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悪領主、自分の意志と戦う  作者: ヨガ
第二章
15/75

3

 ルールの前提:


「――ルールの変動はいつでも可能だ。」


 (――ルールの修正は私たち二人で「討論」しなければならない。)


「まず、お前から理由を言え。」


 (単純な話だ。「私」と会話している時、あなたは口で話さなければならない。他人から見れば、この挙動はおかしいだろう。)


「ふん。だがお前にとって、俺の評価なんてさほど重要ではないだろう。突然俺と仲良くなりたいと思っているのか?」


 (仲良くなりたいとは思っていないが、あなたの評価が重要なんだからと言っている。

 まず、この「バイアス王国」では、この状況の「事例」が二つある。そして、人間は良く自分の「感覚」と「経験」でことを考える。

 二つの「事例」では、「感覚」と「経験」に一つ大事なことを示す。

 それは「人格」の「変化」だ。

 つまり、ロードルフ子爵としての「人物像」が大きく変わるものだ。

 もし、「私」が「表」に出たら、突然変わった動作に、他人が困惑するに違いない。それは「私たち」にとって、決していい影響ではない。)


「意味が分かった。だが、なぜいい影響ではないと言い切れる?


 二つの『事例』は、一つが大昔のこと、もう一つが『情報』の真偽も定かではない。情報の参考基準がおかしいではないか。」


 (ええ、確かに情報の参考基準がおかしい。だが、それは私が情報の仕入れ方が一つしかないから。今の私は情報が「あなたの口」から得ることしかできない。)


「ふん。俺のせいだと言いたいのか?」


 (違うよ。「仕方ない」ことだと言いたいんだ。)


「はっ!意味が分かった。では、なぜいい影響ではないと言い切れる?」


 (昨日のこと、ロードルフ子爵もまだ覚えているだろう。)


「当然だ。」


 (あなたの身体が私に変わった途端、あの二人の反応を見たのだろう。執事とメイドの二人の反応。)


「ああ、見た。それがどうした。」


 (はっきり言おう。あなたの中にいるから、恐怖の感情が抑えられる。強制的に私を表に出させたら、昨日と同じ状況に陥りかねない。ましてや大勢の人に見られたらな。これがいい影響ではないと言い切れる理由だ。)


「……お前は恐怖に慣れることができないのか?」


 (慣れることができるかもしれないが、気安く他人に見させるものではないと思うよ。)


 しばらく静かになって、ロードルフ子爵は組んでいる両手をひじかけに置いた。


「要するに、お前、その『前提条件』の理由は、他人に見せたくないとのこと。そして、『お前』という存在が知られたくないとのことだろう。違いないか?」


 まさか、あなたは思っていなかったの?と言いたいけど、何となく「ディベート」みたいな状況になっているから、普通の返事をした。


 (ええ、確かにそのような意味が含まれていることを認める。だが、一つ補足させて。)


「なんだ。」


(あなたにも悪い影響を出さないという「メリット」がある。)


「ふん。大したことじゃない。でも認めてあげよう。」


(そうか。認めてくれてありがとう。では、あなたの理由は?)


 まるで肯定側の「立論」と否定側の「質疑」。


 そして、次の進行は否定側の「立論」になる。


 まあ、でもこれは「ディスカッション」と言った方が、もっと適切だと思う。


 ディベートは「説得」のため、ディスカッションは「適切な方法を見つける」ためのものだ。


「はっ!同じく簡単な理由だ。俺は領主だから、いろんな仕事があるんだ。

 昨日も言ったはず。俺はお前のために、全てを捨てるつもりはない。仕事も、生活も、『時間』もな。

 俺はいちいち『ルール』のために、こうやって場を設け、お前と会話する時間がない。するつもりもない。」


(そうか……)


 では、質疑の時間だ。


(……ええ、「理由」として十分理解できる。だが、あなたが言った前提条件に「いつでも」という言葉がある。そうだよね?)


「そうだ。」


(では、その言葉の解釈に「どんな時で、どんな状況でも」と、そう理解してもいいだよね?)


「当然だ。」


(つまり、状況は「私があなたと入れ替わっても構わない」、そうだよね?)


「ああ、そうだ。」


 あまり躊躇いがない。まあ、そもそも私が拒否する態度を見せたし、この尋問は想定済みかな。なら、ちょっと他の角度で――


(では、あなたのその「前提条件」に、たとえ「私があなたと入れ替わって」の状態でも、「ルール」の変動が可能にしたいという意味を含めている。そうだよね?)


「ああ、そうだ。」


(意味が分かった。つまり、あなたの「前提条件」には、もう一つの「前提条件」がある。その前提は「私があなたと入れ替わることもある」と。)


「ふん。そうだよ。お前、誘導尋問までして、このことが言いたいだけ?」


(私はただ、あなたの「立場」を分かりやすく理解したいだけ。)


「そうか。なら、また質問があるってことだな。」


(あら、すごい。確かにもう一つ質問がある。)


「皮肉はいい!早く質問を。」


(あなたの「立場」はわかった。では、その立場の上で、あなたの「やり方」、つまり、「私とどう入れ替わるつもりか」、聞かせてくれる?)


