと訂正――いや、普通に「反駁」しよう。間抜けって言われたし。


 (ロードルフ子爵こそ忘れてしまったかな。私は、「できない」じゃなくて、「したくない」んだよ。)


「あん?」


 (確かに、人によってそれぞれの価値観があるのはわかる。あなたの価値観も尊重するつもり。


「何ができるからやろう」、「できないからやらない」……このように、人それぞれの価値観がある。)


「……何が言いたい。」


 (でも、よく思い出してほしい。私は「全然手伝ってもいい、やらせてもいい」と言ったはずだ。

「やりたいからやる」、「やりたくないからやらない」、やりたい気持ちってのは大事なんだよ。はっきり言って、ロードルフ子爵――)


「もういい!気持ちのことなんかもうわかった。でも、そうだとしても、やはり『時間の無駄』になるだろう!『デメリット』になるだろう!」


 (では、「時間の無駄」という言葉について、少し定義を考えてください。)


「はあ、そりゃ『やっても無意味な時間』だろう。」


 (では、あなたにとって、今の時間は「やっても無意味な時間」か?)


「……ぐぅ、ああ、俺は言い方を間違えた。これは『無駄な時間』だ。やっても意味が感じられない時間だ。」


 (そう?でもそう言うと、あなたが言った「デメリット」は、あなたの「主観」によって生じるものだよ。つまり、さっきの私と同じくなったよ。)


「……なんなんだ、貴様。もしこう言いたいなら、これはもうただの言葉遊びだろう!ルールの前提条件なんかもいらなくなるだろう!」


 ちょっとやりすぎたのか?


 いや、もしかして、これは「気持ち」を認識させるチャンスかもしれない。でも――


 (では、さっきの話はなしにしてもいい。ここは一つ君に聞こう。)


「……なんだ。」


 (あなたは「できるから」、領主の仕事をやっているの?)


「当然だ、そこに『気持ち』なんか一切ない!」


 ふーん、これは……強がりだね。気持ちがないわけがない。だがここで指摘しても意味がない。


 (なら、この問題をちゃんと聞いてね。)


 沈黙。


(あなたは「ルールを決める」ことが「できる」のに、あなたは「しない」のか?)


 机を叩いている指が止まった。


 とても長い沈黙の時間。


 ウンーっと、まるで耳鳴りもあったかのように、聴覚が鈍くなった。


 ロードルフ子爵は一瞬沸き上がった怒りの感情が、次の瞬間で沈む。複雑な感情がぐるぐると心を巻いているように、何とも言えない感覚。


 彼の感情が伝わってきたが、何も言わなかった。


 そして、一体どれぐらい経ったのだろう。


 ロードルフ子爵はふっと嗤った。


「そうか。『できるか』と『するか』の違いか。これも浅はかだった。」


 (えっと……)


「いいだろう。この前提条件を認めよう。」


 (いや、認めなくてもいいよ。本当に時間の問題があるなら、修正する必要があるから。)


「……お前はなんなんだ。さっきもそうだが、すぐ逆のことを言っている。」


 (だって言ったはずよ。「お互い」のために決めるもの。片方に傾いたら問題になる。)


 ロードルフ子爵は何も言わなかった。両手を組んで、考えている。


「ふん。いらない気遣いだ。」


 (そう?)


 彼から伝わってきた感情が、何とも言えない。恐らく、「あの質問」を聞くのは今だけだと思う。「気持ち」を気付かせるのは今がチャンスだ。


 しかし――私は迷っている。今、彼に「気持ち」のことを気づかせて、本当にいいことだろうか。


「そうだ。で?あとはどうする?どっちの条件に決めるか?」


 (……そうだね。一通り良し悪しもわかったし。後はどう修正すればいいって感じだよ。)


「そうか。なら俺は仕事をしながら考える。しばらく話しかけんなよ。」


 (わかった。)


 実は、もう一つ質問がしたい。だが、ここで「気持ち」を気づかせて、全て未知数になる。


 “さっき、「時間の無駄」について、どうしてやっても意味が感じられないと思う?”


 とても曖昧な質問だ。


 そして、曖昧な質問にもちろん曖昧な答えも出る。


 “やっても意味ないから、「やりたくない」。”


 たとえこんな答えが出なくても、「気持ち」は感じるはずだ。「気持ち」は考えるより、感じるものだから、気付くかもしれない。


 もし「やりたくない」気持ちがわかったら……


 うん、やはり、今ではない。私は帰りたいから、今は気付く時じゃない。


 “「お前は間抜けで臆病なやつということが分かってないのか?」”


 ロードルフ子爵の言葉が、すでにわかりきっている。


 私は臆病な人間だ。良奈ちゃんの時もそうだった。


 良奈ちゃん、とても「勇気」がある人だ。先に私に「気持ち」を示してくれた。素晴らしい人だ。


 会いたい……


 帰りたい……


 だから、ここは「臆病」でもいい。


 私は、帰りたいから。


2章2話の部分に一階の平面図をアップしました!

興味がある方は是非ご覧ください!

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