「昨日のこともあったから、お前の『意見』を聞いてから、俺の『判断次第』だ。」


(判断次第……そういえば、昨日、なんで私が表に出たのか?)


「それは言語化できない。あくまで感覚的なことだ。お前は嫌でも、『表』に出させることができる。つまり、コントロールの『主導権』は俺にあるということだ。」


(待て、なにそれ。コントロールの「主導権」って、あなたの身体のことだよね。ずっと知ってたの?)


「ああ?そんなわけあるか!俺も昨日知ってたばかりだ!あの時でやったらできただけだ。」


(そうか。)


 これはかなり大事な情報だ。この情報を私に共有してくれるということは、つまり知られても困らないだろう。


 でも、嘘を言っている感じではない……


 あ!なるほど。判断次第ってそういうことか。私はまた警戒されているし、「主導権」を握っているから、この情報を知っても知らなくてもいいと。


(大事な情報ありがとうございます。)


「どうでもいいことだ。話それるな!ルールの前提を決めるんだろう。」


(すみません。話を逸れてしまった、では、あなたの「やり方」も分かった。「理由」と「やり方」も十分理解できた。しかし、ロードルフ子爵は大事なことを忘れてしまった。


「私たち」にとって、その「前提条件」どんな「メリット」があるのか?)


「最初から言っただろう――」


(あなたが最初言ったのは「理由」だ。メリットではない。いや、一歩引いて、あなたにとってメリットがあるかもしれない。


 でも、昨日言ったよ。「お互い」のために決めるルールだ。


 さっき私が言った「悪い影響」を出さないという点で、「私たち」にとって「メリット」があるように、あなたの前提条件も「私たち」にとって何か「メリット」があるだろう。)


「……貴様、これはあなたが言った『ディベート』か?」


 (少々違うね。今私たちやっているのは「ディスカッション」だ。適切な方法を探すためのものさ。)


「あっそう。もちろんお前にもメリットがある。もし俺が消えたら、お前はどうする?」


 (ちょっと質問の意図がわからない。)


「チッ!お前は間抜けで臆病なやつということが分かってないのか?

 何のわけもわからないまま、お前は俺の身体に入った。原因はどうでもいい。知る必要もない。

 だが、もし俺はお前と同じく、突然他の人の身体に入ったら、お前はこの身体に残るだろう。その時、お前は『適応』しなければならない。」


 (ええ、しかし、それは仮設の話だろう。それに、あまり関係があるような……)


「ある。大いにある。確かにさっき言ったのはただ一つの可能性に違いない。でも、俺が言いたいのはそれじゃない。まず、身体の『主導権』は俺にあるんだ。」


 あ……何となくわかった。


 (「主導権」の権利か。)


「そうだ。表に出るか出ないか、お前にも『決める権利』がある。」


 一点狙い、とても確実だが、本質の「メリット」じゃない。


(どんなメリットがあるかはわかった。だが、あなたは優しい人間ではない。やすやす警戒を解いた人間ではないはずだ。

 では、「主導権」を渡してまで、どんなメリットがあるの?)


「なるほど。こう言う意味か。お互いにとって『役に立つ』から。」


 少し沈黙の間。


(続けて。まだ曖昧。)


「チッ。

 1.『主導権』を渡して、俺にとって、お前はどんな人間なのか判断できる。体を奪うつもりなら、即奪い返す。間抜けなやつなら、利用するだけだ。

 2.お前にとって、もし『俺がいなくなった』場合、あるいは、『何かの不可抗力で表に出なきゃ』場合、『俺のふり』をすれば、『適応』できれば、一時しのぎできるだろう。

 どうだ。これで分かったか。」


(ええ、素晴らしい。)


「俺は勉強するつもりじゃないんだぞ!」


(でもいい経験になったのだろう?)


「はいはい、そうかそうか、すごいすごい。で?どうするつもりだ。」


(ええと、まずあなたの話を要約するね。つまり、あなたの前提条件は、あなたの立場じゃなければメリットがないってわけね。)


「ああ。で、続きは?」


 メリットが発生させたではなく、こんなメリットがあるよと。やはりロードルフ子爵は理解早いな。


(そうだね。適切な方法を探すためだけど、やはり「デメリット」を言う必要があるね。でも、相手のね。これは「反駁」ということ。)


「あっそう。」ロードルフ子爵はふっと嗤った。


「実はどうでもいいだが、ここでお前の言葉を一つ借りよう。『一緒に言ったらどうだ』?正直、この状況、気に食わん!」


 え、もしかして、「気持ち」を仕切り直したいかな。今会話の流れは私にあるからね。


(……いいよ、全然。でも、ロードルフ子爵気付いてないの?)


「何が?」


 そうか。そうだね。そう簡単に気付けるものじゃない。


(分からないならいい。)


「はあ?」


(とりあえず、「デメリット」――)


 ――「お前の条件、時間の無駄だ。」


 ――(あなたの条件、評価の問題がある。)


どんなことでも、最初の部分一番決めづらいよね。

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